【労働局の調査内容を記録した都の報告書の要約】

1.図書館業務委託契約の概略

・契約請求部署は学校経営支援センター。センターは中部・東部・西部と3ヶ所あり、中部センターでは86校の都立学校を所管

・今年度は図書館管理業務委託契約を24校で4案件の契約を締結。

都全体では80校の契約

・今回の調査対象となっている契約は、「松原外5校図書館管理業務委託」で受託者はサービスエース

・図書館管理業務は平成23年度から随時、各学校で実施。委託導入の背景としては都立学校全体の司書の人材の減少であり、司書が配置されない学校で導入

・本契約は、財務局において指名競争入札により業者を決定しており、今年度の中部センターでの契約は2社で各2案件契約締結

2.委託内容の確認

――委託範囲は?

「書架の整理、貸出本のバーコード貼付、選書リストの作成、開館・閉館の準備など基本業務である」

――本の購入は?

「学校での購入と(各校を統括する)センターでの購入がある」

――業務従事者の人数は?

「指定しておらず、複数人数としているが、時間帯によっては複数人数を必要とはしていない。単位制の学校については複数人数としている」

――資格は?

「司書か司書補の資格が必要。ただし、業務責任者については必ずしも司書資格を要しない」

――司書資格を必要とする根拠は?

「学校図書館法である」

――業務への指示は?

「業務指示書を毎月学校担当から業務責任者へ提出。詳細の説明や細かい指示・調整等については、業務責任者訪問の際に行っている」

――業務責任者の訪問頻度は?

「学校によって異なるが、農芸高校に関しては月2回以以上だ」

――昨年度は司書教諭と業務従事者でミーティングを実施していたか?議事録があると報告されているが保管しているか?

「定期的にミーティングを実施しているとは聞いていない。議事録についても見たことはない。業務内容の詳細や確認がある際は、司書教諭と簡単な調整はしている」

――ミーティングの目的は?こちらに報告されている議事録の内容を見ると、次回のミーティングの日程も決めているようだが?

「学校担当では詳細な事までは確認できていない。この後、司書教諭に確認してみる」

――業務従事者の名簿作成して性別や年齢は載せているか。写真を添付する目的は?

「平成26年度は性別と年齢を載せる欄を設けていたが、今年度からは不要と判断し、載せていない。写真については、学校現場での不審者対応の必要性から顔写真を添付依頼している」

――日々の業務報告は?

「業務日誌を使用し、従事者がその日の業務内容や伝達事項を記載。学校担当へ提出後、校内で決裁している」

――日誌にある「申し送り事項」とは?

「次の日の担当の従事者への伝達事項を記載。行事や消耗品交換等の伝達である」

――「申し送り事項」は従事者間のみの伝達事項であれば、日誌に記載しなくても良いのでは?学校担当(発注者)も目を通すことはできるため、間接的な指揮・命令になりかねないのでは?

「あくまでも、報告レベルの内容のみ記載、指示する内容とはなっていない」

――業務従事者の変更を求めたことはあるか?

「今まで変更を要求したことはない」

3.司書教諭へのヒアリング

――従事者とのミーティングの実施頻度は?

「業務委託者からの要望により互いの意見程度の認識でしていた。

生徒指導は司書教諭が行うため、生徒とのやりとりの確認や図書館の利用マナーについて報告等があった。出席者は司書教諭と従事者の中で代表1人の2名。実施頻度は、行事前など多い時で1週間に1回、通常は月に1回程度で、時間は15分程度。長い時は1時間程度の時と記憶」

――議事録は?

「メモのみで作成していない。代表従事者が他の従事者との情報を共有するため作成したようだ。提出されていない」

――従事者のシフト表は?

「人が変わる事もあるため、担当が分かるように代表の従事者からもらっていた」

――その他に従事者との関わるのは?

「「図書館だより」作成を毎月依頼し、内容を確認。校内決裁をするため、細かい修正等を依頼」

――司書教諭の役割は?

「主に生徒指導や図書委員の活動、選書リストの確認等。選書リストは必要に応じて訂正等を依頼することもある」

4.労働局からの意見

・請負業務は、指揮命令が従事者と学校の間には発生せず、独立して業務を行っているものである。現状の委託内容や体制を確認する限り、請負業務が独立しているとはいえない。

・近年、偽装請負などの事例が増えており、需給調整事業部においては、委託と労働者派遣の切り分けがなされているかの確認・指導を行っている。

・例えば「図書だより」では、校内決裁により修正指示等をしており、発注者と受託者が連携している以上、独立した業務とはいえない。あくまでも業務責任者を通しての指揮・命令を行う必要がある。

・従事者とのミーティングについても、司書教諭と連携しており、議事録のような書類があると間接的な指示となっているととらえかねない。

・業務内容を変更できる権限がある者(業務責任者)が現場にいて、従事者への指揮・命令をとれる体制があれば、発注者との調整は可能である。

・本調査は是正指導であり、改善策等の提示を求めている。改善等が確認できない場合は行政指導となる場合もある。

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