人類史上初の被爆地・広島の放送局として、開局以来、核兵器廃絶と平和の実現を目指して番組を発信してきたテレビ新広島(TSS)が、「Hiroshima Peace Program TSSアーカイブプロジェクト」(報道特別番組)の第10弾作品として、2025年8月6日に放送した被爆80年報道特別番組『彼女が世界に語る理由』の英語版を2026年2月10日から世界に向けて配信する。
【あらすじ】
被爆80年を迎えた2025年8月6日、被爆体験の継承が一つの課題となっています。
2021年からTSSが取材を続けている小倉桂子さん(当時87歳)。2023年のG7広島サミットで、唯一、各国首脳との面会にひとりで臨み注目された、英語で被爆証言をする数少ない語り部です。2024年12月には日本被団協のノーベル平和賞授賞式に出席するなど、その証言活動は国際的な場にまで及んでいます。
独学の英語で直接世界の人々に語りかける姿。一市民の彼女がどんな覚悟でその場に立っているのか。そこには、これまでの人生をかけて紡ぎだしてきた思いがありました。
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小倉さんは8歳のとき、爆心地から2.4キロメートル地点にあった自宅で被爆。幸い軽傷だったものの、毎日、目の前で人が亡くなっていく光景がトラウマになり、被爆体験を心の奥にしまい込みます。
転機となったのは42歳、英語が堪能で広島平和記念資料館(原爆資料館)の館長を務めていた夫の急死がきっかけでした。悲しみに暮れる中、夫の代わりに通訳をしてほしいという依頼があり、夫の遺志を継いで海外に被爆者の声を届け始めます。証言活動を始めた頃は通訳に徹していたものの、その後、自身の被爆体験を語り始め、以降、約40年間、国内外へ被爆の実相の発信を続けてきました。
「来年の8月6日、わたしは元気でいられるかな?」
小倉さん自身も高齢になり、残された時間で“平和への種まき”を続ける中、ある出会いが花を咲かせはじめます。
2022年、教育現場を継承の大事な場と考える小倉さんは、アメリカのアイダホ大学を訪れました。そこで取り出したのは「ケイコの8月6日」という紙芝居。広島市立基町高等学校の生徒が小倉さんの被爆体験を自主的に紙芝居にしたものでした。小倉さんから被爆の話を聞き、意識が変わっていくアメリカの学生たち。これまで学んでこなかった原爆の惨状を目の当たりにし、小倉さんの思いに突き動かされた学生たちは、紙芝居を英訳する活動を始めます。
学生たちが完成させた英語版の紙芝居を通して小倉さんの思いが着実に世界に伝わっていく様子に、継承のカギが見えてきました。多くの人が影響を受け、確かに広がっていくその思い。小倉さんはどんな思いで世界に語っているのか。「声が出る限り伝え続ける」と、日々奮闘する彼女の姿から、その“平和のバトン”を受け取とった世界の未来を考えます。
【ナレーション:草刈正雄】
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私は福岡県小倉の出身で、8月9日に長崎へ投下された原子爆弾の第一目標は、その小倉でした。天候不良で目標が変更されましたが、もしそのまま小倉に落ちていたら、母が被害に遭い、私はいなかったかもしれません。
平和に関する仕事はこれまで機会がありませんでしたが、自分にも無関係ではなく、ナレーションをやっていても、少し涙が出てくるようなことがありました。
小倉さんが話す「継承には教育とメディアが大切」という言葉はその通りだと思います。多くの方に見ていただきたい番組です。
【ディレクター:石井百恵】
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小倉さんとの出会いは、イベントニュースの取材でした。その人間力と言葉の力に魅せられ、継続取材をしました。小倉さんの側にいると、いつの間にか人が集まり、次から次へと何かが起こります。自然とそれを追わずにはいられませんでした。
「私の役目は、若い人の心のろうそくに火を灯して、自分がやらねばという気持ちを起こさせること」と小倉さんは言います。私もいつの間にか火を灯された一人となり、2023年に一本のドキュメンタリー番組が完成しました。
取材中に出会ったアメリカの若者たちは、その後も小倉さんから受け取った“平和のバトン”を手に走り続けていました。私は必然とカメラを持ってそれを追いかけ、今回の番組が完成しました。
現在、被爆者の平均年齢は86.13歳(2025年3月末時点)です。5年間の取材中、小倉さんは「最後の仕事」という言葉を何度も口にしました。
今回の取材で出会った方々の姿は、そのヒントを与えてくれているのではないでしょうか。番組を通じて、小倉さんたち被爆者の思いが、“平和の種”として多くの方に届き、花開くことを願っています。
TSS アーカイブプロジェクト公式ホームページ : https://www.tss-tv.co.jp/web/archive_project/index.html