パナソニックは8年ぶりにフルモデルチェンジした冷蔵庫の新製品HYタイプを発売した。コンパクトBIGのHYタイプは従来のモデルよりスリムなのに大容量。
食品をたくさん収納できる製品に買い替えたいけどスペースが…という人におすすめしたいモデルだ。

●住居面積の減少とまとめ買いや冷凍食品の消費量増加に対応
 パナソニックでは、コンパクトなサイズで省スペースなのに収納量が大容量のタイプをコンパクトBIGシリーズと名付けて展開している。既発製品は片開きドアのRYタイプと両開きのEYタイプで、ここにハイグレードモデルの新製品HYタイプが新たに加わった。
 このHYタイプについては当サイトで25年3月6日に掲載したが、パナソニックでは発売を控えた4月下旬に体験セミナーを開催。改めて同タイプに採用されている技術や改良ポイントなどを紹介する。
 住宅金融支援機構のフラット35利用者調査によると、新築マンションの購入面積は過去よりも減少している。住居面積の減少は、当然ながら冷蔵庫を置くスペースも小さくなっていることを意味する。
 一方で共働き世帯は拡大しており、家事の負担軽減からまとめ買いや冷凍食品のニーズは高まっている。特に近年は冷凍技術の進化もあって、冷凍食品は生鮮食材から惣菜、メインディッシュまでバリエーションが広がり、消費量は拡大基調にある。
 冷蔵庫の設置スペースは狭くなっているにも関わらず、まとめ買いや冷凍食品の消費拡大により、庫内に収納したい食材や食品は増えているというのが実情。この実情とニーズに対応してパナソニックが展開しているのが、コンパクトBIGシリーズだ。
 HYタイプのラインアップは3モデル。
定格内容積551LのNR-F55HY2(以下、型番のNR-を省略)と同501LのF50HY2、同450LのF45HY2だ。
 2024年に発売されたF53HX1と新製品のF55HY2は横幅と奥行きが同じサイズだが、冷凍室の容量は14L増え、全体の容量も26Lアップ。1年前のモデルと同サイズにも関わらず、容量が増えている。
 買い替えを想定して、約9年前に発売されたF502Vと本体の幅と奥行がほぼ同じサイズの新製品F55HY2を比較すると、冷凍室は18L増え、全体の内容積は約50Lも拡大。同じ設置スペースで、これまでより収納できる容量が大幅に増えるというわけだ。
 では、買い替え時に容量が同じであればどうか。F502Vと同じ容量の新製品F50HY2を比較すると幅は35mm、奥行は42mm小さい。9年前のF502VをF50HY2に買い替えると、これまでよりも狭いスペースにも設置でき、しかも冷凍室の容量は7Lアップ。それだけ冷凍食品・食材が多く収納できるようになるのだ。
 HYタイプは横幅がすべて65cmで、奥行はF45HY2とF50HY2が65cm、F55HY2が69.9cm。一般的にシステムキッチンの奥行は65cmで、F45HY2とF50HY2ならシステムキッチンに並べてもはみ出さず、手前の面がピッタリ合う。
 このように冷蔵庫の買い替えでHYタイプを選ぶと、設置スペースを気にすることなく大容量で、特に冷凍室の収納量が多くなるというメリットがある。

