連日ネットを賑わせているさまざまな芸能ニュース。その裏側では、メディア側とタレント側との駆け引きも行われている。

 たとえば、9月28日午前0時半にファンクラブ向け会員サイトで発表された、TOKIOのリーダー城島茂の結婚。公式発表前の27日の夜の段階で「週刊文春デジタル」がすでにこの結婚を報じていた。

「実は、27日の夕方くらいまでには、ジャニーズ事務所と付き合いのあるほとんどのメディアが城島結婚の情報をつかんでいました。とはいえ、特にジャニーズ事務所所属のタレントに関するニュースの場合、公式での発表を待って報じるというのが“暗黙のルール”なので、多くのメディアは黙っていたんです。しかし、27日の午後6時過ぎに大洋図書の『実話ナックルズ』編集部のツイッターが〈おーい。明日の昼間、TOKIOメンバーの重大発表あるらしぜ!〉と匂わせツイートをした。それに続いて、『週刊文春デジタル』も報じたわけです」(フリーランスのベテラン芸能記者)

 いわば、一部のメディアによる“抜け駆け”があったということだ。

「文春もナックルズも、ジャニーズ事務所の“御用メディア”ではないので、暗黙のルールを守らなければならない理由はない。そういう意味では抜け駆けなどではなく、この2メディアにとっては“当然のスクープ”なわけですが」(前出・ベテラン芸能記者)

“自分たちにとって都合がよい情報”を流通させる

 ネット発のニュースがそこまでの力を持たなかったひと昔前であれば、こうしたメディアも、「ネットで先行して報じれば雑誌の売り上げが落ちてしまう」と考え、たとえスクープを仕入れても、雑誌の発売日まではそのスクープを報じなかった。ゆえに芸能事務所も、あくまでもスクープ系週刊誌の「発売日」さえ気にしていればよかった。しかしネットニュースが力を持ち、雑誌の売り上げも下げ止まった現在では、そのニュースのバリューによっては、スクープ系メディア側も雑誌の発売日など関係なくネットで報じるようになってきている。

「ネットニュースの一般化によって、芸能マスコミの暗黙のルールはどんどん崩れてきている。

週刊誌がネットに抜け駆けスクープを掲載することもあれば、タレント側が週刊誌に取材されたことをSNSで報告して、先回って釈明することもあります」(前出・ベテラン芸能記者)

 かつては、芸能人のスキャンダルが週刊誌に掲載される場合、その掲載号が発売されるまで、本人は言及しないという暗黙のルールもあった。しかし今となっては、そういったルールも無視されるようになっているのだ。

「ネガティブなスクープだった場合、タレントとしてはできるだけ早く弁明しておきたいというのが本音なので、先回りするのも仕方ないことでしょう。しかし、たとえば熱愛であるとか結婚であるとかのポジティブなニュースであっても、先回りで報告してスクープを潰すことが増えている。タレント本人がSNSで報告するならまだいいんですが、事務所サイドが関係性の強いスポーツ紙に情報をリークして、スポーツ紙のスクープにしてしまうことさえあります」(メディア関係者)

 芸能事務所と週刊誌、そしてスポーツ紙の間で保たれていた“微妙なバランス”がいつの間にか崩れ、“先に言った者勝ち”のような様相を呈しているのだ。

「持ちつ持たれつの馴れ合いがなくなったという意味では“自由な報道”が可能となるわけで、それはそれで歓迎すべき側面もある。しかし一方で、“真実”が伝えられるより前に、いかに“自分たちにとって都合がよい情報”を流すかということが重要視されるようになってきています。何が本当のことで何が間違った情報なのかもよくわからなくなり、特に大きなニュース、スキャンダラスなスクープになればなるほど、報道状況はカオス化しやすくなっている印象がありますね」(前出・メディア関係者)

レプロは文春に事実上の勝訴

 その一方で、SNSなどでは一般ユーザーたちが芸能ニュースについて自由に発言しているが、その内容が芸能マスコミに影響を与えることも少なくない。

「一般ユーザーたちは、もちろん“真実を知りたい”との気持ちで動いているのでしょうが、と同時に、“こうあってほしい”という願ベースのコメントをしがちです。さらに、そういった一般ユーザーの気持ちに寄り添った記事を書けば、多くのPV(ページビュー)を狙いやすいという現実もある。つまり、“ネット世論”に沿った記事を作ることこそが、より多くのページビュー獲得に繋がりやすくなっているんです。読者の“願望”を反映した記事が増えた結果、何が真実で何が嘘なのか、なおさらわかりにくくなっているわけです」(前出・メディア関係者)

 そのような意味で“真実”が見えにくくなっている事例の代表的なものが、のん(本名・能年玲奈)による、前所属事務所レプロエンタテインメントからの独立騒動だという。

「能年が独立する際、レプロが本名を使えないようにしたなどと報じられると、ネット上では能年擁護の声が高まり、レプロを悪者とするニュース記事も少なくなかった。そんななか、レプロによる能年への“パワハラ”を報じた2015年の『週刊文春』の記事に関し、レプロは発行元の文藝春秋などを名誉毀損で提訴。4月の一審判決、そして東京高裁によるこの9月の二審判決でも、『事実と異なる報道があった』として事実上レプロは勝訴、文春側に損害賠償が命じられました。

 しかし相変わらずネット上では、この件ではレプロこそが一方的に悪者なのだという声が多く、それがなかば既成事実化しています。芸能ニュースとしても、ネットユーザーの世論に近い記事のほうが読まれやすい面があり、この裁判の動向にかかわらず、やはり能年擁護の記事が多い。こうした構造によって、“真実”がないがしろにされがちな現状もあるんですよね。報道として少々ゆがんだ側面があるのは事実だと思います」(前出・メディア関係者)

 ネットが主戦場となったことで、以前には存在した“暗黙のルール”が崩れ、混乱期を迎えている感のある芸能マスコミ。真実を伝えることよりもより多く読まれることが優先された結果、記事の内容が恣意的にねじ曲げられたこともなくはないだろう。芸能ニュースを受け取る側の一般ユーザーは、これまで述べてきたような状況を把握したうえで、何が真実で何がそうではないのか、しっかりと見極める必要がありそうだ。

(文=編集部)

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