主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 ここ数年はまったく観ていなかったが、最終回は懐かしの映像が出るということで、がっつり視聴したのが9月7日放送の『さんまのスーパーからくりTV』(TBS系)。
22年間も続いてたのかと、改めて記憶を辿ることになった。2000年代前半まではこの番組、ダントツで面白かったよなぁ。あれよあれよと裏番組の『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)&『シルシルミシルさんデー』(テレビ朝日系)に抜かれていき、衰退の一途を辿った……。あの面白さはいったいなんだったのか。

 まずはなんといっても「素人力」。もちろん面白くするための演出の手腕ではあるが、制作側の意図に反するハプニングはまさにTHE・素人力。コーナーでいえば、「からくりビデオレター」(遠く離れて暮らす子供に向けて、家族がメッセージを送るというもの)。体を鍛えている肉体自慢の父親が上半身裸で母の繰り出すパンチを受けるという映像だったが、突然父の弱点である乳首をつまむ母。これには父もびっくり。お母さん、お茶目すぎる。このコーナーはスタッフの予測を裏切る素人が売りだった。

 そして、「子供力」。
もちろんこれも段取りなどがあって、素直な子供はこれに従う形になったのかもしれないが、出てくる子供たちがとてつもなく可愛かったことを思い出す。

 さらには、TBSの安住紳一郎アナウンサーの「何事も諦観&斜めに見る」力を育て上げたのが、「サラリーマン早調べクイズ」というコーナー。東京・西新宿の街角で雨の日も雪の日も、酔っ払いをつかまえて、クイズに答えさせる。酔っ払いって、はたから眺めると、本当に面白い。これも素人力であり、「酒の力」「酔っ払い力」でもある。ときどき各局が特番を組む「警察24時」系でも、酔っ払いをなだめる交番のおまわり、という図式は大好物だ。ただ、今は全体的に酔っ払いが減ったのかも。日本全国に酔狂を愛でる余裕がなくなったのかな。●恐るべし、老人力

 そして、もうひとつ忘れちゃならないのが14年間続いたコーナー「ご長寿早押しクイズ」。歌舞伎役者のような顔立ちでクソ真面目に問題を読み上げる鈴木史朗元アナも名物だったが、その問題を見事にスルー(正解を出すという意味ではなく、クイズの本質を無視)する老人たちの回答が驚くほど笑えた。これはまさに「老人力」だった。

 人の話を聞かない、聞いたままの言葉を連呼する、そして勝手に暴走する。

これは演出ではなく、老人たちの素の力である。たぶん放送当時も観た記憶があり、さらに最終回でも観て、私が5分間涙を流して笑ったのが、「エジソンの言葉で、天才は99%の努力と1%の○○○○、さてなんでしょう?」という問題。解答権のボタンを押さずに、老人たちは一斉に声を上げる。「水分!」「肉汁!」「果汁!」。鈴木が呆れて、ヒントを出す。「1%のひらめ…?」。老人ひとりが「ひらめのムニエル?」、もうひとりはその音を聞いたままに「ひらめに怯える!」、さらにその響きから他の老人が「マグロにてこずる!」。これ、文字で書いても面白くないのだが、私は涙が止まらなかった。おかしくて。恐るべし、老人力。最終回を観られて、本当によかった……。ありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん。


 ここにあげたコーナーは、ほとんどが1990年代後半~2000年代前半に生まれたもの。『からくりTV』全盛期の名物で、最終回にこれらがメインを張るということは、その後低迷期に入ったという証拠でもある。そうそう、『シルシルミシルさんデー』も同じ日に最終回だったし、日曜ゴールデン帯の日テレ独走をどの局が打ち破るのか、10月からが見ものだ。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。「週刊新潮」(新潮社)の連載記事をまとめた単行本『TV大人の視聴』(講談社)が11月11日に発売予定。

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