●フルモデルチェンジで消費者のニーズに対応
 HYシリーズでは、なぜ省スペースかつ大容量を実現できたのか。その理由の一つは、フルモデルチェンジだ。
 フルモデルチェンジでは全体の設計も含めて細部まで見直し、新しく設計した新製品のために成形用の金型もゼロから作る。それゆえフルモデルチェンジには莫大なコストがかかる。
 ここ数年、フルモデルチェンジした新製品を発売したメーカーのほとんどが、フルモデルチェンジは8~10年ぶりである。頻繁にフルモデルチェンジをしないのは、それだけ多額の投資コストが必要になるからだ。
 パナソニックによると、省スペース化と容積アップによる大容量化にしっかりと対応するにはフルモデルチェンジしかなく、投資と回収のコストバランスや消費者ニーズと利便性の向上などを検討した結果、フルモデルチェンジを決定したという。
 逆に言えばフルモデルチェンジによって省スペースと大容量を両立することができ、加えて冷蔵庫としての使いやすさについてもさらに進化させることができたとのことだ。
●ウレタン素材の変更や側面の放熱パイプの廃止などで薄壁化を実現
 省スペースかつ大容量を実現できたもう一つの理由が薄壁化だ。冷蔵庫は食材や食品を冷やして保存するため、住宅と同じように断熱材を使用して保存中に外部の熱が侵入しないような構造になっている。
 一般的に断熱材として使用されるのは発泡ウレタンと真空断熱材で、外側に真空断熱材を配置し、その内側に発泡ウレタンを敷き詰めている。
 壁を薄くすれば、庫内の容積は拡大する。
しかし、薄壁化には3つの課題があったという。それは、壁を薄くすることで断熱性能が低下すること、成形時の発泡ウレタンの流れにくさ、薄壁化による壁の強度確保だ。
 発泡ウレタンは液体で、必要な部分に流し込むと発泡して膨らむ。HYタイプでは、この発泡ウレタンに新素材を採用した。従来の素材は液体であるものの流動性が高いとはいえず、コーナー部や回り込みなどの小さい場所や薄い場所にうまく流し込むことができなかった。そのため、従来は発泡スチロールやほかの素材を用いてカバーしていた。
 新製品ではこの断熱用ウレタンに流動性の高い新素材のR-1224ydを採用。この素材変更によってコーナーの隅のように小さい場所や薄い場所にもしっかり流し込めるようになった。しかもR-1224ydの採用で断熱性能も約13%アップし、従来よりもウレタンの厚みを薄くしながら強度も確保することができた。
 薄壁化の実現はこれだけではない。庫内を冷やすための冷媒循環パイプも従来は一部が冷凍室エリアで重なっていたため、その重なりの分だけ壁が厚くなっていた。HYタイプではこの冷房循環パイプの配置レイアウトを変更して重なりを解消し、その分薄くすることができた。

 さらに放熱システムも見直した。従来は側面内側にも放熱用パイプを配置して、機械室から発する熱を冷蔵庫全体で放熱していた。HYタイプでは機械室の放熱ファンを大型化し、放熱能力が約3.6倍という高効率のマイクロチャネルコンデンサーを新たに採用した。
 これにより機械室の熱は機械室内で放熱するため、側面内側にあった放熱パイプをなくすことができ、その分、庫内の容積が拡大した。
 薄壁化はこのように断熱材を薄くするだけではなく、内部の構造や使用部材も変えることで実現したのだ。
●冷凍室上段は深型ケースで食品をタテ置き収納可能
 大容量を実現したHYタイプは、冷凍室の容量がアップするとともに新たな工夫で使いやすさもアップしている。その工夫とは、上段ケースの深さを従来の約8cmから約12cmにして、冷凍食品・食材を立てて収納できるようにしたことである。
 タテ置き収納のメリットは、ひと目で収納しているものが分かること。ヨコ置きで積み重ねると、当然のことながら一番上に置かれたもの以外は隠れて見えない。
 同社がファミリー世帯の男女1200名を対象として実施した意識調査によると、『冷凍室からいつ保存したかも分からない化石のようになってしまった食材が出てきた経験はあるか』との問いに、回答者の半数近い47.5%が「かなりある」「たまにある」と回答した。
 「ある」と回答した59.9%は、その食材を「捨てた」。つまり、冷凍保存したにも関わらず、結果的に廃棄した経験がある人は意外と多いことが分かる。

 冷凍食品・食材をタテ置き収納して見えるようになれば、この廃棄ロスを低減することが可能となる。
 また、同社の冷凍室と野菜室は高耐荷重のベアリング式レールを採用した、奥まで見えるフルオープン。いずれの部屋も100%フルオープンで引き出すことができ、タテ収納での視認性はもちろん、冷凍食品・食材の出し入れも非常にラクである。
 冷凍室をフルオープンで引き出せるからこそ、タテ置き収納のメリットを最大限活かせるのだ。
 さらに冷凍室上段のケースには専用のカバーを配置して霜つき抑制冷凍を実現している。カバー上部にはいくつもの小さな穴が開けられており、ケース内部への外気の侵入を防ぐと同時に冷凍保存時は、この穴からケース内の不要な湿気を逃がす。
 ドアの開閉によるケース内の温度変化を抑え、余分な湿気を逃して霜つきや食材の冷凍焼けも抑制するという仕組みだ。
 省スペースかつ大容量を実現したコンパクトBIGシリーズのHYタイプは、8年ぶりのフルモデルチェンジで機能や使い勝手が大きく進化した。冷蔵庫の買い替えを考えているのであれば、家電量販店の店頭などでフルモデルチェンジの成果を実際に体験してみることをおすすめしたい。
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