【木村ヒデノリのTech Magic #123】 さまざまなものがIoT化している昨今だが、「刺繍」までスマート化されていることを知らない方は多いのではないだろうか。2021年に100周年を迎えた老舗企業のJANOME。
●初心者でも使える簡単さと痒いところに手が届く感を両立
これまで刺繍ミシンと言えば、大きな画面が搭載された高級機ばかりで最低でも数十万円からと、刺繍用途だけに購入する人はほぼいないような代物だった。ミシンを頻繁に使うプラスアルファで刺繍もできたら良い、というアプローチだったが、IJ521は逆転の発想で「実用縫い(通常のミシンとしての縫い方)」という機能を無くしてしまった。つまり刺繍専用機だ。さらにこれまでミシン側で行っていた刺繍の編集機能を丸ごとアプリに移植。これによって本体は極限まで軽量、シンプルになり価格も3万円台と非常に手頃に。これなら興味を持った入門者も手軽に購入し試せる。
ここまで価格差があると不安になるのは機能性だが、基本的にアプリ内のデザインを利用するという点を除き、高級機と遜色ない自由度がある。これには筆者も驚いた。どちらかというとアプリで編集する方が操作しやすい印象すらある。ミシン本体が自宅のWiFiに接続されていれば自動検出され、アプリからデザインを送信して本体ボタンを押すと刺繍がスタート。アプリ画面では現在の進行状況や残り針数が確認できる。
JANOMEの刺繍糸と対応した色や下地の素材、色も選べるため、完成イメージを確認できるのも便利だ。巻尺ツールも用意されているので表示されない斜めのサイズも測れる。さらに万が一途中でアプリが落ちるなどしても、再度ミシンと接続すれば途中から再開できる。機能の一部をアプリに持たせた製品はアプリの使用感が悪いと文鎮化してしまいがちなので、このアプリの完成度、安定度の高さは素晴らしい。色やサイズを変更するのも自在なので、既存のデザインからでもオリジナリティを出せるのはうれしいところだ。
●これだけは押さえておきたい、初心者が揃えるべき刺繍グッズ
付属品にはボビン3個や針も含まれているので他に必要なのは糸くらいなのだが、これらは買っておいた方が便利だというものも紹介したい。まず注意したいのが「どの糸でも良いというわけではない」という点。
推奨されているのは上糸がJANOME純正の刺繍糸か、フジックスのキングスターミシン刺繍糸。後者はAmazonでも購入できる。下糸はフジックスのシャッペスパンミシン糸で、これもオンラインで手に入れやすい。刺繍糸は価格が高めだが、1色ずつ購入すればそこまで高くならないので必要な色からケチらずに揃えていこう(※筆者が使っている写真の糸は古いものでアクリル製。厳密にいうとIJ521には現行のポリエステル製が推奨されている。張力が違うためIJ521では推奨糸を使う方が良いが、使用糸に合わせて設定を変更できる機能を持つ上位モデルもある)。
他にも布を硬くして失敗を防ぐ接着芯や、離れた模様を縫うときに出る「渡り糸」を切る刺繍はさみもあると便利だ。接着芯はアイロンで接着するものが一般的だが、IJ521で衣類をカスタマイズする際には粘着シートタイプの接着芯の方が便利な場合もあるので参考にしてほしい。
●靴下にワンポイントが入れられる、応用次第でハンカチやYシャツにも
上記の粘着性接着芯を使えばハンドタオルなど刺繍位置的に刺繍枠にはめられないものへも刺繍できる。さらにもう一工夫すると、子供の好きな柄を靴下にも入れてあげられるので喜ぶこと間違いなしだ。2 Sock Easyという治具を使うと筒状になっていて本来IJ521では刺繍できない靴下へも刺繍ができるようになる。
この器具に靴下をはめ、粘着シートに貼ることでワンポイントを入れることができる。筆者の娘は最近ひまわりにハマっているので刺繍してあげたところとても喜んでいた。布地のデザインを吟味してハロウィンバージョンなどお気に入りの1足を親子で作るのもアリだろう。このように粘着タイプの接着芯を使って布地を固定すれば通常刺繍できないハンカチの四隅やYシャツの袖にも刺繍ができるので慣れてきたらぜひチャレンジしてほしい。
●最初の1台には十分すぎる機能性、とはいえ上位モデルも狙いたい
