ドイツのAI・データセンター企業ノーザンデータ(Northern Data)が保有していたビットコイン採掘子会社「ピーク・マイニング(Peak Mining)」をステーブルコイン大手テザー(Tether)の最高経営陣が支配する企業グループに売却していたことが、後になって明らかになった。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じている。
報道によると、ノーザンデータは昨年11月、ピーク・マイニングを最大2億ドルで売却した。米国の開示資料を確認した結果、買収主体は、テザーの共同創業者兼会長ジャンカルロ・デヴァシーニ(Giancarlo Devasini)と、最高経営責任者(CEO)のパオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)が支配する複数の企業であることが判明した。
この取引は、実質的に関連当事者取引に該当するが、ノーザンデータがドイツの二次取引市場に上場していることから、関連当事者取引を個別に開示する義務はなく、取引構造の詳細は公表されていなかったとされる。特に、今回の売却が、テザーが株式を保有する動画共有プラットフォームのランブル(Rumble)が、ノーザンデータを約7億6700万ドルで買収すると発表する数日前に行われていた点も注目されている。
FTが確認した企業登記資料によれば、ピーク・マイニングの買収者は、ハイランド・グループ・マイニング(Highland Group Mining Inc.)、アパラチアン・エナジー(Appalachian Energy LLC)、およびカナダ法人の2750418アルバータULCなどで構成されている。
英領バージン諸島(BVI)の記録では、ハイランド・グループ・マイニングがデヴァシーニ氏とアルドイノ氏の支配下にあることが示されている。また、カナダの文書では、デヴァシーニ氏がアルバータULCの単独取締役として記載されている。一方、デラウェア州に登録されたアパラチアン・エナジーについては、公開資料から取締役会の構成が確認できず、所有構造は不透明な状況にある。
ノーザンデータは昨年11月、ピーク・マイニングの売却を発表していたものの、当時は買収企業の詳細を明らかにしていなかった。同社が上場するドイツ市場では一定の情報開示が求められるものの、関連当事者取引の報告義務は含まれておらず、テザー経営陣が取引の両側に関与していた事実を開示する必要はなかったとされる。
なお、今回の取引は、ノーザンデータをめぐる規制当局による調査が進行する中で行われた。昨年9月、欧州当局はドイツおよびスウェーデンにあるノーザンデータの事務所を捜索し、最大1億ユーロ超に及ぶ可能性がある大規模な付加価値税(VAT)脱税の疑いについて調査を行った。

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