【どうなる?モバイルバッテリーのこれから・2】モバイルバッテリー絡みの事故が、話題に上ることが多くなった。政府も対策を進めているところで、今後は、事業者側に製品の回収義務が課されることになる。
そこで、メーカー側は安全性に対してどのように考え、対処していくのか。本連載では、各社製品の特徴を踏まえながら、関係者に取材していく。今回取材したのは、気鋭のガジェットメーカーとして頭角を現しているCIOだ(BCN・寺澤 克)。
●ガジェットの輸入販売が始まり ユーザーのニーズを満たすもの作りたい 起業1年目から製品開発を開始
 話を聞いたのは、代表取締役を務める中橋翔大さん。
 大阪府守口市に本社を構えるCIO。そもそもは、ガジェットの輸入販売を手掛けたことが始まりだという。中橋さんは、会社員として働く傍ら、事業を手掛けていた時期もあったというから、そのバイタリティには驚きだ。早速、話を聞いてみよう。
──CIOとしてガジェットを開発するに至った経緯は?
中橋さん(以下敬称略) 起業して1年目ぐらいの時期でした。
 先進的なものを輸入していたので、感度の高い購入者が多かった。ただ、やはり自分たちでそうした方のニーズを満たす製品を造りたいという思いが芽生え始め、まずはクラウドファンディングで資金調達し、自社製品の開発に至りました。
──開発について…。

中橋 輸入販売をする中で、中国深センの華強北(フアチャンベイ)に通い詰めていたので、そこの問屋さんから辿って、企画書を片手に工場を回りました。当時は、工場に任せていたんですが、現在では、企画からアイデア出し、部品の選定、設計/開発、品質評価と管理まで、我々が手掛けるまでになっています。
 そして結局、コストや品質を突き詰めていくと、部品一つ一つまで吟味していくことになりました。そうした地道な取り組みが現在のCIOを形作ったとも言えますね。
●刺さる人には刺さる 配信などでのユーザーとの対話から生まれる製品たち
──CIOのモバイルバッテリー製品の特徴は?
中橋 圧倒的に軽い、薄い、使い勝手が良い。この三つにフォーカスしているところです。ただ、この業界、それだけでは差別化が難しい。
 そうした中で、我々が重要視しているのは新しい製品が出た時の気持ちの高ぶり、つまり「わくわく感」なんですよ。
──わくわく感。
中橋 はい。それを満たすため、具体的な使用シーンに着目します。旅行に行くから、だから軽くて携帯しやすいものが欲しい…とそんな感じです。
そして、こういったプロダクトの源泉ともなる想定シーンは、配信活動などでユーザーと直接会話するところから生まれます。
──直接対話する。なかなか、まねできないところでしょうね。
中橋 はい。「こういったものを作ろうと思っている」と問いかけていろいろと対話が始まるのですが、それで詳しい仕様が導き出されていくんです。そうすると、具体的な使用シーンがしっかり想定できる製品になっていく。だから、当社の製品は、合う人にはすごく合う。逆に言うと万人受けするような製品はあまりないと思います。
●管理体制整うサプライヤーを選定 トレサビ確保や製品テストも徹底
──それでは安全性に関する取り組みを教えてください。
中橋 はい。まず、我々はサプライヤー選定を100%管理しています。
 モバイルバッテリーの事故原因でユーザー起因ではないもの。
その多くは、異物の混入です。精密機械向けにバッテリーセルを作っており、自動化され、管理が行き届いているなら、異物の混入する確率は非常に低くなります。当社では、そうした高い品質の工場を選定しています。
 また、工場側で製品の受け入れテスト、また我々のほうでもテストを実施する二重の体制を敷いています。
 テストの中には、検査機で複数回充電を繰り返して動作をチェックするエイジングテスト、さらに出荷する製品から一部を抜き取って1年間ほどテストする長期間のテストなども行っています。
 それと、トレーサビリティーの確保です。製品とその部品には二次元コードを付けており、誰がどの工程で作業したのかまで、さかのぼれるようにしています。これにより、万が一事故が起きた際にも、素早い原因究明を可能とするのです。
●無償でのバッテリー回収は2023年から取り組むなど積極的
──不要になったバッテリーの回収についてはどうでしょうか?4月から法改正により義務付けられることになりますが。
中橋 その点については、2023年10月から回収自体は行っています。小型充電式電池のリサイクルを推進する団体JBRCにも加入しているほか、CIO製品は無償で回収しています。その一か月後には、他社製品も対象に加えました。
古いものを送っていただければ、当社製品を割引で購入できるサービスも開始しています。
 むしろ古いバッテリー製品が減らせるのであれば、身近に潜む危険性もグッと下がるので、業界・社会的にも良いことだらけではないかと考え、積極的に取り組んでいるところです。
──そのほか、啓発活動などは。
中橋 安全な使い方など、YouTubeやSNS、ホームページでの告知を行っています。また、製品に問題があれば、当社で判断し「自主回収」といった方法を取らせていただく場合もあり、ユーザーの安全確保という点でも、徹底しているところです。
 ただ、正しい使い方を全力で周知していたとしても、結局は個人の意識の問題なので、そこまで踏み込むのには限界があります。
──確かに。何回か落としてしまったから使うのやめようとは、ふつうなりませんよね。
●コストがかかっても安全性追求 半固体への切り替え アプリ連携で劣化状況の可視化なども
中橋 だから、我々は全力で啓発をしながら「ハードウェア」で対処できるところはやっていこうと。そんな考えを持っています。
──ハードウェアですか?
中橋 はい。我々のモバイルバッテリー製品は、もしかしたら温度の高い車内に放置される可能性もある。
そうした好ましくない使用状況も担保しながら製品づくりを行っていくということです。
 もちろんコストの観点から言うと高くなってしまうかもしれない。でも、事故によりその人の生活や日常を壊してしまう、そんなことになったら取り返しがつきません。
 具体的には、6月にかけて、対応可能な製品のラインアップを半固体電池に順次切り替えていきます。
──半固体は安全性が高いとされていますね。
中橋 はい、そうなんです。例えば中国の強制製品認証制度(3C認証)では、バッテリーセルへの釘刺し試験が新たに追加される可能性があると、話題になっているところです。その点、半固体であれば、釘刺しにしても発火しにくく、新基準に適合できるようになります。さらに安全な製品を提供できるようになるんです。
 また、新たに充電回数が規定数に到達すると出力を停止できるシステムを実装しようと考えています。
──危ないなら予め止まるようにしようと?
中橋 その通りです。具体的にはアプリケーションと連携して、規定回数に近づくと通知が飛び、到達後に停止するようプログラムするつもりです。
また、バッテリーの劣化状態もアプリで可視化できるようにします。
──今後の目標は。
中橋 まずは一人一人の身の回りのものが、CIOであふれる世界を実現したいです。
 そして、その製品の先の話です。使ってもらって、CIOとつながりを持ってもらうことでわくわくしてもらう。小さくなった、軽くなった、便利になった、そうしたものを使うことでQOLが上がりわくわくする。理由は人それぞれかもしれませんが、CIO製品で世界中にわくわくを届けたいと思っています。
──ありがとうございました!
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