電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、2023年以降インクジェットプリンターの出荷台数が急減していることが明らかになった。また、BCNランキングによると、インクジェットプリンターは毎年12月に販売台数を多く稼いでいることが分かった。
出荷データと販売データを使い、市場の動きを追っていく。

 JEITAが発表するインクジェットプリンター(IJP)の出荷台数推移を19年から追っていくと、22年までは300万台超を維持していた。しかし 、23年は222.3万台と前年に比べ一気に100万台減となった。
 翌24年は180.1万台とさらに減少した。24年のさらなる落ち込みの大きな要因は、年賀状の料金が63円から22円値上がりし、85円になったことが挙げられるだろう。
 年賀状の料金にビビッドに反応したのは、IJPが年賀状と密接な関係があるためだ。IJPの年間における月別の構成比をみると明らかになる。
 家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」を用い、22~24年にわたる月別の販売台数構成比を算出した。構成比は毎年10月に動き始める。これは、メーカー各社が9~10月にかけて新製品を発表し、前モデルが値下がりしはじめるタイミングと合致する。その後、構成比は急伸し12月に15%前後を占める。
 IJPは大きく2種類に分類できる。
まず、印刷機能のみを持つシングル・ファンクション・プリンター(SFP)。次に、印刷機能に加えてスキャナー機能やファクシミリ機能など、複数の機能を持つマルチ・ファンクション・プリンター(MFP)の2種類だ。
 もともと、IJPはSFPしか存在しなかったが、付加価値を持たせるためにスキャナ機能などを搭載するようになった。現在ではMFPが9割超を占めるまでになっている。
 ペーパーレス化やデジタルトランスフォーメーションによって、印刷の需要は着実に減少している。また上にも書いたように、年賀状文化も消えつつある。こうした要因が、IJPの出荷や販売の減少につながっていることがデータからも読み取れる。
 まだまだIJP市場は縮小するかもしれない。しかし、一定の印刷需要は残るため、近々市場が消滅することはない。
(BCN総研・森英二)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
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