【家電コンサルのお得な話・251】 「2024年度見込み、45.8%」。これは、財務省が2025年3月に発表した「国民負担率」である。
国が国民から徴収している「目に見える」負担の割合であり、国民や企業が所得の中からどれだけ税や社会保険料を支払っているかを示すものだ。

●働いて得た報酬のほぼ半分が税金や社会保険料に消えている
 改めて説明すると、国民負担率とは、租税負担率と社会保障負担率を合計した数値であり、たとえば所得税や消費税といった税金に加え、国民年金、厚生年金や健康保険、介護保険といった保険料が含まれている。24年度の国民負担率(見込み)は定額減税の影響によりわずかに前年度(46.1%)に比べ低下したが、引き続き高い水準にある。また、国民負担に財政赤字を加えた潜在的国民負担率は50.9%という。
 一方で、財務省が公表した「国民負担率の国際比較」によれば、日本はフランスやスウェーデンよりは低い。しかし、これはあくまで「見かけ上」の比較に過ぎず、実際の生活感覚とはかけ離れている。
 よく「欧米と比べて日本の消費税率は低い。もっと負担を増やすべきだ」といった意見を耳にするが、これは論外である。なぜなら、日本の制度には、国民負担率には反映されない「見えない負担」が数多く存在しており、それが生活の中で確実に重くのしかかっているからだ。
 その代表的な例が医療費である。フランスや北欧諸国などの「高福祉高負担」の国では、医療費は原則無料、または極めて低額で済む仕組みが整っている。しかし、日本では、原則3割負担、75歳以上の高齢者は収入に応じて1割または2割負担のため、医療機関を受診するたびに別途支払いが発生する。
高額医療費制度もあるが、対象外の支払いもあるため、長期の入院や手術となれば家計への影響は小さくない。こうした制度の違いがある以上、単純に国民負担率の数値を比較することは公平ではないだろう。
 医療費の自己負担がある日本国民の「実質的な負担」は、表に出ている数字よりもはるかに重く、時間に換算すると、1日8時間働くうちの約4時間を、納税や社会保険料のために費やしている計算になる。税金の徴収とその使途について、いまこそ真剣に見直すべき時期が来ているといえるだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。
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