入門者にとっては十分すぎる機能を備え、かつ安価なIJ521。ほとんどの方はこれで満足するかもしれないが、凝り性の男性はアウトドアグッズや衣類の自作などさらに幅広いものを作りたくなってくるのではないだろうか。実際IJ521はコスパを高めた分、刺繍枠の剛性や運針の精度は犠牲になってしまっているので、さらにこだわるなら上位モデルがおすすめだ。筆者がコスパが良いと感じたのは同じJANOMEの「Hyper Craft 930」で、こちらは実用縫いもでき、刺繍もできるモデル。フリーアームを使えるので既製品のアレンジにはうってつけだ。
刺繍のデザインをオリジナルで作ろうと思ったらArtistic Digitizerというソフトウェアがある。このソフトはMacにも対応する数少ない刺繍ソフトで、イラストレーターなどのベクターデータから刺繍データに変換する機能がある。
このようにハマると男性にこそ面白い刺繍の世界。IJ521を入門機と考えれば随分手軽に踏み込むことができる趣味だ。一旦揃えてしまえばランニングコストも安い上に、とにかく子供の反応が良いのでぜひ親子のふれあいとしても試してみてほしい。
高いモデルを知っている方からすれば当然いくつか不満な点も出てくるIJ521。しかしこれが初めて購入する刺繍ミシンという方であれば、この価格でここまでできる仕様に感動するのではないだろうか。久しぶりに楽しいと思える趣味が見つかったので、これから何回かにわたって刺繍やミシンに関するレビューをしていこうと思う。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
https://www.youtube.com/rekimuras
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同社が2018年にひっそりとリリースしていたスマートミシンが凄かった。「スマートミシンIJ521」は約10cm角の刺繍ができる小型ミシンで、専用アプリから好きな柄を送信して使うことができる。このため本体はシンプルで価格も実売3万円前後とかなり安い。スマホを使ってデザインの編集ができるので複雑な組み合わせも可能で操作も直感的。デザインはアプリで完結するので、これまでミシンに縁がなかった男性もとっつきやすい。これを使って子供の服や持ち物をちょっとリメイクしてあげるだけで、父親はヒーローになれるのではないだろうか。
●初心者でも使える簡単さと痒いところに手が届く感を両立
これまで刺繍ミシンと言えば、大きな画面が搭載された高級機ばかりで最低でも数十万円からと、刺繍用途だけに購入する人はほぼいないような代物だった。ミシンを頻繁に使うプラスアルファで刺繍もできたら良い、というアプローチだったが、IJ521は逆転の発想で「実用縫い(通常のミシンとしての縫い方)」という機能を無くしてしまった。つまり刺繍専用機だ。さらにこれまでミシン側で行っていた刺繍の編集機能を丸ごとアプリに移植。これによって本体は極限まで軽量、シンプルになり価格も3万円台と非常に手頃に。これなら興味を持った入門者も手軽に購入し試せる。
ここまで価格差があると不安になるのは機能性だが、基本的にアプリ内のデザインを利用するという点を除き、高級機と遜色ない自由度がある。これには筆者も驚いた。どちらかというとアプリで編集する方が操作しやすい印象すらある。ミシン本体が自宅のWiFiに接続されていれば自動検出され、アプリからデザインを送信して本体ボタンを押すと刺繍がスタート。アプリ画面では現在の進行状況や残り針数が確認できる。
JANOMEの刺繍糸と対応した色や下地の素材、色も選べるため、完成イメージを確認できるのも便利だ。巻尺ツールも用意されているので表示されない斜めのサイズも測れる。さらに万が一途中でアプリが落ちるなどしても、再度ミシンと接続すれば途中から再開できる。機能の一部をアプリに持たせた製品はアプリの使用感が悪いと文鎮化してしまいがちなので、このアプリの完成度、安定度の高さは素晴らしい。色やサイズを変更するのも自在なので、既存のデザインからでもオリジナリティを出せるのはうれしいところだ。
●これだけは押さえておきたい、初心者が揃えるべき刺繍グッズ
付属品にはボビン3個や針も含まれているので他に必要なのは糸くらいなのだが、これらは買っておいた方が便利だというものも紹介したい。まず注意したいのが「どの糸でも良いというわけではない」という点。
