ソニーのテレビ事業はかつて、04年度から10期連続で赤字を計上する暗黒期に苦しんでいた。しかし14年、当時の平井一夫社長が台数を追わず利益を追求する方針に転換、V字回復を果たした。
テレビ事業の売却で記憶に新しいのは東芝だ。18年、中国・ハイセンスに事業譲渡した。両社の強みを生かし相乗効果を発揮すべく、事業形態を整理。21年に社名をTVS REGZAと改めるや、破竹の勢いでシェアを拡大。22年にテレビ市場でシェア1位に駆け上がった。以降トップに君臨し続けている。親会社のハイセンスも、REGZA効果でじわじわとシェアを拡大。24年には初めて15%を突破し、昨年は16.6%と3位まで浮上してきた。伸び悩んでいるのがシャープだ。かつては「液晶のシャープ」として圧倒的なトップシェアを誇っていた。しかしパネル工場の巨額投資のツケに苦しみ、16年に台湾・鴻海に買収された。以降、戴正呉新社長の元、徹底的なコスト削減で経営再建は果たしたが、テレビのシェアは下落の一途。
TVS REGZAは、本体東芝の苦しい台所事情によって切り離されたが、その後絶好調だ。石橋泰博 取締役副社長は「東芝時代に比べ、身軽になりフットワークも軽くなって、調達力も格段に向上した」と成功の要因を語る。一方シャープは経営破綻寸前の状態まで追い込まれ、身売りを余儀なくされた。経営状態は持ち直したものの、テレビ事業はじりじりと後退。事情はそれぞれ異なるが、外資化した2社のテレビ事業。テレビ市場での存在感という点でも対照的な道を歩んでいる。果たしてソニーのテレビはどちらのパターンになるのか。2014年、ソニーがVAIOを売却した際には、持ち株比率は5%に過ぎなかった。しかし今回は、過半に満たないものの49%と高い。TCLとともに事業を積極的に推進していく、という意思の表れだ。
シャープやTVS REGZAと全く異なるのは、合弁相手がTCL、という点だ。同社はパネルメーカー、TCL CSOTを傘下に擁する。中国・BOEと並び世界で1、2を争う一大パネルメーカーだ。工場敷地内にAGCのガラス工場までも有する、一貫生産プラントが特徴。現在もソニーに液晶パネルを供給している。昨年、TCL CSOTを取材した際、同社の深セン工場 技術企画センターの周明忠 センター長は「ソニーの高速表示液晶パネル搭載テレビでは、およそ4割がTCL CSOT製で占める」と話し、ソニーとの関係の深さを明かしていた。今回の合弁では、ソニーへのパネル供給体制はさらに強固になる。ソニーにとっては、テレビの品質や価格で有利な戦いを展開できる手札が整ってきた。インフレ下でも値上げ率を小さく抑えつつ高品質を保つ、という動きが取れれば、シェアもある程度回復できるだろう。さらに、コスパが高くソニーの技術を取り入れたTCLのテレビという2段構え。この2社でTVS REGZAを追う存在になる可能性は高い。
TCLにとってもソニーとの合弁の意味は大きい。テレビの世界シェアでトップのサムスンに続く2位。ポテンシャルは大いにあるが、さらなる飛躍には、もっと別の手が必要だった。TCLのIndustrial Holdings Asia-Pacific Business Group マーケティング本部 張国栄 総経理は「日本のテレビ市場でもTOP3には入りたい。そのためには、20%以上のシェアが必要だ」と話す。シェアをさらに拡大するには、日本のテレビメーカーを買収するのが早道なのでは、というBCNの質問に答え「交渉は進めている」と、相手先はぼかしながらも認めていた。今回の合弁で、TCLのテレビにソニーの技術とブランド力が加われば、世界トップシェアも十分射程圏内に入るだろう。
東芝、シャープと来て、今回のソニー。日本のテレビ事業で国内資本だけで成り立っているのはパナソニックだけになってしまった。そのパナソニックですら、パネルは海外からの調達。テレビ事業の構造は大きく変化した。一方で販売は踏ん張っている。
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