山奥や海岸沿い、広い公園内など住所がないような場所で、地図アプリで現在地を示そうとしても、緯度経度の数字を読み上げたり、長いGoogle マップのURLを送ったりするのは現実的ではありません。また、「この辺です」と言えても、範囲が広すぎてピンポイントで伝わらないこともあります。
●BCNの場所は「///つたえる。あいであ。すしや」、「what3words」とは
what3wordsは、地球上を3メートル四方のグリッドに区切り、それぞれのグリッドにユニークな三つの単語(3ワードアドレス)を割り当てた革新的な位置情報技術です[2]。
例えば、東京・渋谷のハチ公像付近は「///いちば・こうてい・おいて」という3単語で表されます[3]。使い方はシンプルで、スマホアプリやウェブ版で自分の現在地や目的地の3ワードアドレスを確認し、その3単語を相手に伝えるだけです。
伝えられた側は、what3wordsのアプリやサイトにその3単語を入力すれば、地図上に正確な位置が表示されます[4]。3単語の組み合わせは言葉として覚えやすく、緯度経度の数字列よりも圧倒的に扱いやすいのがポイントです[5]。さらに専用アプリはオフラインでも利用可能なので、通信圏外や災害でネットが不安定な状況でもGPSさえ拾えれば3単語の住所を特定できます[6]。
実際に、what3wordsアプリを使って東京・神田にあるBCNの位置を示してみました。
この「///つたえる。あいであ。すしや」を共有すれば、位置情報を相手に伝えられますし、逆にwhat3wordsアプリで「///つたえる。あいであ。すしや」で検索すれば、BCNに辿り着けるというわけです。
●日本の警察・消防で使える?代替ツールの「Plus Code」
海外では既に英国の緊急対応機関の80%以上がwhat3wordsを導入していて、米国やドイツなど世界各国で124カ所以上の救急センターが採用するなど有効性が実証されています[7]。
とはいえ2025年現在、日本における一般的な110番・119番通報のオペレーターが直ちにwhat3wordsに対応してくれるとは限りません。what3wordsを伝えても理解されない場合は、スマホの地図アプリで確認できるGoogle マップの「Plus Code」を伝えるのも一案です。Plus Codeは住所代わりに使える短い英数字と地域のコードです。住所がない地点でも「6FV2+R3 東京」などの形式で正確な場所を特定できます[10]。
Google マップの「現在地を示す青い丸」をタップすると、一番下に「Plus Code」の文字が表示されます。実際にBCNがある場所をタップしてみると、Plus Codeは「MQR9+J46 千代田区、東京都」と表示されました。知り合いなどに伝える際は、「コードをコピー」して伝えます。
Plus Codeを受け取った相手は、Google マップの検索欄にそのPlus Codeをコピペして入力すれば、ピンポイントの位置を把握できます。建物の入口が複数箇所ある場合でも、どこの入口にいるのかがわかります[10]。緯度経度をそのまま伝えるよりもシンプルで間違いにくいコードになっており[11]、オープンソース技術のため専用の通信がなくてもオフラインで生成・利用できる利点があります[12]。
●それでもwhat3wordsが使いやすい
what3wordsの競合となる位置コード技術はいくつか存在します。前述のGoogle Plus Codeは世界中で無料公開されており、混同しやすい文字を除いた20種の英数字で構成されるため口頭でも比較的伝えやすい設計です[10]。
例えば、広い代々木公園で集合地点を決める際、「87G8+V5 東京」といったPlus Codeを共有しておけば確実に特定できるでしょう[13]。一方で、英数字のコードは覚えづらさもあり、三つの短い単語で完結するwhat3wordsの手軽さは捨て難い魅力です[5]。
●地域活動で活用!避難所で威力を発揮
災害時の地域活動でも、what3wordsはさまざまな活用が考えられます。例えば自治体の指定避難所が広い公園だった場合、事前に避難拠点となるテントの場所を3ワードアドレスで周知しておけば、初めて来る人でも迷わずに辿り着けます。
また町内会の防災訓練で、参加者同士がお互いのスマホにwhat3wordsアプリを入れて位置共有の手順を練習しておけば、本番の安否確認で役立つでしょう。避難場所となる公園などの広い場所でも、細かくエリアを説明できるので安心です。
●いざというときに備え、家族・地域で事前に確認を
災害はいつ起こるか分かりません。家族全員が一緒にいる時に被災するとは限らないので、「非常時にどうやってお互いの無事と居場所を知らせあうか」を日頃から話し合っておくことが大切です[18][19]。例えば、家族で集まる場所を決める際には、避難場所そのものだけでなく「〇〇小学校正門横」など具体的に落ち合うポイントまで決めておきましょう[19]。
その地点の3ワードアドレスをメモしておけば、万が一バラバラになったときも「○○で会おう」と簡単に共有できます。
こうした事前準備と練習を通じて、「ここにいるよ!」を正確に伝える方法を家族や地域で共有しておけば、いざという時の安心感が違います。災害時の連絡手段は一つに頼らず複数の方法を用意しつつ、新しいツールもうまく採り入れて地域の防災力を高めていきましょう。[20][21](ライター・レイ坂本)
出典:
1.Smart119 Press Release (2022)[1][2]
2.Risk Management News (2020)[3][7]
3.Note: Location Sharing Technologies (2019)[5][14]
4.Honichi News (2019)[6]
5.Future Tech Blog (2022)[10][12]
6.CAPA Blog (2020)[13][11]
7.Jenix Co. (2025)[16][17]
8.Haseko Bosai Info (n.d.)[19]
________________________________________
[1][2][8][9]「Smart119」が世界的位置情報アプリと連携。住所や目印がない場所でも119番通報者の位置特定が容易に | 株式会社Smart119のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000075.000056624.html
[3][4][7][20][21]住所より簡単に正確な位置情報を伝える | ニュープロダクツ | リスク対策.com | 新建新聞社
https://www.risktaisaku.com/articles/-/37245
[5][14][15]位置情報を伝える技術|Masato SERIZAWA
https://note.com/mserizawa/n/nd5b8dda20c60
[6]「what3words」とは?仕組みとメリット・デメリットを解説!世界中の住所を3つの単語で表す新システム | 訪日ラボ
https://honichi.com/news/2019/12/03/what3wordskaisetu/
[10][12]Plus Codeについて調べた | フューチャー技術ブログ
https://future-architect.github.io/articles/20220726a/
[11][13]Google plus codeとは|ピンポイントで場所を指定できて便利なコード | 株式会社キャパ
https://www.capa.co.jp/archives/33958
[16][17]【2025年最新】距離別で選ぶ!トランシーバー・無線機おすすめ15選 - 無線機・トランシーバー・インカムのジャパンエニックス
https://www.jenix.co.jp/best15/
[18][19]家族で決めておくべきこと ≪ 地震に備える ≪ 自然災害お役立ち情報
https://e-suteki.haseko.jp/saigai/kimeru.html
■Profile
レイ坂本
ITジャーナリスト。晋遊舎MONOQLO『クチコミ信者の銭失い』、週刊アスキー『ウイルスなんて死んじゃえばいいのに』、ラジオライフ『技適トラベラー』などのコラムを連載
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