西武鉄道の親会社である西武ホールディングス(西武HD)とJR東日本は20年12月に包括的提携を結び、これまでさまざまな取り組みを実施してきた。
また西武鉄道は26年3月から、小田急電鉄が22年3月に始めた子育て世帯優遇策と同じ「小児(6歳~12歳までの小学生)IC運賃1乗車50円」に加え、小児向け通学・通勤定期券を均一料金(500円または1000円)とする子育て支援策を開始すると発表した。頻繁に電車を利用する小学生の子どもがいる家庭にとっては大幅な負担軽減につながり、あまりの大盤振る舞いに少子化の深刻さがうかがえるという見方もある。
今回は記者が得意とする「ポイ活」の視点から、西武池袋線とJR武蔵野線直通のルートを予想してみたい。なお、8月8日までに報道された情報に基づく、あくまで個人的な予想であることをお断りしておく。
●両方のポイント会員のみ当たる「Wチャンスキャンペーン」実施中
西武鉄道は、西武グループ共通会員サービス「SEIBU PRINCE CLUB」に登録したPASMOを使い、特定の条件で西武線・西武バスに乗車すると、1ポイント1円相当として使える「SEIBU Smile POINT」がたまる乗車ポイントサービスを展開している。サービス開始以降、年度ごとに内容をリニューアルしており、今年度(2025年4月1日~26年3月31日)の乗車ポイントサービスは、利用頻度の少ない人やPASMO定期券保有者もポイント還元の恩恵を受けられるので、西武線に乗車する機会が年に一度でもあるなら事前に登録しておくとお得だ。
具体的には、月ごとの乗車回数のカウントを廃止し、事前にウェブで登録したPASMO(登録済みPASMO)で乗車すれば、1回乗るだけで最大15ポイントを獲得できるよう変更した。SEIBU Smile POINTは、ポイントカードまたはアプリを提示することで西武グループが運営する駅ナカ・駅ビルなどの商業施設や対象サービスの利用でたまり、有料特急の利用やアンケート回答、ウォーキングイベントへの参加などでも獲得できる。ためたポイントは「PASMOアプリ」からPASMOのチャージ残高に最小1ポイントから1ポイント単位でチャージ可能で、1ポイント=1円の価値をもつ。
一方、JR東日本は、ウェブ登録したSuicaを使い、Suicaエリア内の在来線に乗車すると、1ポイント1円相当として使える「JRE POINT」がたまる乗車ポイントサービスを展開している。19年10月のサービス開始以来、「在来線乗車ポイント」のポイント付与ルールに変更はなく、別途、「えきねっと」で特急券などを購入した場合などもJRE POINTがもらえる。
JR東日本は、グループ全体で多数の駅ナカ・駅ビルを運営している。リニューアルや新規開業にも積極的で、首都圏エリア内では25年1月~6月の間に「エキュート秋葉原(秋葉原駅/25年4月)」「エキュートエディション御茶ノ水(御茶ノ水駅/25年5月)」がリニューアルまたは新規オープンした。さらに、25年3月に街びらきした高輪ゲートウェイ駅に直結する複合施設「TAKANAWA GATEWAY CITY」内の「ニュウマン高輪」が9月12日に本格開業予定だ。
報道によると、西武池袋線とJR武蔵野線直通は「観光臨時列車」を想定しているそうだ。西武HDのIR資料「2025年3月期 決算説明会 プレゼンテーション及び質疑応答 書き起こし」を参照すると、西武池袋線については「秋津駅とJR東日本の武蔵野線の新秋津駅間で相互直通運転したい。JR東日本さんとの協議をこれからしっかりやっていきたい」、西武新宿線については「東京メトロ東西線との相互直通運転をぜひ実現したい」とのことだ。
7月15日からは、共同キャンペーンとなる「JRE POINT×SEIBU PRINCE CLUB『Wチャンスキャンペーン』」も実施している。すでに両方のポイントサービスに登録済みか、両方に新規登録した人は、キャンペーンにエントリーすると「エントリー賞」として抽選で1000ポイント(500+500ポイント)が当たり、いずれかのポイントサービスに新規登録した場合は当選確率が3口にアップする。さらに、「おでかけ&お買いもの賞」「涼みにおでかけ賞」のそれぞれの条件を達成すると、最大3000ポイントが当たる。
●相互直通運転のルートは……
あくまで個人的な予想となるが、ずばり西武池袋線とJR武蔵野線直通のルートは、JR東日本グループの主要な駅ビルのある駅と西武秩父駅・所沢駅・本川越駅との間のすべて。連絡線上でスイッチバック(方向転換)すれば、どの方面とも行き来できるが、観光列車ということなので、JR東日本の主要駅から西武鉄道沿線にある観光地に来てもらうという流れになると予想する。
JR東日本の臨時特急の実績からみると、具体的なJR側の発着駅は大宮・八王子・横浜・海浜幕張・鎌倉(大船)・平塚・小田原などだろう。
根拠は、開催中の「Wチャンスキャンペーン」の「涼みにおでかけ賞」の達成条件(キャンペーン期間中にエントリーのうえ西武グループの対象のホテル・ゴルフ場・レジャー施設を訪問してSEIBU Smile POINTをためる)と、冒頭で紹介した、26年春から開始する小学生限定・ICカード限定の「小児IC運賃1乗車50円」だ。
JR東日本線の運賃は料金値上げ(26年春に改定予定)でも、西武線はどれだけ乗っても小学生は1乗車につき50円なら、時間に余裕のある春休みや夏休み期間のおでかけ先に西武線沿線の観光地は最適だ。さらにそこに、面倒な乗り換えのない直通列車があれば、選ぶ際の後押しになるはずだ。
さきほど挙げた駅ビルのうち、「セレオ八王子」を含むセレオ/nonowa、「ラスカ小田原」を含むラスカ4施設は会員制ステージプログラム(無料)を事前エントリー制や購入額による招待制で展開しており、年間購入額の多いロイヤルカスタマー向けのマーケティングに力を入れている様子がうかがえる。こうしたJRE POINTヘビーユーザー層に今までなかった観光列車を打ち出せば、目的とする「新しい人流」は十分に生み出せると考えられる。
28年度をめどに検討しているとのことなので、答え合わせは早くても3~4年後。それまでは今夏のようなポイント連携キャンペーンで相互送客を進めることになるだろう。JR東日本のデジタル金融サービス「JRE BANK」の銀行取引でたまるポイントとしてもおなじみのJRE POINTをためている人は要チェックだ。
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