わずか1年の間にルンバのラインアップを刷新することにしたのはコーエンCEOの指示。すべての製品を設計から製造まで見直す必要があるとの考えからだ。6機種を一気に発表するのは初めてのこと。山内洋 製品担当ディレクターは「開発部隊も100人単位でリストラされる中、1年足らずでの開発はものすごく大変だった。寝る間も惜しんで仕事をした」と話す。同社が極めて切迫した状態に置かれていることがよくわかる。非常事態が日本で改めて認識されたのはこの3月。2024年度決算報告書の一文からだ。「2024年の連結財務諸表の発行日から少なくとも12カ月間、事業を継続できるかどうかのゴーイングコンサーン(継続企業の前提)に相当な疑義があります」とあった。
起死回生を目指すラインアップ「全とっかえ」がどれほどの効果をもたらすのか。すでに欧米では新製品が発売されているが、コーエンCEOは「まだ発売したばかりだが、初期は予想通りの動き。製品の評価は高い」とするにとどめる。必ずしも出足絶好調、というわけではなさそうだ。この状況を反映してか、株価の低迷は続いている。米NASDAQ市場で21年に一時197.4ドルを記録した同社株。しかしこの3月の終値では3ドルを切る2.8ドルまで下落。4月に入ると新製品の登場効果で底を打った感はある。しかし、依然2ドル前後と過去最安値水準で推移している。今のところ株価は「V字回復」にはほど遠い。決算報告書には「消費者の需要、競争、マクロ経済状況、関税政策などの潜在的な要因により、新製品の発売が成功するという保証はありません」という記述もある。
とはいえ、ルンバが繰り出した新製品は単に従来の延長線上にはない。「刷新」とするにふさわしいもののようだ。例えば、これまではモデル毎にできるだけ部品の共通化を行い、アクセサリーなども共用できるよう工夫していた。今回からその考えを捨て、それぞれのモデルで最適な部品を採用することで、コストを圧縮した。また、設計から製造に至る細部まで「自前主義」を貫いてきた同社。それゆえコスト高体質にもなっていた。舵取りは同社が主導しつつ、海外のパートナーを積極的に活用する体制に改めたことで、コストダウンに結び付けている。同社を経営不振に追い込んだ要因の一つに、低価格製品を打ち出す中国企業の台頭がある。開発体制の見直しを通じ利益率を上げ、価格競争力を取り戻すのも、ラインアップ刷新の狙いの一つだ。
例えば、10万円を切った「全自動モデル」。吸引掃除機と水拭き、水ぶきパットの乾燥機能と自動ゴミ捨て機能がそろった「Roomba Plus 405 Combo + AutoWash 充電ステーション」を税込みオンラインストア価格9万8800円で販売する。
22年8月、米・Amazonは、経営不振に苦しむiRobotを約17億ドルで買収すると発表。しかし24年1月、「EU・規制当局の承認を得る見込みが立たない」として買収を断念した。
ロボット掃除機という新たな製品ジャンルを、ルンバの名のもとに開拓したiRobot。出自は、一定の面積を網羅的に探索できる地雷探査技術だ。地雷探索では一切の漏れが許されない。多少時間がかかっても非効率でも面積をすべて「塗りつぶす」事が必須。初期型モデルのルンバが「無駄な動きが多い」と評されたのもうなずける話だ。初号機が登場したのが2002年。わずかなセンサーで実現させた掃除ロボットは、ある意味「エンジニアリングの塊」のような製品だった。時代は進みIT技術は飛躍的に進歩した。今やAI全盛。SFの話にすぎなかったヒト型家事ロボットまで、登場目前と言われている。家事ロボットの先駆者iRobot。
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