マレーシアに事務局を置くアジア・太平洋ICTアライアンス(Asia Pacific ICT Alliance=APICTA)は12月5~8日、香港・サイバーポートでAPICTA AWARD 香港 2023を開催した。APICTAは、アジア・太平洋地域の情報通信技術(ICT)分野での交流を促進する国際組織。
日本を含む16の国と地域(エコノミー)が加盟している※。ICT分野での優れた作品を評価し表彰するAPICTA AWARDを2001年から毎年開催。マレーシア・クアラルンプールで第1回大会を開催して以来、今年で23回目を数える。香港での開催は3回目。香港政府の強力な支援を得て実現した。今年は、加盟15エコノミーで高い評価を得た作品がエントリー。対象は小学生から大人までと幅広く、分野も全24カテゴリーにわたる。審査員はアジア各国から選出された大学教授や経営者などの有識者が務め、公正・厳正なルールの下で審査が行われるのが特徴だ。

 各参加者のプレゼンテーションに基づいて実施した審査の結果、最も多く最優秀賞を獲得したのは開催地の香港。「BUSINESS SERVICES-Professional Solutions」部門を始め、「TECHNOLOGY-Artificial Intelligence of the Year」部門、「TECHNOLOGY-Business Data Analytics of the Year」部門など、7部門で最優秀賞を獲得した。次いで多かったのがタイ。「TECHNOLOGY-Internet of Things of the Year」部門を始め、小中学生を対象とする「STUDENT-Junior Student(Group A)」部門など4部門で最優秀賞を獲得した。

 「STUDENT-Junior Student(Group A)」部門で最優秀賞を獲得した作品「BokBox」は、タイの名門校「Bangkok Christian College」の中学生3人組によるもの。子供のプログラミング学習用の教材を開発して高い評価を得た。習熟度に合わせて3種類の犬型ロボットを用意。それぞれのレベルでプログラミングを学ぶことができる。しっかりと作り込まれた学習用テキストやロゴなども同時に制作し、タイでは数々の賞を受けたという。プレゼンテーションでは開発の経緯や概要、ビジネスモデルなども提示され、中学生の作品とは思えないほど高度な内容だった。
 同じく「STUDENT-Junior Student (Group A)」部門で優秀賞を獲得したのは、香港の「C.C.C Heep Woh Primary School (Cheung Sha Wan)」チーム。中学生1名と小学生3名の4人組が開発したのは「Intelligent Paper Sorter」。アジアで紙が莫大に消費されていることに着目し、再生可能な紙を、カメラとAIを組み合わせてより分ける装置だ。レゴブロックとBBCのmicro:bitを組み合わせた素朴なつくりだったが、審査会でもしっかりと動作し、設計通り紙を分別することに成功させた。
 今回、日本から出席したのは、大和研究所(YCRG)の伊藤整一CEO。網屋の創業者で現在は同社の顧問も務める。
この6月、日本側の加盟団体、情報サービス産業協会(JISA)の理事を退任するまで、APICTAに深くかかわってきた。伊藤CEOは「加盟エコノミーの中でAPICTA AWARDに参加していないのは日本だけ。この状況を何とかしたい。まずは子どもたちの部門『STUDENT』から始められないかと考えている」と話す。しかし、技術レベルの高さや作品の質もさることながら、言葉の問題も大きい。プレゼンテーションはすべて英語で行われ、審査員からの質問にも英語での受け答えが求められる。しかも、アジア各国から選出された審査員が話す、アジア圏独特の英語も理解しなければならない。日本の子どもたちにはいささか荷が重いと思われるが、伊藤CEOは「国際社会で活躍する人材を育てるには、必ず乗り越えなければならない壁。子どもの頃から、こうした環境に触れ、他国の子どもたちと交流することだけでも良い経験になるはず」と語った。(BCN・道越一郎)
※APICTAの加盟16エコノミーの内訳は、日本のほか、オーストラリア、バングラデシュ、ブルネイ、中国、台湾、香港、インドネシア、マカオ、マレーシア、ミャンマー、パキスタン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナム
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