【完全ワイヤレスイヤホン最前線・6】通勤や家事の合間に「周囲の音を気にせず音楽を楽しみたい」――そんな人に人気なのが、ソニーの完全ワイヤレスイヤホンです。今回は上位機の「WF-1000XM5」と、手ごろな価格の「WF-C710N」の2機種を使い比べました。
価格は約2倍の差がありますが、どちらもカナル型でノイズキャンセリング(ANC)と外音取り込み機能を搭載。実際の使い心地を通して、“静けさ”と“コスパ”の違いを確かめてみました。

●静寂を極める上位機と、気軽に試せるエントリーモデル
 WF-1000XM5は、ソニーのフラッグシップモデル。独自の「高性能ノイズキャンセリングプロセッサーQN2e」を搭載し、周囲の騒音を効果的に低減します。Speak-to-Chat機能やマルチポイント接続など、利便性を高める機能も豊富。発売は2023年9月、現在もロングセラーとして人気を維持しています。
 一方、25年4月発売のWF-C710Nは、同社のノイズキャンセリング技術を継承した新しいエントリーモデルです。価格はおよそ1万4000円台と、上位機の約半額。ANCや外音取り込み、イコライザー調整など、必要な機能をしっかり押さえつつ、カジュアルに使えるのが魅力です。
 カラー展開は、WF-1000XM5がブラック・プラチナシルバー・スモーキーピンクの3色。WF-C710Nはブラック・ホワイト・グラスブルー・ピンクの4色で、よりカジュアルな印象です。
●ソニーの二枚看板が支えるノイキャン人気
 完全ワイヤレスイヤホン市場では、ノイズキャンセリング搭載モデルの需要が高止まりしています。
その中でソニーのWFシリーズは、技術力とブランドの信頼感で安定した人気を誇ります。
 家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、WF-1000XM5は発売から2年経っても上位にランクインし続けるロングセラー。WF-C710Nは「ソニー品質を手ごろに体験できるモデル」として注目を集めています。
●実際に使ってみた印象。開けた瞬間からソニーらしさ
 箱を開けた瞬間、まず感じるのは作りのていねいさです。マットな質感のケースや、イヤホン本体の滑らかな仕上げ。細部にまでこだわりが感じられ、価格以上の満足感があります。
 耳に装着してみると、フィット感の良さにも驚きます。付属のイヤーピースが複数サイズあり、自分の耳に合うものを選ぶと密閉性が高まり、ノイズキャンセリング効果が最大限に発揮されます。圧迫感も少なく、長時間つけても疲れにくい仕上がりです。
●地下鉄でも音量を上げずに聴ける静けさ
 実際に地下鉄で使ってみると、ノイズキャンセリングの実力差がよく分かります。ガタンゴトンという走行音やアナウンス、話し声が明らかに小さくなり、音量を上げなくても音楽がしっかり聴こえます。
これまで音量を上げて聴いていた人は、耳への負担が減ったことに気づくはずです。
 WF-1000XM5は、低音域のノイズカットが非常に強力。走行音やアナウンスがぐっと遠のき、静寂に包まれるような感覚です。音量を下げてもクリアに聴けるため、耳への負担も軽減されます。
 一方、WF-C710Nも価格を考えれば十分すぎる性能。電車やカフェなど日常的な騒音下でも、音楽がしっかり聴こえます。ANCを初めて試す人なら、「これで十分」と感じるレベルです。
 どちらも外音取り込み機能をワンタッチで切り替え可能。駅のアナウンスやレジでの会話を逃さず、状況に合わせて使い分けられます。
●「音楽をいい音で楽しむ」設計
 2機種ともカナル型で密閉性が高く、音楽への没入感があります。通勤電車の中でお気に入りのプレイリストを流すだけで、まるで自分だけの空間にいるよう。
 スマホとの組み合わせなら、Sound Connectアプリでイコライザーを細かく調整できます。
ボーカルを際立たせたり、低音を強調したりと、シーンに合わせた使い分けが可能です。難しい設定は不要で、プリセットを選ぶだけで好みの音を作れる点もソニーらしい配慮です。
●WF-1000XM5の魅力:高機能を詰め込んだ静寂モデル
 WF-1000XM5を使って感じたのは、「音に包まれるような静けさ」。Speak-to-Chat機能では、自分が話し始めると音楽が自動停止し、会話が終わると再開。いちいちイヤホンをタップする手間がなく、自然な会話の流れを保てます。会話が終わってから設定した時間(15秒、30秒、60秒から選択可能)が経過すると、自動的に音楽が再開されます。
 ケースもコンパクトで携帯性が高く、ジャケットのポケットにもすっと入ります。価格はやや高めですが、「静けさを買う」という言葉がぴったりの完成度です。WF-C710Nのケースも決して大きくありませんが、比べるとWF-1000XM5の携帯性の高さが際立ちます。
 ノイズキャンセリングの「静けさ」も、上位機種ならではのレベルです。カフェで隣の席の話し声やエアコンの音が重なる環境でも、スッと静かになります。音楽に集中したいとき、作業に没入したいときは、この違いが大きく感じられます。

●WF-C710Nの魅力:必要十分な機能を手ごろに
 WF-C710Nは、「必要な機能が揃っている安心感」があります。「ノイキャンを試してみたい」「コスパ重視で選びたい」人にちょうどいいモデルです。ノイズキャンセリング、外音取り込み、イコライザー調整と、日常で使う機能がそろっています。約1万4000円という価格を考えると、満足度はかなり高め。高機能すぎない「使いやすさ」が魅力です。
 買い物や掃除をしながら音楽を流しても、耳への負担が少なく快適です。Sound Connectアプリでイコライザー調整ができるので、音質のカスタマイズ性も十分。つけていても気にならない装着感で、毎日使う道具として扱いやすくなっています。
 「高機能はいらないけど、ソニーブランドで音質と安心感が欲しい」なら、C710Nで必要な要素はそろいます。浮いた予算を他のものに回せるのも魅力です。ただし、Speak-to-Chatやケースのコンパクトさといった便利機能はありません。会議で自動停止がほしい人や、携帯性を最優先する人には物足りなく感じる場面があるかもしれません。

●注意点と使い分けのコツ
 どちらも密閉型のカナル構造のため、周囲の音を完全には聞き取れません。自転車や車の運転中の使用は避けたほうが安全です。また、外音取り込みはマイク経由のため、自然な聞こえ方を求めるならオープンイヤー型の方が向いています。
 PCとの接続では、スマホ用アプリの機能が一部使えない点にも注意。スマホではSound Connectアプリでイコライザーなどの便利機能が使えますが、PCとはBluetooth設定から手動でペアリングする必要があり、アプリ機能は使えません。PC作業がメインで細かい音質調整を使いたい場合は、この制約が不便に感じるかもしれません。主に音楽鑑賞やスマホ通話中心での使用に向いています。
●予算と使う時間で選ぶ二つの“静けさ”
 WF-1000XM5とWF-C710Nは、どちらも静かな環境で心地よく音楽を楽しむという目的に応えてくれるイヤホンです。通勤時間や作業中に集中したいならWF-1000XM5。日常使いで気軽にノイキャンを楽しみたいならWF-C710N。
 どちらを選んでも、ソニーらしい音のクオリティと使い勝手の良さは共通です。静けさの質を求めるか、手軽さの満足を選ぶか。
自分のライフスタイルに合わせて、ぴったりの一台を見つけてください。(マイカ・秋葉けんた)
■Profile
秋葉けんた
編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。
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