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天王寺動物園前(大阪市天王寺区)に設置された喫煙所
近畿大学経済学部(大阪府東大阪市)総合経済政策学科准教授 村中洋介は、地図・位置情報データを活用した情報サービスを提供する株式会社ゼンリンデータコム(東京都港区)の「混雑統計®」※1 を用いて研究を行い、大阪市内の公共空間に必要な喫煙所の数は3,607カ所であると算出しました。
本件に関する論文が、日本の自治体の財政・会計・運営を紹介する専門月刊誌「地方財務」(ぎょうせい刊)の令和7年(2025年)12月号、令和8年(2026年)1月号、2月号に3号連載で掲載されました。
【本件のポイント】
●受動喫煙防止のためには、喫煙者の行動(喫煙回数等)を前提とした喫煙所の整備が必要
●人流データを用いて算出したところ、大阪市の公共空間に必要な喫煙所数は3,607カ所
●北区や中央区、浪速区のうち、特に人流の多い地域に必要な喫煙所数は500m四方あたり20カ所以上
【本件の背景】
令和7年(2025年)1月27日施行の改正「大阪市路上喫煙の防止に関する条例」において、大阪市内全域が禁煙となったことから、分煙社会を実現するために環境の整備※2 が必要となっています。喫煙者と非喫煙者が共存する社会では、受動喫煙防止のために「分煙社会」の実現が不可欠であり、喫煙者のマナー向上とともに、喫煙行為(喫煙回数等)を前提とした分煙(喫煙)環境・施設の整備が必要です。
喫煙行為は家庭(自宅)内や勤務先など、各人の一日の行動の中で行われます。家庭内で喫煙することによって外出先や就業(休憩)時間中の喫煙機会を減らすという考え方がある一方で、家庭内の喫煙は子どもを含む家族に受動喫煙のリスクを伴います。また、マンションのベランダや自宅の玄関先での喫煙には、近隣住民に受動喫煙のリスクがあります。それらに配慮するために路上や公園などで喫煙する者が発生しては、地域全体の受動喫煙リスクは解消しません。そのため、受動喫煙防止のためには、就業(休憩)時間や日中の外出中、飲食店周辺といった市街地・繁華街のみならず、住宅街を含めた地域全体に喫煙所が整備されることが望ましいといえます。
【本件の内容】
大阪市内において喫煙所以外での喫煙が困難な場合、どの程度の喫煙所が必要であるかを算出しました。
まず、人口と喫煙率、喫煙本数から大阪市内で一日に消費されるたばこの総本数を割り出し、それを処理するために必要な喫煙所数を計算した結果、8,261カ所の喫煙所が必要となりました。ここからさらに、人流データである「混雑統計®」を基に、人の行動を考慮した上で、勤務先や商業施設内などの喫煙所などを除いて大阪市内の公共空間に必要な喫煙所数を算出したところ、その数は3,607カ所となりました。
【論文掲載】
掲載誌:「地方財務」(ぎょうせい刊)
令和7年(2025年)12月号、令和8年(2026年)1月号、2月号
論文名:喫煙所のあり方への考察―大阪市路上喫煙防止条例改正を題材に(上)・(中)・(下)
著者 :村中洋介
所属 :近畿大学経済学部総合経済政策学科
【本件の詳細】
単純に人口に基づく喫煙者数※3 や喫煙本数※4 から大阪市内で一日に消費されるたばこの総本数を割り出し、1回当たりの喫煙時間を5分と想定して、喫煙所を常時5人が12時間入れ替わりながら利用する(喫煙所1カ所あたりの処理数が720人/日)と仮定した場合、大阪市における1日あたりのたばこ消費量を処理するためには、8,261カ所の喫煙所が必要であることがわかりました。
さらに、「混雑統計®」を基に性別・年代別喫煙率を考慮し、令和5年(2023年)1月から令和6年(2024年)12月までの500mメッシュ(約500m四方に区切った地域単位)ごとの最大値を基にして算出したところ、大阪市内の公共空間に必要な喫煙所数は3,607カ所となりました。
人口に基づく喫煙所の必要数である8,261カ所は、人口、喫煙率、喫煙本数から大阪市内で一日に消費されるたばこの本数を、1カ所のあたりの喫煙所の処理数で単純に割ったもの(公共喫煙所として必要な数ではなく、企業内や商業施設内等の喫煙所を含めた必要数)を示しています。一方で、「混雑統計®」による喫煙所の必要数3,607カ所は、より精緻に人の行動を考慮し(家庭内での喫煙、勤務先喫煙所での喫煙、商業施設での喫煙等を除し)、必要とされる公的喫煙所(民間委託等含む)の数を示しています。
