名城大学理工学部材料機能工学科の岩谷素顕教授、竹内哲也教授、上山智教授、三重大学大学院工学研究科の三宅秀人教授、ウシオ電機株式会社、および株式会社日本製鋼所の研究グループは、深紫外(UV-B 1):280~320 nm)領域の半導体レーザーにおいて、世界で初めて、安価なサファイア基板を用いて医療に最適な300~320 nm帯域での室温連続発振(CW)を実証しました。基板には低コストで量産性に優れるサファイア基板を使用しており、医療機器・産業用途への普及を大きく前進させる画期的成果です。
本研究成果は、2026年1月 12 日にAIP「Applied Physics Letters」に掲載され、Featured Article(注目論文)として高く評価されています。
「Applied Physics Letters」
https://doi.org/10.1063/5.0307059 : https://doi.org/10.1063/5.0307059
【本件のポイント】
・安価で大量生産に適したサファイア基板上での深紫外(UV-B)半導体レーザーを開発
・318 nm波長にて室温連続発振(CW)に成功、医療応用波長域での大きな進展
・従来課題だった格子歪みと熱問題を「高品質AlGaN結晶の実現」「リッジ導波路」「分布ブラッグ反射(DBR)2)ミラー」「高熱放散実装」の実現により克服
・しきい値電流密度4.3 kA/cm²と安定した発振を達成
・低価格化 × 小型化 × 高信頼性が同時に期待できる製造プロセスを開発
・皮膚疾患治療、血管形成、高精度フォトプロセス分野に展開が可能
【研究の背景】
紫外線の中でもUV-B(280~320 nm)の300~320nm波長帯は、生体分子との光化学反応を引き起こす高い光子エネルギーを持ちながら、DNAを直接破壊しにくいという特性から、皮膚疾患治療や血管内治療などの医療応用において重要な波長帯として注目されています。一方で、これまで主に用いられてきたエキシマランプやLED光源は、大型で低効率、かつ波長選択性に制限があり、真の高精度医療を実現するには課題が残っていました。そのため、コンパクトかつ高出力の深紫外半導体レーザーが求められてきましたが、AlGaN材料によるレーザー形成には格子歪みや放熱など技術的な障壁が多く、特に安価なサファイア基板上での実現は困難でした。本研究では、これらの課題を克服し、医療応用に適したUV-Bレーザーの実用化に向けた基盤技術を確立することを目指しました。
【研究内容】
研究グループはまず、サファイア基板上にナノピラーを形成することで結晶歪みを緩和し、高品質なAlGaNテンプレートの作製に成功しました。次に、このテンプレートの上に屈折率コントラストを利用したリッジ導波路構造3)を採用し、横方向の光閉じ込めと低しきい値動作の両立を実現しました。また、鏡面損失を低減するためにSiO₂/Ta₂O₅多層膜からなる高反射DBRを両端面に形成し、熱拡散性を向上させるためにジャンクションダウン方式4)でAlNサブマウントに実装しました。
その結果、318 nmにおいて室温連続発振(CW)を安定して実現し、しきい値電流密度4.3 kA/cm²、しきい値電流64 mAという優れた動作特性を示しました。本成果は、低コスト基板を用いたUV-Bレーザー開発の大きな転換点となります。
画像 : https://newscast.jp/attachments/ALFfxa1UkWPWv7vYygTs.jpg
■図1 UV-B半導体レーザー素子の断面模式図
本研究で開発したUV-B半導体レーザーの構造を示す。サファイア基板上に形成したナノピラー構造により高品質なAlGaN層を実現し、屈折率差を利用したリッジ導波路で光を強く閉じ込める設計とした。
■図2 動作中のレーザーデバイス外観と発光の様子
発光時にデバイス端面から取り出される深紫外光(318 nm)の様子を示す。高い光閉じ込め性により安定したレーザーモードが得られている。本発光が室温連続動作で観測されたことは、実用光源に向けた大きな技術的前進を示す。
■図3 室温連続動作におけるI–V–P特性
20℃における電流–電圧–光出力(I–V–P)特性を示す。64 mA付近に明確なしきい値が確認され、ここを境に光出力が急増している。しきい値電流密度は4.3 kA/cm²であり、300~320 nm帯では世界初の室温連続発振動作を達成したことを示す重要な結果である。
■図4 発振スペクトル(室温連続発振CW動作)
室温連続動作時に取得した発光スペクトルを示す。発振波長318 nmに鋭いピークが確認され、レーザー動作であることを明確に示す。医療応用に特に有望なUV-B領域で安定した単色光が得られている。
【今後の展開】
今後は、実装技術やデバイス構造の最適化により熱抵抗と電極抵抗のさらなる低減を図ることで、安定的な高出力室温連続発振(CW)動作の実現が期待されます。また、波長可変性を臨床的に需要の高い308~311 nm帯へ高めることで、皮膚疾患治療用の光源としての応用も見込まれます。
本成果の一部は、「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の支援を受けたものです。
【用語の解説】
1)UV-B(紫外線B領域)
280~320 nmの紫外光。医療用途や高選択的フォトプロセスに適した波長帯。
2)分布ブラッグ反射鏡(DBR)
異なる屈折率材料を交互に積層し、高反射率を得る光学ミラー。
3)リッジ導波路構造
電流集中と光閉じ込めを同時に実現し、低発振しきい値化に寄与。
4)ジャンクションダウン方式
発熱源(活性層)を基板側に近づけ放熱性を向上する実装方式。
【論文情報】
掲載誌 : Applied Physics Letters
掲載日 : 2026年1月12日
論文タイトル: Room-temperature continuous-wave lasing at 318 nm on a relaxed AlGaN template grown on a sapphire substrate
著 者 : Rintaro Miyake, Takumu Saito, Shogo Karino, Yusuke Sasaki, Shundai Maruyama, Shion Kamiya, Ryota Watanabe, Seiya Kato, Naoki Kitta, Yuma Miyamoto, Rintaro Kobayashi, Kenta Kitagawa, Tomoya Tanikawa, Sho Iwayama, Hideto Miyake, Koichi Naniwae, Yoshito Jin, Masamitsu Toramaru, Tatsuya Matsumoto, Yoshihiro Shimazaki, Hironori Torii5, Tetsuya Takeuchi, Satoshi Kamiyama, and Motoaki Iwaya*
DOI : 10.1063/5.0307059
【お問い合わせ先】
名城大学 理工学部材料機能工学科 教授 岩谷 素顕
〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口一丁目501番地
TEL : 052-838-2430
E-mail: iwaya@meijo-u.ac.jp
三重大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 教授 三宅 秀人
〒514-8507 三重県津市栗真町屋町1577
TEL : 059-231-9401
E-mail: miyake@elec.mie-u.ac.jp
ウシオ電機株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報課
〒108-0073 東京都港区三田3-5-19
住友不動産東京三田ガーデンタワー31階
TEL : 03-5657-1017 FAX : 03-5657-1020
E-mail: contact@ushio.co.jp
株式会社日本製鋼所イノベーションマネジメント本部 電子デバイス技術研究所
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