すでに離婚していたことが公になった、タレントのあびる優と格闘家の才賀紀左衛門が、奇妙なコメントの応酬を繰り広げている。

 一部メディアで離婚が報じられた13日、あびるは自身のインスタグラムで離婚を報告し、「これからもヨツハのママとして、大切に大切に愛情いっぱいに育てていくことを誓います」と発表。

あびるの所属事務所も「長女についてですが、親権は才賀が持ちますが、あびるはこれまでと同様の愛情を持って育てていきます」とコメントを発表した。

 これを受けて一部メディアでは、「親権は才賀にあるが、実際の育児はあびるが行う」などと報じられると、才賀がすかさず反応。14日に自身のインスタグラムで「育てるのが元妻と一部の記事で報道されていますが、僕、才賀紀左衛門が親権並びに監護権(育児権)を持ち責任を持って育てていく事を表明いたします」と説明している。さらに、才賀はユーチューブ上の動画で「まだまだ未熟ですけれども、これからはシングルファーザーとしてしっかり子どものことを守っていってあげれるようにがんばります」と宣言している。

 一連の動きより、インターネット上ではあびると才賀の主張が食い違っているとして注目される事態に発展。さらに13日付「AERAdot.」が、「実は離婚をしたがったのは夫の才賀さんのほうなんです。小さな娘がいるのに、ほぼ毎日夜遅くまで飲み歩くあびるさんに我慢の限界を迎えたようです」という2人の知人のコメントを紹介したことから、あびるへの批判も数多く寄せられている。

 一般的に、離婚の場合は元妻側が子どもの親権を持つケースが多いというイメージが強いが、今回、なぜ才賀が親権を持つことになったのか。そして、一見すると2人のコメントが食い違っているかのようにみえる状況が、なぜ生まれているのか。弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士に解説してもらう。

山岸弁護士の解説

 世間では、離婚の際に小さい子供がいる場合に、どちらが親権を持つのかについて揉めることをよく聞きますが、ほとんどの人が「親権」というものを正しく理解おらず、あたかも「子どもを獲得する権利、子どもと暮らせる権利」と誤解しています。おそらく「権利」という字を使っているので、誤解が生じてしまうのでしょう。

 そもそも「親権」とは、正しくは「子どもが持っている財産を正しく管理する権利(財産管理権)」と、「子どもがどこに住むかを定める権利や子供に代わって法律行為をする権利(監護権)」を意味します。

 そして、「子供を育てる」ことは、「権利」ではなく親として当然の「義務」であることから、同居してようとしていまいと、権利として振りかざせるものではありません。

 さて、離婚する際、現行法では、父親か母親のどちらかが20歳未満の子の親権者となります。通常は話し合いによって決めることになります(ほとんどがこのケースです)が、どちらも譲らない場合は「調停」や「裁判」手続きで決定します。

 ここで、裁判所が親権者を決定する場合ですが、10歳以下の子どもの場合、たいていの場合は「母親」が親権者となります。これを裁判所における「母性優先主義」といいます(ここでは、この制度が良いか悪いかは書きません)。そして子どもが10歳~19歳の場合は、子どもの意見を尊重し決定します。

 なお、裁判所が「母性優先主義」を覆して父親を親権者として決定する場合ですが、例えば、母親が明らかに育児放棄をしている場合、犯罪を繰り返している場合、薬物中毒である場合など、トンデモない場合に限られています。「オレのほうが育児に積極的だった」レベルではとても覆せないという、父親側にとってはとても残念な事実です。

 今回、才賀さんが子どもの親権者となったとのことですが、話し合いで決めたわけで、誰かによって認められたという話ではないので、なんの問題もありません。

 ところで、あびる優さんが「子どもを育てていくことを誓います」と投稿したこととの関係ですが、おそらく子どもの「監護者」はあびる優さんとしたのでしょう。現行法では、離婚後、父親と母親が「共同で親権を行使する」ことはできませんが、「親権者」と「監護者」を分けることは可能です。

 要するに、子どもの進学や生き方を決めたり、財産を管理するのは才賀さんとし、子どもを育てるのはあびる優さんとしたのではないでしょうか。

(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)

●山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士 時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。弁護士法人ALG&Associates執行役員として法律事務所を経営し、また同法人によせられる離婚相談、相続問題、刑事問題を取り扱う民事・刑事事業部長として後輩の指導・育成も行っている。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。弁護士としては、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。

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