2025年秋の新型iPhoneは、スタンダードの「iPhone 17」、フラッグシップの「iPhone 17 Pro」のほか、まったく新しい「iPhone Air」が第三の選択肢として提示された。最大の特徴は、Airという言葉に象徴されるように、薄さと軽さだ。
さっそく使ってみたのでレビューしよう。

●「iPhone Air」はエントリーモデルではない
 iPhone Airの薄さは最薄部で5.64mm(iPhone 17は7.95mm、iPhone 17 Proは8.75mm)と他のモデルと比較して群を抜いて薄く、使い心地に重点を置くユーザーにとっては、間違いなく気になる存在だろう。
 一方で、薄さゆえのデメリットはないのか、単眼のアウトカメラはどのような性能なのかなど、不安要素も少なくない。今回の記事では、iPhone Airの先入観によって誤解しそうなポイントを紹介し、どんな人が買うべきなのかを考えてみた。
 iPhone AirのiPhoneファミリーにおけるポジションがよく分からないという人もいるかもしれない。基礎情報にはなるが、iPhoneはスタンダードの無印の上に「Pro」があり、25年2月に発表された「iPhone 16e」は(Appleが明言しているわけではないが)価格や性能でエントリーの立ち位置にあるといえる。
 では、iPhone Airは?正直、本機を従来のシリーズの中に位置づけるのは、なかなか難しい。アウトカメラが単眼なのでエントリーかと思えば、チップはフラグシップのiPhone 17 Proと同等のA19 Proを搭載している。「17」というナンバリングが外れていることからも、Airは松竹梅の括りではなく、まったく別のラインのiPhoneと捉えた方が間違いないだろう。
 各仕様をみていくと、納得度も高まると思う。秋に発表された新モデルの素材はiPhone 17/17 Proはアルミニウム(ProはアルミニウムUnibody)だが、Airはチタニウムを採用している。画面サイズはiPhone 17/17 Proが6.3インチなのに対して、Airは6.5インチと若干大きい。
根本的に目指している方向が異なっているのだ。
●圧倒的薄さへの感動は異論なし!
 これまでAppleが展開してきたAirと冠するデバイスには、MacとiPadがある。いずれも薄く・軽いという特徴は今回のiPhone Airと共通している。ただ、MacとiPadが薄さよりは軽さにありがたみを強く感じるのに対し、iPhone Airは薄さがもたらす価値の方が重いように感じる。
 iPhoneを長年愛用してきた筆者だが、iPhone Airを最初に手にしたときには、思わず「薄ッ!」と声に出てしまった。毎日少なくない時間、手にしているデバイスだからこそ、新鮮な感動を味わうことができた。
 初めてiPhone miniが登場したときの「これでいいんだよ」とは異なる、「お、もしかしてこれが最適解?」と自分に問いかけたくなる感覚。まだ発売されたばかりということもあり、性能に関しては世間の評価が分かれているようだが、この圧倒的な薄さへの感動に関しては「異論なし」という意見が多数を占めているのではないだろうか。
●処理性能は満足だが、カメラはやはり物足りなさを感じる
 薄さを実現したことによるトレードオフは当然あるが、iPhone Airの基本性能は、発売前の予想よりは驚くほど高水準を維持している。チップがProと同等であることは既に述べたが、ディスプレーもProと同じ「Super Retina XDRディスプレイ」で、最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートにも対応している。
 MagSafeによるワイヤレス充電が最大20Wまで(17/17 Proは最大25W)だったり、転送速度がUSB 2対応(17 ProのみUSB3対応)だったり、見劣りする部分もあるが、よほどのヘビーユーザーか、ガジェット好きでなければ気にはならないレベルだ。
 ただ、カメラについては、購入前にそれぞれの違いをよく理解しておくことが重要だ。
アウトカメラとしてたったひとつ搭載されている48メガピクセル(MP)のメインカメラはそれ自体の性能は優秀だが、超広角・望遠カメラがないことによる制約は少なくない。この点については、作例も交えながら詳細にみていきたい。
●光学ズームは2倍まで。マクロ撮影は非対応
 iPhone Airの最大の弱点(薄さとのトレードオフになる要素)は光学ズームが2倍まで、超広角カメラを搭載していないので0.5倍での撮影もできないということだ。iPhone 17 Proがいよいよ8倍まで対応してきたことを考えると、物足りないと感じるのは否めない。
 一方で、2倍までのズームの中で撮影できる写真のクオリティーは素晴らしい。今回は作例として動物園でミーアキャットを撮影してみたのだが、毛並みや地面の起伏が表現力豊かに描写されていた。「単眼だからカメラの性能はイマイチ」ということは決してない。
 ちなみにデジタルズームは最大10倍まで対応している。さすがに10倍までいくとかなり粗さが目立つが、4倍くらいであれば、十分見られるレベルの描写であったことも付け加えておきたい。
 もうひとつ、カメラ性能で残念なのは、マクロ撮影に対応していないことだ。例えば、料理を近くで撮影したいという人には注意してほしいポイントだ。

●セルフィーは18MPセンターフレームフロントカメラで使いやすく進化
 25年秋に発売された全モデル共通の進化として、フロントカメラのスペックアップ&機能向上は特筆すべきものがある。iPhone 16までは12MPだったが、iPhone 17/17 Pro/Airは18MPになり、新たに被写体が常に中央に収まるように自動で画角を調整するセンターフレームフロントカメラを採用している。
 これは一人でセルフィーを撮るときは通常の画角、フレーム内に2人になるとより広角、さらに人数が増える、あるいは背景を入れたいというときには、スマホを縦持ちしたまま、横長のセルフィーが撮れるというものだ。
 スマホを横に傾けてセルフィーをするときの操作のしにくさや目線の合わせづらさといった問題が解決されたことは、多くの人に恩恵がありそうだ。
●「これはやらなそう」という項目にすべて当てはまれば検討の余地あり
 筆者個人の意見にはなるが、iPhone Airを買うべき人は、手に持ったときの薄さに大きな価値を感じ、かつ、いくつかの「できない」を許容できる人になるのではないだろうか。撮影に関する項目がほとんどであることは、これまで紹介してきた通りだ。
 ここまで触れてこなかったが、バッテリーについては、公称で最大27時間のビデオ再生が可能で、これはiPhone 16 Proと同等だ。薄い分、バッテリー持ちがよくないのではという不安はそこまでない。もっともiPhone 17は最大30時間、iPhone 17 Proは最大33時間なので、できるだけバッテリー持ちが長い方がよいという考えなら、比較検討する必要はある。
 あとは価格だ。iPhone Airは最も安い256GBモデルでも15万9800円で、決して気軽に購入できる価格ではない。iPhone 17 Pro(256GBモデル)の17万9800円よりは2万円安いが、iPhone 17(256GBモデル)の12万9800円よりは3万円も高い。

 そういう意味でいえば、iPhone 17とiPhone Airのどちらを購入しようか悩んでいる人にとっては、薄型デザインに対する追加コストとして、この差額を納得できるかどうか。iPhone 17 Proと比較検討している人なら、8倍ズームなどの機能よりも薄さがもたらす快適性を優先するかどうか。いずれにしても、なかなか難しい選択といえそうだ。(OFFICE BIKKURA・小倉 笑助)
■Profile
小倉笑助
家電・IT専門メディアで10年以上の編集・記者経験を経て、現在はフリーライターとして家電レビューや経営者へのインタビューなどをメインに活動している。最近は金融やサブカルにも執筆領域を拡大中
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