IJ521では安価な分糸の張力はあらかじめ設定されているので、粗悪な糸を使うと全く綺麗に刺繍できないことがある。
推奨されているのは上糸がJANOME純正の刺繍糸か、フジックスのキングスターミシン刺繍糸。後者はAmazonでも購入できる。下糸はフジックスのシャッペスパンミシン糸で、これもオンラインで手に入れやすい。刺繍糸は価格が高めだが、1色ずつ購入すればそこまで高くならないので必要な色からケチらずに揃えていこう(※筆者が使っている写真の糸は古いものでアクリル製。厳密にいうとIJ521には現行のポリエステル製が推奨されている。張力が違うためIJ521では推奨糸を使う方が良いが、使用糸に合わせて設定を変更できる機能を持つ上位モデルもある)。
他にも布を硬くして失敗を防ぐ接着芯や、離れた模様を縫うときに出る「渡り糸」を切る刺繍はさみもあると便利だ。接着芯はアイロンで接着するものが一般的だが、IJ521で衣類をカスタマイズする際には粘着シートタイプの接着芯の方が便利な場合もあるので参考にしてほしい。
●靴下にワンポイントが入れられる、応用次第でハンカチやYシャツにも
上記の粘着性接着芯を使えばハンドタオルなど刺繍位置的に刺繍枠にはめられないものへも刺繍できる。さらにもう一工夫すると、子供の好きな柄を靴下にも入れてあげられるので喜ぶこと間違いなしだ。2 Sock Easyという治具を使うと筒状になっていて本来IJ521では刺繍できない靴下へも刺繍ができるようになる。
Amazon USで売られているが、簡単な器具なので器用な人は自作もできるだろう。
この器具に靴下をはめ、粘着シートに貼ることでワンポイントを入れることができる。筆者の娘は最近ひまわりにハマっているので刺繍してあげたところとても喜んでいた。布地のデザインを吟味してハロウィンバージョンなどお気に入りの1足を親子で作るのもアリだろう。このように粘着タイプの接着芯を使って布地を固定すれば通常刺繍できないハンカチの四隅やYシャツの袖にも刺繍ができるので慣れてきたらぜひチャレンジしてほしい。
●最初の1台には十分すぎる機能性、とはいえ上位モデルも狙いたい
入門者にとっては十分すぎる機能を備え、かつ安価なIJ521。ほとんどの方はこれで満足するかもしれないが、凝り性の男性はアウトドアグッズや衣類の自作などさらに幅広いものを作りたくなってくるのではないだろうか。実際IJ521はコスパを高めた分、刺繍枠の剛性や運針の精度は犠牲になってしまっているので、さらにこだわるなら上位モデルがおすすめだ。筆者がコスパが良いと感じたのは同じJANOMEの「Hyper Craft 930」で、こちらは実用縫いもでき、刺繍もできるモデル。フリーアームを使えるので既製品のアレンジにはうってつけだ。
刺繍のデザインをオリジナルで作ろうと思ったらArtistic Digitizerというソフトウェアがある。このソフトはMacにも対応する数少ない刺繍ソフトで、イラストレーターなどのベクターデータから刺繍データに変換する機能がある。
価格は18万7000円と決して安くはないが、自分でデザインしたロゴを刺繍して販売するなど、さまざまな用途に使うなら購入しても良いだろう。JANOMEでは不定期で1か月試せるキャンペーンを実施しているそうなので気になる方はチェックしてみてほしい。
このようにハマると男性にこそ面白い刺繍の世界。IJ521を入門機と考えれば随分手軽に踏み込むことができる趣味だ。一旦揃えてしまえばランニングコストも安い上に、とにかく子供の反応が良いのでぜひ親子のふれあいとしても試してみてほしい。
高いモデルを知っている方からすれば当然いくつか不満な点も出てくるIJ521。しかしこれが初めて購入する刺繍ミシンという方であれば、この価格でここまでできる仕様に感動するのではないだろうか。久しぶりに楽しいと思える趣味が見つかったので、これから何回かにわたって刺繍やミシンに関するレビューをしていこうと思う。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。(動画配信時期は記事掲載と前後する可能性があります)
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