2010年、当時女子高校生だった大関綾氏がネクタイメーカー、ノーブル・エイペックスを起業し、「女子高生起業家」として多くのメディアを賑わせた。斬新なアイディアと逆転の発想で、低迷するネクタイ業界に乗り込んだ大関氏が、近日中に楽天市場で商品の取り扱いを開始、また3月には、現在に至るまでの苦労や今後の展開などをまとめた本を上梓予定と、さらに活躍の場を広げようとしている。
今回、その大関氏に話を伺った。

--現在の御社の業績について教えてください。

大関綾氏(以下、大関) 最初はかなり赤字でした。やはり、ものづくりというのは開発に莫大な費用がかかります。弊社でも商品を開発するために累積で数千万円かかっています。本格的に営業活動や販売を始めたのは、2013年に入ってからなので、今までにかかった費用を取り返していく段階にあり、安定した状況ではありません。紳士服のAOKIさんをはじめ、各百貨店などにも置かせてもらえるようになり、ネットでも販売しています。

--起業するに当たって、ネクタイ業界を選んだのはなぜですか?

大関 2005年にクールビズが始まった当初、中学生だった私が感じたことがきっかけになっています。ジャケットを脱ぎ、ネクタイを外すようになり、ネクタイ業界は打撃を受け、半数近くがつぶれました。残っている企業も、大半は今も苦労しています。しかし、クールビズでネクタイを外したからこそ、そこに代わる物を着けることができるのではないか、という印象をその当時から持っていました。

「夏は暑くて、首元を開放したい、ネクタイは苦しい」。

高校時代、私もネクタイを締めていたので、そんな思いはよく理解できますが、ネクタイは現在、年間3000万本流通しています。うまくクールビズ向けのネックウェアを定着させることができれば、同規模の市場を生み出せるのではないかと考えて、この業界で起業しました。

●手軽な起業ではなく、あえて困難なものづくりを選んだ理由

--なぜ「ものづくり」を選んだのですか?

大関 中学生の頃から、起業しようと考えていたのですが、最初はITをやろうとしていました。しかし、ITの分野はかなり競争が激しいので、生き残るのは難しいと感じました。また、もともと私がものづくりが好きだったことや、失われゆく伝統技術、メイドインジャパンというブランドを守っていくのは、若い世代の使命なのではないかと考えて、ものづくりで起業することにしました。その上で、何をつくるかを検討した結果、先ほど述べたように、まずネックウェアに可能性を感じたので、商品開発に取り組みました。

--夏場は誰しも首元を開けて熱を放出したいと思うものなので、多くの人々はネックウェアを着けたくないのではないでしょうか?

大関 暑さ対策は十分に考慮しています。シャツの第一ボタンを開けて着けられるように商品を開発しました。首回り部分はゴムやチェーンにして、前に来る部分はY字に切っているので、のど元に布がこないようにしています。普通のネクタイは緩めるとだらしなくなりがちですが、そうならないように改良しました。

ちなみに、三角の部分は革でできていて、職人によるハンドメイドです。薄利多売にせず、ブランドイメージを大切にするため、品質に重きを置いて手作業でよい材質のものを使い、製作しています。

女子高生起業家、ネックウェア会社4年目の岐路~ファッションで女性の社会進出を促す?
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●ブランディングによって目指すところ

--今後、ブランドを展開していくめどは立っていますか?

大関 今はネックウェアをメインに扱っていますが、今後もずっと「ネックウェアメーカー」でいるつもりはなく、事業範囲をベルトやバッグなどの皮革関連商品にも広げ、日本に限らず世界に出て行きます。すでに香港、アメリカの現地法人からオファーがあり、試験的に販売を始めています。しかし、各国で消費者のファッション志向は異なるので、まず日本に力を入れて基盤をつくることが先決だと考えています。

 弊社は、メンズネクタイでスタートしましたが、現時点ではレディースウェアに注力しています。私は、各所で「(フランスのファッションデザイナー)ココ・シャネルに憧れている」と言っているのですが、彼女は女性のスーツに革命を起こした人物で、男性のものとされていたスーツを女性向けに開発して働く女性の地位を向上させました。彼女は、女性向けスーツや各種の小物をデザインするなど、多くの功績がありますが、やり残したこととして、ネックウェアをつくること、すなわち男性のネクタイに代わるものをつくらなかったことだと思っています。

 私は、働く女性のネックウェアを定着させたい、ネックウェアで革命を起こしたいと考えています。ひいては、ファッションで女性の社会的地位の確立を支えたいと思っています。今月から、女子就活生向けにリクルート用ネックウェアの販売も始めました。

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●今後の事業展開

--商品を展開していく市場は、百貨店が中心になっていくのでしょうか?

大関 いえ、弊社はネット販売がメインです。近日中に楽天市場でも商品の取り扱い開始する予定です。世界展開させていく上でも、店舗を多く持たずにネットを中心に販売していくつもりです。

しかし、実物を見たいお客様もいらっしゃいますし、まずは百貨店の婦人服売り場を中心に置かせていただいて、反応を見ている段階です。今後、セレクトショップや街中のショップなど、販売拠点を広げたいと考えています。

--御社の営業活動に関する方針を教えてください。

大関 実は、今までほとんど営業活動はしていません。メディアにも数年前に一度プレスリリースしただけで、対外的な活動はしていません。商品の開発に尽力し、あとは人脈形成に3年費やしてきました。唯一したことといえば、百貨店のトップの方々に手紙と商品を送り、直接お会いしてお話しした結果、商品を置いていただけるようになりました。あとはほとんど口コミです。

--御社のネックウェアに合ったシャツも開発される予定はありますか?

大関 考えています。まだ余力がないので開発していませんが、将来的にはやりたいと思います。

--今後、幅広いビジネスシーンに対応する小物などをつくっていかれるのですね。

大関 そうですね。

カジュアルではなく、ビジネス関連のものを中心に展開していきます。

--女性ビジネスパーソンのファッションが秘める可能性について聞かせてください。

大関 スーツは完成されたファッションで、おしゃれを持ち込む幅が少ないと思います。しかし、最も遊び心を加えられる場所は首回りです。既存メーカーが手を付けていない分野のネックウェア。購買力やファッションへの感度は女性のほうが高いのに、なぜか男性のネクタイに代わる女性向けネックウェアは市場に出てきていません。弊社の商品は、女性の皆様に楽しんでいただけると思っております。

--ありがとうございました。
(取材・構成=編集部)

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