TVS REGZAがBD・HDDレコーダー(レコーダー)市場から撤退した。昨年いっぱいで全てのモデルの生産を終了。
現在残っている流通在庫がなくなれば、REGZAのレコーダーは市場から消える。撤退の理由について同社では「主要部品の調達状況やレコーダー市場の状況などを総合的に勘案し決定した」としている。実際「レコーダー市場の状況」は、TVS REGZAはもとより、市場全体でも極めて厳しい。オンラインショップや全国2400の家電量販店などの実売データを集計する、BCNランキングで分析すると明らかだ。
 TVS REGZAの販売台数シェアはこの12月、主要4社で最下位の2.0%だった。2024年までは、15%前後のシェアは確保し、3位ソニーと競っていた。しかし、24年一杯で一部製品の生産を終了。以降1桁シェアが続いていた。レコーダー市場からの完全撤退は、一昨年からの既定路線だったのだろう。現在のトップシェアは54.7%のパナソニック。シャープが36.1%で続いている。シャープのレコーダーはパナソニックからOEM供給を受けていると言われており、実質パナソニック系のレコーダーが、市場のほとんどを占めている状況だ。

 22年12月のレコーダー販売台数を100とする指数では、この12月は全体で50.5。3年の間に販売台数が半減した。メーカー別で最も販売台数が縮小したのがTVS REGZAで6.3。なんと15分の1の規模に縮小した。トップシェアのパナソニックと続くシャープは踏ん張っている。しかしいずれも指数は70以下。3割以上もの台数減にあえいでいる。厳しい状況は直近2年間の販売前年比でみても明らか。全ての月で前年比マイナス。この12月でも台数では74.9%。金額でも82.0%と大幅なマイナスだった。ほぼ毎月この水準が継続している。
一方で平均単価(税抜き、以下同)は上昇。2024年1月の5万3500円を底に、この12月では6万2700円まで上昇した。消費者がますますレコーダーから遠ざかる結果に陥っている。TVS REGZAの撤退はこうした市場の背景があった。
 なぜレコーダーが絶不調なのか。最大の要因はテレビ本体への録画機能搭載だ。現在販売されているテレビのほぼすべてで、HDDをつなげば番組録画が可能。番組を一旦録画して後で視聴する、いわゆる時間差視聴が目的なら、テレビとHDDで十分だ。別途レコーダーを買う必要はない。その時間差視聴のニーズさえ、TVerなどのオンラインサービスが代替しつつある。また、BDやDVDに番組を収め、ライブラリー化するという人も大幅に減少。レコーダーを販売しているパナソニックやソニー自ら、BDメディアの生産から撤退したほどだ。
そのうえで、テレビ番組自体の魅力が薄れ、視聴者は放送番組に対する意識が「わざわざ録画して観るまでもない」と変わってきた。動画視聴の傾向も、放送波の番組中心から、好きな時間に楽しめるネット動画にシフトしつつある。
 つまり、テレビの録画機能普及、TVerなどでの放送波視聴普及、番組ライブラリー化ニーズの衰退、テレビ番組の低質化、テレビ番組以外のオンライン動画の台頭と、レコーダー市場は5重苦にあえいでいるわけだ。一方「好きな時に観たいものを観たい」というニーズ自体がなくなったわけではない。テレビ本体での録画機能については、TVS REGZAでも「今後も強化していく。6~7チャンネルの番組を一定期間丸ごと収録できる『タイムシフトマシン』搭載モデルの充実はもちろん、通常録画の機能に関しても好きな番組を自動でオススメする『みるコレ』や生成AIを使った対話機能を強化し、より簡単に便利に番組録画できる環境を整えていく」としている。
 我々の動画視聴環境はまだまだ貧弱だ。TVS REGZAの「タイムシフトマシン」は、一定期間までさかのぼっていつでも好きな番組が視聴できる、という点で、放送コンテンツの楽しみ方を根本から変えた。しかし現代の動画視聴において、対象が放送番組だけではまったく不十分だ。ネット空間にも存在する、ありとあらゆる動画の中から、今観たいものを瞬時に選択できる機能こそ、必要な機能ではないだろうか。そんな機能が搭載されたレコーダーが登場すれば、市場もまた大きく変わるだろう。(BCN・道越一郎)
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