●日本のお家芸だった「垂直統合モデル」を展開
IHSテクノロジーとTCLのデータによると、2018年の世界テレビ市場の出荷ベースシェアは、1位のサムスンが16.3%、2位のTCLが10.9%、3位のLGエレクトロニクスが10.7%だった。
創業は1981年で、中国・広東省で音声テープメーカーとして生まれた。今ではテレビのほか携帯電話や冷蔵庫、洗濯機、空調設備、スマート健康家電、液晶パネルなど幅広い事業を展開。18年のエアコン出荷台数は1000万台を突破した。世界の従業員数は7万5000人、工場は22ヵ所、研究開発センターは28ヵ所を擁する。
テレビ事業における他社との大きな違いは「パネルとモジュール、テレビ本体を生産できる垂直統合型戦略」と語るように、かつての国内家電メーカーのお家芸だったビジネスモデルを、今ではTCLが担っている形だ。ちなみに社名のTCLは「The Creativ Life」の頭文字を組み合わせてつくられた。
TCLの日本市場への参入は今回が初めてではない。15年9月に日本法人のTCLジャパンエレクトロニクスを設立し、17年7月にアマゾンで液晶テレビの販売を開始している。18年9月には、65型Vと55V型の液晶テレビ「TCL-C60シリーズ」をアマゾンと一部家電量販店で販売した。
今回は「QLED」テレビのX10シリーズ・1機種(65V型)を筆頭に、4K対応スマートテレビのC8シリーズ・2機種(65V型/55V型)、スタンダードモデルのP8シリーズ・4機種(65V型/55V型/50V型/43V型)の計7機種のフルラインアップで展開する。
●若いユーザー向けに価格訴求か
TCLジャパンエレクトロニクスの李炬代表取締役は「日本のテレビメーカーとは商品力やブランド力でまだかなりの差があると認識している。買い求めやすい価格とトップクラスの品質、性能を提供して徐々にブランドを浸透させていきたい」と謙虚な姿勢を示しながらも、「2020年までに販売台数シェア2%、3~5年かけて5%の達成を目指す」と具体的な目標を掲げた。
李代表取締役は今回の国内での本格的な展開について、来年の東京オリンピックの需要を狙っていることを明かした。また「若い人へのブランドを浸透させていきたい」とEileen Sun最高マーケティング責任者が語るように、まずは価格の安さを訴求していくとみられる。
実際に今回発表したすべてのモデルで4Kチューナーは内蔵していないことから、Android搭載によるネットでの4K視聴や、テレビ放送では地デジのアップコンバートで視聴するユーザー像が浮かび上がる。
全国の主要家電量販店やネットショップからPCやデジタル家電などのPOSデータを集計する「BCNランキング」によると、新4K8K衛星放送チューナーを搭載したテレビの販売台数構成比は7月に50.1%と初めて5割を超えた。昨年7月の3.0%から、12月の本放送開始もあって急激に上昇している。
テレビ全体でも7月の販売台数前年比は8.8%増、販売金額は22.3%増と好調。4K・8Kパネルに絞ると台数で39.7%増、金額で39.6%増という高水準を示しており、消費増税の駆け込み購入が始まっている可能性が高い。TCLもこの波に乗れるか。製品が発売される9月20日からの販売動向に注目したい。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
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