このカテゴリーは、MIDIキーボードなどDTM用機材に加え、音声信号をPCに入力するためのオーディオインターフェイスも含んでいる。コロナ禍では、オンライン会議などで活用するため、特にオーディオインターフェイスの需要が急増。21年夏ごろまで販売台数前年比で150%前後の特需が発生していた。以降、需要一巡による反動減と、部材不足に伴う一部製品の品薄も重なり販売が減速。一時は前年比で半減する場面もあった。しかし、新製品の発売などもあり、市場に活気が戻りつつある。2022年1月の販売前年比は、台数で74.1%、金額で73.3%と2桁マイナス。さらに5月には前年の反動から台数51.9%、金額57.6と大幅なマイナスを記録していた。しかし、11月に台数98.4%、金額120.7%と金額がプラスに転じた。12月も同様に台数97.8%、金額118.9%と金額プラスを維持。
市場回復に大きく貢献しているのが、ヤマハが22年4月に発売したオーディオインターフェイス、AGシリーズの新製品だ。AG03MK2とAG06MK2の2モデルで、同社ベストセラーの後継機。初代そっくりの筐体ながら、音質の改善やミュートスイッチの新設、USBジャックをType-Cにするなどで使い勝手を向上させた。発売直後から品薄が続き販売は伸び悩んでいたが、11月に入り供給体勢が整い売り上げも向上。市場全体の底上げにも貢献した。一時は1桁台で低迷していたヤマハのメーカーシェアも回復。11月以降は30%前後を記録しトップに返り咲いた。
前モデルから人気が高く、コロナ禍では入手困難でプレミアム価格がつく時期もあったほどだ。もともとは弾き語りなど、小規模な音声入力用途で開発したものだが、コストパフォーマンスの高さや使いやすさもあって、動画配信者にも人気化。オンライン会議需要もとらえた。
AGシリーズの好調からヤマハは、DTM関連機器市場で2020年、2021年と連続で年間販売台数でトップシェアを獲得。
すっかり定着したオンライン会議。より快適なコミュニケーションを求め、個人レベルでも、音声や映像を改善するための新しい需要が生まれている。オーディオインターフェイスに加え、Webカメラの販売も回復しつつある。とは言え、製品の仕様や利用のノウハウには依然として不足する部分も多い。関連市場には、まだまだ伸びしろがありそうだ。(BCN・道越一郎)
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