NVIDIAのGPU(画像処理エンジン)、GeForceシリーズは、グラフィックボードなどに搭載するGPUとして大きなシェアを誇る。このGPUがAI処理にも有効とあって、最近では注目度とともに株価もうなぎのぼりだ。今年のCOMPUTEXのテーマは昨年に引き続きAI。昨年が、さしずめAI元年とすれば、今年はAI実用元年。「使えるAI」の活用例が随所に示され、AIの浸透が急速に進んでいることをアピールする展示会になった。その中心人物の一人がファンCEOだ。
もう一つ今年のCOMPUTEXで「これでもか」と展示されていたのがサーバー用の水冷システムだ。どこもかしこも水冷、水冷のオンパレード。サーバー関連展示の主役だった。データセンターが単なる「データの倉庫」から、新たな価値を創造する「AI工場」に激変すると、発熱の問題は避けて通れない。水冷でなければ間に合わなくなる。AI活用が急速に拡大するのを見越しての水冷システムだ。これまでサーバールームと言えば、年中肌寒い室内で盛大にうなりを上げる無数のファンの音、というのが定番だった。しかし、データセンターの主な役割が、データの蓄積からAI処理に激変すると、その様子も変わってくる。静かなフロアに無数の水冷用パイプ。
データセンターと言えば、千葉県印西市や流山市、東京都では昭島市などで、建設反対の運動が起きている。しかし、有害物質を垂れ流す恐れはなく、無数のコンピューターが動き続けるだけの建物。特に人体に有害な要素は見当たらない。騒音や振動と言っても、ショッピングセンターの空調機器が発する程度のもの。盛大に電力を消費することを別にすれば、今のところ、取り立てて大きな問題はなさそうに見える。強いて問題点を挙げるなら、日照権や景観などの問題。これなら、他の建物であっても同じで、データセンター特有の問題ではない。
データセンターという「中身がよくわからず得体の知れないもの」を忌避するという気持ちは理解できなくもない。それゆえの反対運動という側面もあるのだろう。とはいえ、基本的に反対運動は大げさな話だと思っていた。しかし、COMPUTEXの水冷祭を目の当たりにして、ちょっとした恐怖を感じ始めている。
現時点で繰り広げられるデータセンターの反対運動は、そうした近未来を本能的に感じ取ってのことなのかもしれない。AI利用が加熱することで、夏の暑さがさらに厳しくなるようなことだけは勘弁願いたい。(BCN・道越一郎)
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