医療ロボット分野における課題は、ハードウェアだけに関わるものではありません。
今月初めに開催されたCESにおいて、「ロボットは私たちを救うのか?」と題されたパネルディスカッションで講演したIEEEフェローのカレン・パネッタ氏は他の専門家と共に、業界の現状、阻害要因、推進要因について議論しました。
【医療分野ではデータだけでは不十分】
ロボット工学と人工知能(しばしば物理AIと呼ばれる)の統合は、往々にしてデータの問題として議論されます。専門家が十分な情報を収集し、システムを訓練すれば、性能は自然と向上するという考え方です。パネッタ氏は、文脈を伴わないデータは誤解を招き、不完全であり、場合によっては危険でさえあると主張しました。
「データの文脈が十分に理解されていないアプリケーションを、これまでどれほど多く目にしてきたかお伝えできません。ロボットに搭載するセンサーは大量のデータを収集しますが、それでも文脈を理解する必要があります。美しいロボットは存在しますが、その性能は訓練に用いるデータの質に依存するに過ぎないと確信しています」
【ロボットデザインが信頼と普及を左右する理由】
パネッタ氏は性能以上に、ロボットの外見や動作が人々の協働意欲に直接影響すると強調しました。
「現在タフツ大学歯学部と共同研究中です。同大学では滅菌器具搬送ロボットを導入していますが、患者支援担当者との連携も求めています。様々な応用例において、人間と協働する場合、人間的なレベルや感情的なレベルで共感を得ることが重要です。威圧感のない外観のロボットの方が、人々はより安心感を抱きます。
【人間のバックアップの必要性】
自律型ロボットが直接的な患者ケアに関与する時期は予測困難ですが、監視・プライバシー・自律性に関わる倫理的問題は既に提起されています。ロボットはあらゆるデジタルツールと同様、膨大なデータを収集・蓄積します。パネルディスカッション中、パネッタ氏は患者同伴・監視用に設計されたロボット犬を指さし、その瞬間収集されている情報について疑問を呈しました。
「このロボットは私のどのようなデータを収集しているのでしょうか?医療現場でのデータ収集は、倫理やプライバシーの問題から困難を伴います」
【体内ロボットの未来】
最後にパネッタ氏は、主流の注目を集めていないものの、医療に最も大きな影響を与える可能性を秘めたロボット工学の分野に言及しました。
「体内に入る優れたロボット技術が登場し、手術支援や健康管理に貢献する日が来るでしょう」
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