音のVR収録を実現するマイク、
Sennheiser「AMBEO VR MIC」(左)と、
価格が約10分の1のSaramonic「SR-VRMIC 3D Microphone(SR-VRMIC)」
音のVR用マイクとして一般的なのはSennheiser(ゼンハイザー)の「AMBEO VR MIC(AMBEO)」とRODE(ロード)の「NT-SF1」。一般的なVR収録では、選択肢はこの2本ぐらいしかなかった。いずれも20万円前後と高価な製品。そもそも特殊な形状をしている上、4つのマイクカプセルの特性をきちんと揃えなければならない。製造コストは高くつきそうだ。
そこへ登場したのがSR-VRMIC。特徴は何と言っても価格。中国の海外向け通販サイトAliexpressで現在、なんと2万円前後で購入できるのだ。残念ながら、これを発見したのはAMBEOを入手した後。しかし「音の人」として「環境音収録の専門家」を目指している私としては、スルーするわけにはいかない。追加で購入することにした。昨年秋に購入した際は、なぜか1万4503円と冗談みたいに安かった。これまでの定番マイクに比べ10分の1以下。この安さは驚異的だ。
マイクグリルを外した「AMBEO VR MIC」(左)と
「SR-VRMIC 3D Microphone(SR-VRMIC)」
SR-VRMICの特徴は、一言で言って、SennheiserのAMBEOにそっくりなこと。4つのマイクの方向や角度は決まっているので、形状が似るのは当たり前だが、全体の雰囲気もそっくり。ただ、全く同じというわけではない。SR-VRMICの方が大ぶりで、やや垢抜けない感じはする。4つのマイク出力があるので、マイクのコネクターは12pinのDIN規格と特殊なもの。1本のマイクからXLRコネクタが4つ出ることになる。これもAMBEOと同一で、ケーブルなどは相互に流用できる。
SR-VRMICとAMBEOを並べて、神戸メリケンパークでテスト収録をしてみた。結果、両者の性能に大きな違いはみられなかった。SR-VRMICのほうがわずかにホワイトノイズのレベルが高いぐらい。実用上は全く問題なさそうだ。VR効果の具合も大きな違いはなかった。
「AMBEO VR MIC」(左)と
「SR-VRMIC 3D Microphone(SR-VRMIC)」を並べてテスト収録
音のVR収録を行うには、VRマイクに加え録音機も必要だ。今なら、音割れしない32bitフロート収録対応のレコーダーがいいだろう。VR収録対応レコーダーの代表格として、ZOOM(ズーム)のフィールドレコーダー「F6」がある。価格(税込み、以下同)は7万9000円。マイクと合わせると、安くても10万円コースだ。一方、4チャンネル収録で音のVRを体験するのに、一番手ごろなのは、ZOOMの「H3-VR」だ。本体に3Dマイクを備えたレコーダーで価格も2万6000円。しかし、収録フォーマットが96kHz/24bitまでと、32bitフロート録音には対応していないのが残念。ダイナミックレンジの広い環境音などを収録するには、やはり32bitフロート録音で臨みたいところだ。
オーディオテクニカの8チャンネルマイク「BP3600」
音のVRに使える多チャンネルマイクは他にもあり、有名どころでは、ポーランド・ZYLIAの19チャンネルマイク「ZYLIA PRO」がある。わが日本の代表的音響メーカー、オーディオテクニカの8チャンネル イマーシブオーディオマイクロホン「BP3600」も、音のVRを実現する。世界的にも有名なNHK御用達のマイク専門会社、三研も、多チャンネルマイクの研究は行っているが、こちらは、多くのマイクを切り替えて、どの方向からの音にも対応できるようにするもの。少々コンセプトは異なる。いずれにせよ音の収録については、自分を取り囲む音を丸々取り込めるような機器がそろってきた。
鹿島建設が開発した「OPSODIS 1」。
通常ヘッドホンでしか得られない
バイノーラル効果をスピーカー再生で実現する
音のVRで最も大きな問題は再生。5.1チャンネルサラウンドなど、実際にスピーカーに囲まれるような環境で再生できれば、極めてリアルな音響体験が得られる。ヘッドホンやイヤホンで再生するなら「バイノーラル方式」で出力することで、かなりリアルに再生できる。しかし、一般的な左右2チャンネルのスピーカーだけで再生する場合は、なかなか真価が発揮できない。ところが、鹿島建設が開発した「OPSODIS」は、通常ヘッドホンでしか得られないバイノーラル音源のリアルな再生を、スピーカーでも実現。画期的な技術として注目を集めている。
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