どうも、“X”という小さな芸能プロダクションでタレントのマネージャーをしている芸能吉之助と申します。
芸能人にスキャンダルはつきものですよね。
7月3日に麻薬取締法違反で懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決が言い渡されたピエール瀧さん、5月22日に大麻取締法違反の疑いで逮捕され、保釈の際の“土下座謝罪”が物議を醸した元KAT-TUNの田口淳之介くん、そしてミュージシャンではありますがつい最近の7月19日にも、Dragon Ash、RIZEのベーシストのKenKenこと金子賢輔さん、同じくRIZEでボーカルとギターを担当するJESSEさんが、大麻取締法違反の容疑で現行犯逮捕されましたよね。
不祥事の際のCD販売停止は“致し方ない”芸能人の薬物使用の逮捕は、社会的影響が大きいゆえに、慎重に捜査され、かつ“見せしめ”という意味も大きいといいます。ピエールさんの場合も、音楽活動はもちろん、ドラマ、映画、バラエティと多岐にわたって大活躍中だっただけに、ほんと、シャレにならないレベルでさまざまな現場に影響が生じ、芸能界に激震が走りました。
大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)でピエールさんが演じていた役は、三宅弘城さんが代役に起用されて撮り直していましたけど、すでに放送が終えられていた部分も、DVD化のために全部イチから撮り直していると思いますよ。これは本当に、現場スタッフや役者さんからすれば実にやるせない作業で、信じられない大変さだと思います。役者さんたちもスタッフさんたちも、本当にお疲れさまとしかいいようがないですね……。
一方で彼の音楽活動については、電気グルーヴのCD販売停止、楽曲配信停止などを受け、その撤回を求める署名運動などが行われていますが、やっぱり、レコード会社としてはコンプライアンス的にそうせざるを得ないという判断なんだと思います。「音楽や作品に罪はない」「作品を買うか買わないかはこちらが決めることであって、それをそもそも売らないっていうのはどうだろう」なんて考える人も多いとは思うのですが、結局、「作品が売れること」=「その収入が犯罪を犯した人に渡ること」=「犯罪者が作ったもので企業がお金儲けをしている」ってことになってしまう。そうなると、特に上場企業の場合、そういう判断をするのも致し方ないのかな、とは思いますね。
若いタレントに“講習会”を実施する芸能プロ薬物問題って、芸能プロダクション側としても本当に難しい問題なんです。
もし自分の会社の所属タレントが薬物使用していることがわかったら……? うーん、事務所によってやり方は違うかもしれないけど、やっぱり、クビというか、契約解除という方法を取るんじゃないかな。この業界で働いていると、「あれ? いつの間にかあの子事務所辞めてるな……。なんで辞めたんだ?」みたいなことってよくあるんですけど、そういう子って、結構アヤシイんですよね。
あるプロダクションにいた子がいつの間にかそこを辞めていて、別の事務所に入りたいって話になった場合には、元の事務所に「あの子大丈夫? うちに来たいって言ってるんだけど、(薬物使用の)身体検査とかしたの?」って、確認を入れると思います。それは、当然のトラブル予防策でしょう。
芸能事務所ももちろんそのあたりはよく考えていて、吉本興業は所属芸人に対して定期的に薬物に関する講習会を開いているそうですし、爆笑問題が所属している「タイタン」の太田光代社長は以前Twitterで、タレントや社員に対して違法薬物の抜き打ち検査を実施していることを明かしていました。
菜々緒ちゃん、筧美和子ちゃんらが所属しているプラチナムプロダクションのように、若い子が多い事務所は、炎上しないようにSNSの使い方なんかも入所時にレクチャーしていると聞きますし、最近はそういうタレント教育に力を入れている事務所も多いですね。
起訴されるか不起訴になるか、マネージャーが奔走?さて、こんなこと想像するのもしんどいのですが、実際に自社所属のタレントが何か不祥事を起こして逮捕されてしまった場合に、マネージャーや事務所はどういう行動を取るのか?
