デジタルカメラ(デジカメ)市場は、部品価格の高騰による製品価格の上昇と、スマートフォンカメラの高性能化による代替により、市場規模は縮小傾向にある。こうした状況の中、少しずつではあるもののデジカメ市場で変化が起こっていることが家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」から明らかになった。
また、後編ではマクロミルのアンケートを用い、ブランド別の満足度やユーザー属性の違いを明らかにしてく。
●デジカメ市場、縮小続く
 2018年一年間の販売台数を「100.0」とした指数をみると、20年にはコロナ禍による外出制限の影響で47.1まで急落。23年以降は緩やかな回復傾向にあるものの、大幅な販売回復には至っていないことがわかった。
●平均単価上昇6割がレンズ一体型、しかし主役はミラーレス一眼?
 タイプ別構成比では、比較的安価でコンパクトなレンズ一体型モデルが依然として6割以上を占めている。残り4割弱の内訳については、ミラーレス一眼の構成比が増加傾向にある。一眼レフでは、対照的に主要メーカーを中心に生産を一時停止、あるいは新規生産を行わない動きにより、市場における存在感が希薄となっている。
●キヤノン・ニコンの牙城崩れる?新勢力が台頭
 市場におけるメーカー別販売台数シェアの推移を分析する。18年から19年にかけて、キヤノンとニコンの2社で過半数のシェアを占める寡占状態だった。しかし、早期からミラーレス一眼を取り扱い始めたソニーが、着実にシェアを拡大。20年以降はニコンのシェアを上回り、キヤノンに次ぐ2位となった。
 さらに21年以降は、KODAKが廉価なレンズ一体型を主力として市場への攻勢を強めている。特に、レトロブームを背景にデザイン性と手軽さを兼ね備えた製品の販売増が、シェア拡大に寄与したと考えられる。

 ミラーレス一眼の黎明期から参入していた富士フイルムも、一眼レフからミラーレス一眼への移行期にシェアを伸ばしている。同社は若年層に人気の高いインスタントデジカメもラインアップしており、高価格帯と低価格帯の「二軸戦略」で幅広いユーザー層を獲得している。
 さらに、ケンコー・トキナーも廉価なデジカメに加え、若年層をターゲットとした手のひらサイズのトイカメラを発売するなど、新規ユーザー層の開拓に積極的だ。
 こうした動向から、市場はキヤノンとニコンの2強時代から、多様なメーカーが競争する群雄割拠の時代へと移行しつつあると言える。
●新勢力が台頭、若年層獲得がカギ?デジカメ市場、生き残りをかけたメーカー戦略
 18年と24年を比較した、デジカメ市場の販売台数シェアをカテゴリ別にみると、それぞれ異なる傾向が浮かび上がることが分かった。
レンズ一体型
 過去7年間でキヤノンのシェアが7.7ポイント減少。一方、KODAKは20.7ポイントと大幅にシェアを伸ばした。これは前述の通り、KODAKが若年層をターゲットとしたレトロな写真が撮れる廉価版カメラを発売し、成功を収めたことがひとつの要因と言える。ケンコー・トキナーも同様に11ポイントもシェアを伸ばしており、両社とも若年層を取り込む製品戦略が奏功したと考えられる。
 廉価版のレンズ一体型は、スマートフォンでは撮れないような写真が撮れることに加え、コンパクトなサイズ感と手頃な価格帯である点が、若者にも手に取りやすい理由となっている。こうした魅力を活かして新規ユーザーをいかに獲得できるかが、メーカーのシェアを左右する重要な要素となっているといえるかもしれない。
ミラーレス一眼
 高級デジカメ市場の中心であるミラーレス一眼では、18年時点で、早期にミラーレス規格を確立し製品化を進めたOMデジタルソリューションズ(旧オリンパス)とソニーに加え、根強いファンを持つキヤノンが32%と高いシェアを占めていた。

 24年では、ニコンのシェアが15%まで増加した。しかし、ソニーは13ポイントもシェアを伸ばしており、ミラーレス一眼ではソニー、キヤノン、ニコンの「3強時代」に突入したとみられる。
一眼レフ
 一眼レフは、フィルムカメラ時代からキヤノンとニコンの寡占状態が続いている。24年においてもその状況に大きな変化はみられない。レンズ交換型は、一眼レフからミラーレス一眼へと移行しており、両社ともカメラ本体および交換レンズの新規発売は行っていない。
 リコーイメージングも同様に、22年以降は新製品を発表していない。今後も漸減基調で推移し、一部の熱心なファン層のみが残るニッチな領域へと移行していくと予想される。
Corekaによるアンケート調査の概要
調査名 デジタルカメラに関する調査
調査機関 マクロミル
調査方法 インターネットリサーチ
調査対象者 全国15-79歳男女
回答者数 4531人
割付方法 エリア性年代均等割付後、人口推計に合わせて構成比を補正
調査実施期間 2024年7月~2024年9月
BCNランキングの概要
全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
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