イヤホン市場で、完全ワイヤレスイヤホンは今、最もホットなカテゴリーだ。そのため参入メーカーは200社に迫る勢い。レッドオーシャン化も進んでいる。以前は破竹の勢いで販売を伸ばしていたが、一転頭打ち。台数前年比は伸びても数%程度。前年を割れる月も散見されるような状況が、昨年夏あたりまで続いていた。足踏みしていた市場を動かしたのは、アップルのUSB-C充電対応の第2世代AirPods ProとソニーのWF-1000XM5。
まず10月に参入したのがハーマンインターナショナル。JBLブランドの「Soundgear Sense」を発売した。続いて11月にAnkerが「Soundcore AeroFit/AeroFit Pro」の2モデルで参入。12月にはソフトバンクがGLIDiCブランドの「HF6000」で加わった。この3月にはファーウェイが「FreeClip」、BOSEも「Ultra Open Earbuds」をひっさげて参入。にわかに市場はにぎやかになってきた。完全ワイヤレスイヤホンのうち、ながら聞きモデルのメーカー別販売台数シェアは、この3月、BOSEが31.5%でトップ。発売直後ながら一気に首位の座についた。
消費者にとって、あまりに種類が増えすぎて、ある意味「おなか一杯」ともいえる状況になっていた完全ワイヤレスイヤホン。ここに「味変」効果をもたらし市場に新風を吹き込んでいるのが、ながら聞きイヤホンだ。マイクを使って外音を取り込むイヤホンは多いが、どうしても電子的な音になりやすい。その点、物理的に外音が聞こえる構造のながら聞きイヤホンなら聞き疲れしにくい。使用時間が長くなりがちなユーザーにはぴったりだ。昨年3月の時点で、ながら聞きイヤホンの販売台数構成比は2.1%に過ぎなかった。しかし、この3月では8.5%と1割に手が届くところまで拡大している。今後、まだまだ増えていきそうだ。
※物理的に耳をふさがないタイプのイヤホン。このうち本稿では、完全ワイヤレスタイプに焦点を絞った。クリップ型・クリップ(インナーイヤー)型の完全ワイヤレスイヤホンとソニーの「LinkBuds」が対象。同社の「LinkBuds S」についてはマイクで外音を取り込むカナル型イヤホンであるため集計から除外した。
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