タレント事務所の規模にもよるけど、小さな会社だと、まずは、社長があたふたしてとりあえず会社の顧問弁護士に相談、という感じですかね。タレントがすでに逮捕、勾留されてしまっている場合は、現場のマネージャーにできることなんてほとんどないんですけどね。
とはいえマスコミへの対応はしなければいけないし、あとはタレントの家族なんかにも取材が行くことが多いのでひと言連絡を入れたり、あるいはアイドルグループだったりした場合は、ほかのメンバーの一時的な避難場所の確保なんかはするかもしれません。だって、田口くんがもし今もKAT-TUNのメンバーだったとしたら、当然ほかのメンバーを守らないといけませんしね。
あと、性犯罪や交通事故など、被害者の方がいるような事件を所属タレントが起こしてしまった場合、相手方との示談を成立させるために事務所が奔走する……というのはあり得ます。被害者のいる犯罪においては、たとえ逮捕されたとしても、その後起訴されるか、被害者との示談が成立して不起訴になるかの違いはすさまじく大きいですからね。まあ、その後そのタレントが解雇処分になるにせよ、会社へのダメージを最低限にするためにも、悲しいかな、そういう部分でがんばる可能性はあるわけです。もちろん、会社の顧問弁護士にお任せする部分は大きいと思いますが、そのための段取りはやはり、所属プロでそれなりの立場にある社員、役員が担当することになるでしょう。
今年2月に、派遣マッサージ店の女性従業員への強制性交の容疑で逮捕された新井浩文さんなんかは、相手の女性が被害届を警察に提出したあとも、事務所にはすぐに報告してなかったようですね。なんとかなると思ったのでしょうが、事務所としては、そういう情報共有をしてくれないというのは一番困るパターン! コトの重大さを認識して真摯な対応をしていれば、もう少し違う着地点もあり得たように思うのですがね……。
不祥事の際の“賠償金”はいくら?それから、芸能人が不祥事を起こしたときにニュースで採り上げられがちなのは、「違約金だとか損害賠償金がいくら?」というお話でしょうか。やっぱりお金の話だし、いかにも“芸能界のウラ側”という感じで、みなさん興味あるのでしょうね。ただ、不祥事を起こしたタレントが所属していたプロダクションとしては、結局そこは待つしかない、というのが正直なところ。相手あってのことですから、基本的には、先方から違約金が請求されるのを粛々と待つしかできない。そして、それを支払えるか、支払えないか、というだけの問題なんですよ。
アミューズやエイベックスのような上場している芸能プロダクションの場合は、当然、株主、市場に対する義務がありますから決算報告書を公開しており、会社としての大きなおカネの流れは、ある程度は世間さまに筒抜けともいえます。
よく、不祥事を起こした俳優の代わりに、バーターで同じ事務所の人気俳優をその局のドラマに出演させて、違約金をチャラ、あるいは減額してもらった……なんて報道がありますよね。まあもちろん事務所にもよりますけど、そういうケースもあるとは思います。「今ノリノリでなかなかスケジュールが取れない若手俳優Aを次の次のクールのドラマに絶対出しますので、Bの不祥事の件はある程度よしなに……」といったところでしょうか。
ただね、そういった“交渉”が無理な相手がいるんです。そう、NHKです。なぜって、NHKはいわば公共事業であり、国民から徴収した受信料運営が成り立っている組織ですから。だから、そういうところはすごく厳しい。税金で成り立っている以上、仮にNHKサイドが損失をこうむった場合は、「しかるべき相手にしかるべき金額を請求した」という事実は絶対に残さなければいけません。一方で、民放局や映画会社が相手であれば、ある程度“あうんの呼吸”というか、一定程度の“ギブ&テイク”は存在するケースもあり得るでしょうね。
そんなふうに、不祥事が起きた場合の芸能界のおカネまわりの話って、週刊誌が尾ひれをつけて大げさに書いているような内容よりも実は全然不明瞭じゃないというか、けっこうちゃんとしてるんですよ。
ピエール瀧さんのケースだって、大河の違約金や映画会社への損害賠償がどうのこうのっていう話よりも、石野卓球さんとの関係性とか経営していたお店の話、お子さんを含めたご家族の話など、オモテに出せないこと、絶対に報道には出てこないようなドラマがめちゃめちゃあると思います。で、タレントさん本人にとっても所属プロダクションにとっても、そっちのほうがよほど処理に神経を使う……ということは、おうおうにあることなんですよね、実は。
(構成=白井月子)