標高1000m、澄んだ空気と静かな森に囲まれた「八ヶ岳南麓」。ここでのワーケーションは、単なる“旅先で仕事”というイメージを覆す深く豊かな体験だった。
9月25~27日の3日間にわたって開催されたイベント「第2回八ヶ岳ワーケーションDays」は、山梨県北杜市内の「神社の杜のワーキングプレイス8MATO(やまと)」「スーパー八ヶ岳」「ヤツクルベース」と、三つのコワーキングスペースにリモートワーカー約30人が参加。その一人として、八ヶ岳での“働きながら暮らす”時間を過ごしてみた。

●「観光地」ではなく「働く場所」としての八ヶ岳
 今回のテーマは「観光地ではなく働き暮らす場としての八ヶ岳」。観光地としての八ヶ岳は有名だが、平日の静けさの中で仕事に集中し、地域の人と交流するという体験は、まさに“暮らすように働く”という言葉がぴったりだった。
 イベントは「昼まで討論会!八ヶ岳ワーケーションの可能性」と題したオンラインセミナーでスタート。3会場をつないだライブ配信では、施設運営者や参加者が「ワーケーションは今でも生きているのか?」という問いを軸に議論を展開した。観光業の回復とともに政府主導のワーケーションは下火になったが、地域の日常に根ざしたコワーキングスペースがある場所では、今もなおワーケーションが息づいているという話が印象的だった。
●森の風を感じながら働ける「神社の杜のワーキングプレイス 8MATO」
 ここで、コワーキングスペースの特徴を紹介しよう。まず、神社の杜のワーキングプレイス 8MATOは、八ヶ岳南麓・山梨県北杜市にある、自然と調和したアウトドア型コワーキングスペースだ。オーナーは斎藤昌義氏。約2700坪の広大な森に位置し、隣接する八雲神社の境内の一部を活用している。森に浮かぶようなオープンデッキやカフェスタイルのスペースで、四季折々の自然を感じながら仕事できるのが特徴だ。

 敷地全体にWi-Fi 6の高速ネットワークを完備。モバイルプロジェクターやバッテリー、文房具などの備品も自由に利用できる。テレワーク用ブースや常設テントもあり、オンライン会議にも対応。森の風を感じながら働ける環境は、創造性や集中力を高めるのに効果絶大だ。
●遊びながら働ける「スーパー八ヶ岳」
 次に、スーパー八ヶ岳。山梨県北杜市にあるユニークなコワーキングスペースだ。オーナーは市川航氏。仕事だけでなく、ゲーミングPCを活用したeスポーツ体験や、プログラミング・3Dプリンターのワークショップなどを開催している。また、ボードゲーム、レトロゲーム、ベイブレード、ミニ四駆など、ホビー要素が満載。オーナーの趣味が反映された、遊び心あふれる空間だ。
 また、オーナーは山梨県の地域おこし協力隊にも関与。移住者や起業希望者のサポートにも力を入れている。
一般的なコワーキングスペースとは一線を画し、遊びながら働き、地域とつながる場所。そんな体験を求める人にはぴったりだ。
●都心から便利な立地の「ヤツクルベース」
 最後に、ヤツクルベースは山梨県北杜市小淵沢町にある、小規模ながらも温かみのあるコワーキングスペースだ。玉利裕重氏がオーナーを務める。自然に囲まれた静かな環境で、JR小淵沢駅から約3km、中央自動車道の小淵沢ICから約4.3kmと、都心からのワーケーション利用にも便利な立地。地域での起業や暮らしを支援するコミュニティの拠点でもある。
 屋外スペースを生かし、開放的な雰囲気での作業や交流が可能。地元の人や移住者とのつながりを育む場としても機能している。一時利用(ドロップイン)が可能で、気軽に立ち寄れるほか、小規模なセミナーや交流イベント、ワークショップの開催にも対応。都会の喧騒を離れて、「田舎でのんびり起業」や「自然の中での働き方」を実践したい人にぴったりだ。
●仕事の合間に「大人のボードゲーム体験会」
 2日目の午後に開催された「大人のボードゲーム体験会」は、自然豊かな八ヶ岳で知的好奇心をくすぐる体験だった。スーパー八ヶ岳を会場に、参加者は笑いと真剣勝負のひとときを満喫。
仕事の合間に脳も心もリフレッシュできる贅沢な時間となった。
●仕事と交流が交差する「BBQ&LT会」
 2日目の夜に開催された「BBQ&LT会」は、八ヶ岳ワーケーションDaysのハイライト。囲炉裏で焼かれたジビエ肉、地元のワインや地酒、そして参加者によるライトニングトーク(LT)。ワーケーション、地方移住、地域起業など、さまざまなテーマが語られ、非日常の空気の中で知的刺激が交差する時間だった。
●「働く場所を選ぶ自由」が生む豊かさ
 今回のイベントを通じて感じたのは、「働く場所を選ぶ自由」がもたらす豊かさ。自然の中で仕事をすることで、思考がクリアになる。地域の人と交流することで、視野が広がる。ワーケーションは、単なる“旅先での仕事”ではない。地域の日常に触れながら、自身の仕事と暮らしを再構築する体験を得ることができた。(BCN・佐相 彰彦)
【注目の記事】
ノートPCと一緒に八ヶ岳へ! 「ワーケーションDays」で仕事も交流も満喫
八ヶ岳暮らし最大の苦行!? 草刈りもポタ電で!
リモートワークの必需品、コンパクト全自動コーヒーメーカーで至福の一杯
「米どころ」といえば? Pontaリサーチ会員約15万人が答えた1位は新潟県
ノイキャン付きヘッドセットがあれば外でのオンライン会議も安心です
編集部おすすめ