なお、「混雑統計®」はメッシュごとに性別・年代別に推定周辺居住者、推定周辺勤務者、推定来街者のカテゴリ分けをしていることから、推定周辺居住者については単身世帯の家庭内喫煙を考慮、推定周辺勤務者については勤務先喫煙所等での喫煙を考慮、推定来街者については商業施設等の喫煙所等での喫煙を考慮し、家庭内喫煙や就業場所における喫煙所の設置状況等を加味して算出しています※5。
また、「混雑統計®」を基にした算出では、北区や中央区、浪速区のうち、特に人流の多い地域では、500m四方あたり20カ所以上の喫煙所が必要であること、京橋駅や天王寺駅などの繁華街を中心に多くの喫煙所が必要であることも示されました。
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図1 500mメッシュ内の必要喫煙所数 「混雑統計®」©ZENRIN DataCom CO., LTD.
【注釈】
※1 「混雑統計®」データは、NTTドコモが提供するアプリケーションの利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータ。位置情報は最短5分毎に測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。
※2 ここでの整備は、喫煙者のための喫煙所の整備という趣旨のみならず、非喫煙者において喫煙者が指定された喫煙所においてのみ喫煙をすることにより、路上等の空間において喫煙をすることがなくなり、分煙化された生活環境を享受するための喫煙所の整備という趣旨を含むものであり、たばこ自体を禁止しない社会における「適切な分煙化」のために必要な整備をいいます。大阪市も路上喫煙防止の取組みの一つとして、喫煙者と非喫煙者が共存できる分煙環境の整備を進めています。(大阪市ウェブサイトより)
https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000607135.html
令和8年(2026年)2月18日最終閲覧
※3 令和5年(2023年)国民健康・栄養調査における喫煙率15.7%により算出。
※4 令和4年国民健康・栄養調査(2022年調査)における、喫煙者の1日当たりの平均喫煙本数14.4本により算出。
※5 推定周辺居住者については、エリア内の総喫煙本数に対して、単身世帯人口割合を差し引き(複数人世帯割合)、これに家庭内での推定喫煙割合60%をかけて算出しています(推定周辺居住者の総喫煙本数の40.02%を基に算出しています)。推定周辺勤務者については、エリア内の総喫煙本数から事業所内喫煙施設における推定喫煙処理数を差し引いており、完全分煙・不完全分煙の事業所割合を基にして、勤務者の喫煙本数の70%を事業所内喫煙施設での喫煙で処理したものとして算出しています(推定周辺勤務者の総喫煙本数の56.04%を基に算出しています)。
【研究者のコメント】
村中洋介(ムラナカヨウスケ)
所属 :近畿大学経済学部総合経済政策学科
職位 :准教授
学位 :博士(法学)
コメント:大阪市だけでも300億円以上のたばこ税収があるほど、喫煙者は多くいます。受動喫煙対策のためには正しい分煙が必要ですが、そのための喫煙所等の分煙措置が十分に行われずに規制が先行し、結果として喫煙者・非喫煙者双方にとって好ましい環境づくりができていないと思います。十分な数の喫煙所の整備や罰則の強化、取り締まりの強化等を行うことで、皆が過ごしやすい社会が実現することを期待しています。
【関連リンク】
経済学部 総合経済政策学科 准教授 村中洋介(ムラナカヨウスケ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2538-muranaka-yosuke.html
経済学部
https://www.kindai.ac.jp/economics/