(本紙主幹・奥田芳恵)
●オフコン全盛の時代に感じた パソコン時代の到来を見越し独立
奥田 新卒で就職した会社を4年で「卒業」とはまた短いですね。
田中 いつかは社長になりたいと思っていました。最初の会社はIT系の小さなところだったので、自分でも経営を担う立場になれるのでは、と思ったこともありました(笑)。ただ同族経営の会社だったので、諦めて卒業しました。しばらくはフリーのエンジニアとして仕事をしていましたが、その後、先輩から声がかかって、25歳の時に一緒に会社を立ち上げました。
奥田 フリーで活躍されていたのに、また組織としてやっていこうとされたのは?
田中 やっぱり1人では限界があります。会社をつくって成長させて、もっと上を目指したかったんです。
奥田 まだオフコン全盛の頃ですよね?
田中 立ち上げた会社もオフコンのシステムをつくる会社でした。ちょうどバブルの頃です。事業はどんどん伸びていきました。パソコンも普及し始めていて、めちゃくちゃおもしろそうやなぁと見ていました。それが、徐々にビジネスにも使われるようになって「これからはパソコンの時代だ」と思ったんです。社長だった先輩にもそう言ったんですが「やっぱりオフコンだ」と。それで、独立して自分で会社をつくることにしました。28歳の時でした。
奥田 BCN創業の理由にそっくりです。これからはオフコンじゃなくてパソコンだと、前社長が新聞社を飛び出して立ち上げました。
田中 ほどなくパソコンの時代がやってきました。1993年にインターネットの商用化が始まると、一気にパソコン時代の幕開けです。
奥田 今のAIの進化を見ると隔世の感がありますね。これから、どうやってAIを生かしていこうとお考えですか。
田中 ソフトウェアテスト(第三者検証)というのは労働集約型で、人に頼るビジネスなんです。何年も前から、そこから脱却したいと思ってきました。今のAIは大いに助けになります。品質管理やテスト業務などの見える化を進め、自動化のツールをつくっているところです。そこにAIの要素を入れていっています。徐々にかたちになって、あと1年ほどで集大成が出来上がります。
●グロース市場への指定替えとG1競走馬の育成が目標
奥田 AI化が進むと求める社員像も変わってきますね。
田中 今まさに変えようとしているところです。ツールを使いこなして、品質向上のお手伝いができるコンサル的な仕事への転換です。そのために、ツールのエバンジェリスト資格制度をつくりました。合格すると、少しですが手当が出ます。
奥田 採用にも影響してきますか。
田中 人がいらなくなるわけではありません。ただ、人に依存しないビジネスモデルに変化させることで、人を増やすペースは今までより落としていきます。新卒では、時代に対応してチャレンジできる人、指示待ちではなく自分から積極的に動ける人を採用したいですね。
奥田 サブスクビジネスが軌道に乗れば、大きな柱になりますね。
田中 人月いくらの会社に別の収益源が加わりますから、その分、社員に分配できます。平均年収も上がって、より豊かな暮らしができるようにもなるでしょう。
奥田 会社やご自身のこれからの目標は?
田中 最初に勤めた会社の定年は55歳だったんです。なので、55歳がずっと定年だと思っていました。2026年3月で64歳になります。普通なら引退を考える年齢ですよね。定年がずるずる伸びている感じです。とはいえ、誰かにバトンを渡さなければいけない。今はそれを見極めようとしているところです。
奥田 IT業界でも、お年を召したすごい方々が頑張っていらっしゃいます。
田中 煙たがられて迷惑をかけるよりも、あっさり引退したほうが、ね。ただ、フォーブスには載りたかったんです。
奥田 やることはたくさんありそうですね。
田中 今上場しているのが東証のグロース市場で、会社の目標ということなら、まずこれをプライム市場に昇格させたいですね。円安なので厳しいですが、実現すれば、フォーブスも夢ではないかもしれません。
奥田 プライベートではいかがですか。
田中 馬事業をやろうと思っています。
奥田 馬を育てる?
田中 競走馬です。今馬主なんですが、法人としての馬主登録を申請しています。ゆくゆくは有馬記念を獲るのが夢です。かなりお金はかかりますがG1馬を所有するというのが、事業をやるにあたっては必要です。可能性はあると思っています。宝くじは買わないと当たらない。
奥田 とにかく大事なのはチャレンジすること、ですね。
●こぼれ話
「これからはパソコンだ」と思う田中真史さんに、「やっぱりオフコンだ」と立ちはだかる先輩。それでも自分を信じて独立した。意志の強さと行動力、そして当時28歳という年齢にも驚く。田中さんの先見性もさることながら、それほどまでにパソコンは大きな可能性を感じさせるものであったのだと、当時をイメージすることができる。秘めた可能性にワクワク感を覚えた人も多かったのだろう。
ちなみにオフコンを選んだ先輩は、少しビジネスを変化させながらも継続して事業されているとのこと。つまり、どちらを選ぶかというよりも、選んだ先でどう成功させていくかという強い意志が、田中さんにも先輩にもしっかりあったということではないだろうか。
独立時のエピソードのほか、組み込み系のテスト事業からWeb系のテスト事業への転換、上場、AIを活用したビジネスモデルへのシフトなどからも分かるように、決めたことを実現させていく実行力とチャレンジ精神には凄まじさを感じる。
そして、次は競走馬の事業。競馬に明るくない私でも、有馬記念を獲るということがとても大きな挑戦であることは想像できる。「少しでも可能性があるならチャレンジしたい」と、とても明るくおっしゃるので「本当に実現するのでは」と思えてくる。できた時の喜びや希望のほうに目を向けて、一緒に進んでみたくなるパワーがある。「あー、こんな感じで巻き込んできたのかな」と、田中さんが発するパワーが社員に伝播していく様子を感じ取ることができる。
ソフトウェアテスト企業であるバルテス・ホールディングスは、AIの進化により、その役割が大きく変化している。これをチャンスと捉え、人に依存し過ぎないビジネスモデルの転換を進め、求められる人材像もしっかりと変化させてきている。最終的には、働いてくれる社員の豊かさの追求だ。
「どんな社長ですか」と社員の方に聞いてみると、「本当に話しやすいです」と明るく即答いただけた。良い関係性が分かる表情であった。田中さんの温かく熱い思いはしっかりと届いているようだ。(奥田芳恵)
心に響く人生の匠たち
「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)
<1000分の第389回(下)>
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。











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