独身でマンションを買った人の「末路」

 Kさんは都内の会社に勤める会社員の男性だ。最初に家を買ったのは2013年9月、まだ20代半ばの独身時代だった。

「それまでは賃貸に住んでいたんですが、家賃を考えてオフィスからかなり遠い物件にしてしまったので、満員電車に乗って通勤するのが大変でした。たまたま品川駅近くでタワーマンションの分譲物件が販売されることを知って、買おうかと考えたんです」(Kさん、以下同)

 興味を惹かれた物件は、新幹線が通り、近い将来にリニア中央新幹線の発着も見込まれる、JR品川駅の高輪側にあるタワーマンション。品川駅周辺でも港南側にはタワーマンションが林立しているが、反対サイドの高輪側は供給が限られている。Kさんがこの物件に関心を持ったのも、「品川駅徒歩圏で高輪側の物件の供給は限られている」という理由が大きかった。

 まだ独身だったKさんは、このタワーマンションの中では比較的面積が小さな1LDK、36平米の物件に目をつけた。南西向き、階はタワーマンションの中では低層にあたる4階。価格は3900万円ほど。両親に相談して、購入資金を借りることにした。

 Kさんは、それまで貯めていた貯金をはたいて600万円弱を払い、残りは両親から借り入れて、キャッシュで自宅を購入することができた。

「賃貸に住んでいたときは、毎月の家賃の支払いは当たり前のことだと思っていたので、無駄にキャッシュアウトばかりしていることに気がついていませんでした。いざ家を買ってみると、『賃貸に住むのはお金をドブに捨てているのと同じだ』と感じます」

結婚したら、住み替える

 Kさんは満員電車による長時間の通勤から解放され、都心のタワーマンションで独身生活を謳歌するようになった。が、その後2年ほどして結婚することになった。

 36平米の1LDKはひとり暮らしには十分だったが、結婚するとなると手狭だ。最初に買ったマンションは1600万円値上がりし、5500万円になっていた。こうして「賃貸はお金をドブに捨てているのと同じ」という感覚を持つようになったKさんに、手狭になったから賃貸に移るという発想はない。新たな人生のステージに合わせて、自宅を買い換えることにした。

 このとき、Kさんには2つの選択肢があった。ひとつは住んでいた1LDKを売り、含み益をキャッシュ化した上で、それを資金として新居を買うこと。もうひとつは、今住んでいる物件は売らずに賃貸に出し、新居は新たに住宅ローンを組んで購入することだ。Kさんは後者を選んだ。

都心のタワマンが3年で400万円の値上がり

 前回の物件選びが見事に成功したことから、Kさんは次も都心のタワーマンションを選ぶことにした。今度は、港区の山手線内側の徒歩圏内にあるタワーマンションである。

 2LDKで価格は約7000万円。やはり、タワーマンションの中では低層の物件とした。

もう貯金はなかったので、頭金の1割をまた両親に頼んだ。今回は借り入れではなく、結婚祝いに贈与してもらえることになった。こうして、2015年7月、Kさんは夫婦のための新居の購入契約を結んだ。

「今回は9割が住宅ローンとなったので、ローンを払っていけるのか、物件価格が下落しないかという不安がありました」

 だが、今回の選択も間違いではなかった。筆者が主宰する無料マンション情報サイト「住まいサーフィン」【※1】の価格査定によれば、この物件は購入から3年たった現在も、買った価格を400万円上回っている。

「同じマンション内で賃貸に出されている物件もあるんですが、その賃貸価格を見ると、『買ってよかった』と思います。僕が組んだ35年ローンの月々の返済額のほうが、賃貸の家賃より少なく済んでいるんです。将来、ローンを払い終えれば管理費と修繕積立金のみで済むようになりますし。

 それと、僕は会社員なので、年末調整で住宅ローン控除分が税務署からキャッシュで戻ってくるときは、得をした気分になりますね。値下がりも心配していたんですが、今のところ残債割れにはなっていません。その分、毎月の返済を通じて資産形成ができていると思うとうれしいです」

人生を豊かにするマンション購入

 自宅を購入してみたら、構造・居住性・管理状態など、多くの点で賃貸との差を感じた。現在の自宅もタワーマンションだけに共用施設が充実しており、「親戚や友人が訪ねて来たときにはゲストルームに泊まってもらえるし、友人とパーティールームでパーティーをすることもあります。

無料のフィットネスもあって、そちらは妻と2人で通っています」と楽しそうだ。

「近しい独身の友だちに、あなたなら家を買うことを勧めますか?」という質問に、「勧めます。ローンの不安はあるけど、家賃を払うことと同じだと割り切ればいい。1回ローンを組めば慣れるし、ローン控除は節税になります。家選びの基準は、僕なら第一に利便性、第二に資産性ですね」と答えてくれた。

 Kさんの自宅購入は、今回も成功だったようだ。

自宅は資産形成のツール

 Kさんに限らず、「住まいサーフィン」会員には「自宅購入は投資である」という考えを持ち、資産性のある物件を購入することで資産を形成していこうとする、意識の高い人が多い。25万人いる会員のうち、自宅査定をした人の99%が資産を増やしている。

 ここ数年のマンション価格高騰を見るにつけ、思い切って長期の住宅ローンを組んで買った人たちの多くが、「あのとき決断して本当によかった」と胸をなで下ろしている。逆に、チャンスがあったのに買わなかった人は「しまった、あのとき買っておけば」と後悔している。だが、今からでも遅くはない。

「独身でも家を買うこと」を「家活」と呼ぶことにした。

就活が終わったら婚活の前に家活をしようという提案だ。これまでは多くの人が「家は所帯を持ってから買うもの」という固定観念に囚われて、「単身のうちに家を買ってしまう」という発想そのものがなかった。

 だが、単身であっても家を買うメリットは大きい。家を買うことで、通勤時間の配分や住む場所、付き合う人が変わってくる。それにより、ライフスタイル、人生そのものが変わる。そして「老後になっても住む場所がある」という安心を手に入れられ、さらに物件を選ぶことで、資産を形成することも可能だ。

 まだ結婚前の若いうちに家を買っておくべき理由について説明し、将来的に結婚や転職の足かせにならず、むしろ資産としてあなたを助け、あなたの生き方を自由にしてくれる自宅の選び方は、いくつかの法則を守るだけでできる。

 賃貸と分譲では物件の質からして違う。今、賃貸住宅に暮らしている人は、まずは「家を買う」ことに関心を持ち、売り出されている物件をチェックし、見に行ってみることから始めてみるとよいだろう。見るだけならタダであるのだから。

(文=沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント)

【※1】
「住まいサーフィン」

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