「フェリーで仕事ができるのか」を確かめるため、阪九フェリーの「ひびき」で大阪(泉大津)から北九州(新門司)まで乗船してみました。瀬戸内海を通る航路は揺れが少なく、船内に風呂やレストランもあり、一泊分のホテル代込みと考えればコストパフォーマンスは抜群です。
肝心のWi-Fi環境は実際どうなのか、船内で使える3種類の通信手段を実測しました。

●なぜフェリー旅なのか──移動とホテルが一体になる魅力
 大阪から北九州への移動手段として、飛行機や新幹線ではなくフェリーを選んだ理由は三つあります。まず、移動時間が宿泊時間を兼ねることです。阪九フェリーのひびきは夜に出港して翌朝6時に到着するため、眠っている間に目的地に着き、ホテル代が実質不要になります。デラックス洋室でも1万円前後から予約でき、移動費とホテル代を合算すれば他の交通手段より安く済む場合があります。
 次に、瀬戸内海航路ならではの快適さです。外洋を通る長距離フェリーと違い、瀬戸内海は波が穏やかで船の揺れがほとんどありません。船酔いの心配が少なく、船内を歩き回ったり作業をしたりするのに支障がありません。
 最後は船内設備の充実です。大浴場で海を眺めながら入浴でき、レストランやラウンジもあり、移動でありながら小旅行のような楽しさがあります。夜景や早朝の瀬戸内海の島々を眺める時間は、忙しい日常から離れてリフレッシュできる貴重な体験です。
●船内で仕事はできるのか──3種類の通信手段を実測
 今回の乗船で最も気になったのは「船内で実際に仕事ができるのか」という点です。
デラックス洋室に乗船し、3種類の通信手段を実測しました。まず携帯のテザリングは電波状況にもよりますが、遅いときには0.1~1Mbps程度しか速度が出ず、瀬戸内海を通る陸地に近い航路にもかかわらず電波が弱く、メールの送受信すら時間がかかります。メッセージアプリの確認程度なら何とかなりますが、継続的な作業には向きません。
 船内の標準Wi-Fiは約10Mbps程度の速度が出ることがあり、接続後2時間利用できます。テキスト中心のメールやLINE、軽いブラウジングには使えますが、インターネット通信が断続的に切れるため、動画視聴やWeb会議は厳しいです。公式サイトでも「メールやLINEのテキスト文章向き、画像添付や動画視聴には適さない」と明記されており、期待値を上げすぎないことが大切です。それでも、オフラインで作業した内容を短時間で同期する用途なら十分実用的です。
 驚いたのはStarlinkの存在です。低軌道衛星を使った高速通信サービスで、今回は、約165Mbpsの実測値となりました。陸上の光回線並みの快適さです。動画視聴も大容量ファイルの送受信もストレスなく行うことができます。
 ただし今回利用したフェリーでは利用に制限があり、1航海で2回まで、各回30分(23時59分までに1回、翌日0時以降に1回)という時間制限があります。
一度の接続で時間をカウントするため、細切れに使うことはできません。それでも、ここぞという時に使える高速回線があるのは心強く、動画でニュースを確認したり、大きなファイルのやり取りを計画的に行ったりするのであれば十分実用的です。
●失敗しないためのチェックリスト──乗船前の準備
 フェリーで快適に仕事をするための準備を5点にまとめます。
 1点目は、必要なファイルを事前にダウンロードしておくこと。クラウドストレージに常時アクセスできる前提で乗船すると、不便を感じます。必要なファイルはあらかじめローカルに保存しておきましょう。
 2点目は、Starlinkが使えるフェリーを予約すること。Starlinkが使えないフェリーだと、ネット環境が不十分すぎて仕事になりません。もちろん、ネットを使わずにできる作業であれば可能です。船旅の間はそういった作業に集中するという選択もあります。
 3点目は、Starlinkの時間制限をどう使うか事前に決めておくこと。夜に動画ニュースを確認して情報収集し、早朝の着岸前に大容量ファイルを送信するなど、通信の使い方をある程度決めておけば、限られた時間を有効活用できます。

 4点目は、ノートPCやスマホのバッテリーと予備電源の用意です。客室にはコンセントがありますが、作業場所を変える場合に備えてモバイルバッテリーがあると安心です。
 5点目は、緊急の会議や納品タイミングを陸上で済ませておくこと。船内通信は安定性に限界があるため、どうしても外せない予定は避けるのが無難です。
●フェリー旅×ワーケーションは「あり」
 結論として、フェリーでのワーケーションは「あり」です。今回、Starlinkの時間制限があったため、常時接続を前提とした働き方には向きませんでしたが、オフライン作業と計画的な同期を組み合わせることで、ある程度の仕事はこなせました。何より、船旅は快適で、移動時間が宿泊とリフレッシュを兼ねるため、コストパフォーマンスも優れています。一度フェリー旅を試してみてはいかがでしょうか。(マイカ・秋葉けんた)
■Profile
秋葉けんた
編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。
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