和歌山市では、市駅前に移転する新しい市民図書館の指定管理者に、全国でTSUTAYAを展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が17年末に選定された当初から、不透明な再開発事業のプロセスの裏には“特定企業”との癒着があるのではないかと囁かれていた。

 総事業費が123億円にも上る南海市駅前の再開発には、補助金だけで64億円、図書館の建設費用負担も入れると総額94億円もの公金が投入されている。

 それにもかかわらず、南海電鉄、和歌山県、和歌山市の三者及びコンサルタントのアール・アイ・エーが会議で話し合った内容が、ことごとく黒塗りで開示されるのは、誰がどうみてもおかしい。市民団体が、CCC選定プロセスも含めたこの事業に関する情報の開示を求めても、市当局はほとんど黒塗りで応じた。

 そんななか、和歌山市民らは情報開示の仕方について審査請求を行った。さらに、図書の貸出に個人情報保護の面で不安があるとされるTカードを採用した件や、蔦屋書店方式の独自分類など、全国で物議を醸している“CCC方式”の図書館運営に関して、導入反対を求める請願署名を今年2月、議会に提出した。現在も、市内の小中学校に設置された学校図書館の運営をCCCに委託することを中止するよう求める請願を、近く議会に提出すべく賛同者の署名活動を展開している。

 そこへ、和歌山市で事業を営む林氏が助っ人として現れた格好だ。

「行政訴訟は、まともにやってもなかなか勝てないのが現実です。でも、審理を進めていくなかで、請求の是非を検討していくためには、被告が不開示の正当性を立証する必要があります。そのために、黒塗りで出された情報の原本、つまり黒塗りを外した資料の提出を裁判所が命令することもあります。もちろん勝訴するのが目的ですが、そのプロセスでの情報開示にも期待しています」(林氏)

 しかも、とりあえず簡易裁判所に提訴したが、もし満足のいく成果が出なければ、地裁へ控訴していくシナリオを描いているというから、なかなかしたたかな戦略といえるだろう。

 百戦錬磨の市民オンブズマンの腕のみせどころといえそうだ。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)