配信1カ月にして、すでに“一気見”した者が続出、瞬く間にエンタメ界の話題の中心となっているネットフリックス配信のドラマ『全裸監督』。パンツ一丁で伝説の監督・村西とおるを怪演した山田孝之の芝居、そしてこの種のビデオの表現がまだおとなしかった1980年代なかばの業界に革命を起こした男と女の物語に、多くの人が魅了された。

すでにネット上では多数のレビューが投稿され、長澤まさみ有吉弘行ら有名人たちもSNSで大絶賛。いったい何がそんなにすごいのだろうか? あるテレビ誌の記者は次のように語る。

「本作は、全世界190カ国に同時配信。2年半前に村西役のオファーを受けた山田さんが、原作にあたる『全裸監督 村西とおる伝』(本橋信宏著、2016年に太田出版より刊)の帯に書いてあった『前科7犯、借金50億』という文字だけを見て『たぶんこれはすごいことが起きる』と出演を即決。まさかここまで過激な内容とは思ってなかったかもしれませんが、まったく妥協することなく、“全裸監督”を熱演しています。

 当然ながら裸の撮影シーンも多く、地上波では絶対に放送不可能であろう内容を、ネットフリックスという“自由”な舞台で描ききっています。予算は1話数億円ともいわれており、潤沢な予算で歌舞伎町のセットをつくりあげ、ハワイロケも敢行。スタッフも海外から招へいして衣装や小物にも徹底的にこだわり抜き、1980年代の雰囲気を見事に再現しています。

また、撮影現場ではハリウッド式を採用して『1日10時間以下の健康的なスケジュール』での撮影だったとか。そのゆるやかなスケジュールで全8話を撮るのに3か月近くかかったそうですが、全世界190カ国に配信できるという予算感だからこそ、ここまで規格外のものが撮れたのでしょうね」

消息不明の黒木香を演じきる

 また、村西とおるだけでなく、伝説の女・黒木香の半生を描いているのも注目ポイントだ。あるテレビ局のディレクターは次のように語る。

「黒木香を演じた女優、森田望智さんの存在感が抜群にスゴイ。

決してモノマネではなく、性に悩むヒロインというテイストをうまくくみ取りつつ、文字通り体当たりの演技を披露しています。伝説の女優・黒木香は、主演作が3本しかなかったり、当時、横浜国立大学に在籍していた良家の令嬢でありながらわき毛をそらずに出演し、地上波のバラエティ番組にも進出するなどしたミステリアスな存在。森田さんは、当時タレントとしても大ブレイクを果たした黒木香のそんなチャーミングさを、しっかりと表現できている。今後、ブレイク確実な女優さんだと思いますね。

 黒木香は現在消息不明だそうですが、絶対にこの作品を見てるはず。いったいどんな感想を述べてくれるのか、今こそ出てきてもらいたいですね」

訴訟トラブルを抱える可能性も

 予想以上の大絶賛が日本列島を駆け巡り、早くもシーズン2の製作が決定。この展開の早さも、日本の地上波ドラマや大作映画では考えられないレベルだ。

「シーズン1で描ききれてないエピソードも多く、ここから村西監督は松坂季実子を発掘して巨乳ブームを巻き起こしたり、桜樹ルイら専属女優を多数抱え、スタッフや女優たちと共同生活を送るという“ハーレム”を築いていきます。

 その後も、不動産投資で大失敗したり、アダルト専門の通信衛星放送事業に投資して資金が焦げ付いたりし、ついには50億円もの負債を抱えて彼の会社は倒産することになるのですが、このジェットコースターのような人生こそが村西とおるの真骨頂。シーズン2は、そんな村西監督のいわば黄金期と没落期を同時に描くことになると思うので、本当に楽しみで仕方ありません。

 ただし、すでに業界を引退し、2000年代なかばには肖像権の侵害を主張して大手出版社を相手に民事訴訟を起こしたこともある黒木香さんの一件をクリアにしないまま映像化してしまっているため、ネットでは問題視する声も上がりました。ネットフリックス側としては、“本橋さんの著作『全裸監督』を映像化しただけ”という主張でしょうが、黒木さん本人が肖像権の侵害などとして本作に対しても訴訟を起こせば、映像化にストップがかかる可能性も考えられなくはない。

しかし、アダルト業界が隆盛を極めた時代の空気をきちんと表現してみせた稀有な映像作品だと思いますから、シーズン2もとどこおりなく日の目を見てほしいとは思いますが……」

 あまりの完成度の高さゆえ、シーズン2への期待も日に日に高まる『全裸監督』。訴訟トラブルに巻き込まれることなく、前作を上回るような衝撃作を期待したいところだ。

(文=藤原三星)

藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>

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