「俺がちょっと心配してるのは『キングオブコント』、それから『M-1』。どうなるかなって」

 5月17日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、ダウンタウン・松本人志が『キングオブコント』(TBS系)と『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の開催を不安視した。

当然、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を考えての発言だ。

 毎年9月、もしくは10月に行われる『キングオブコント』には、2008年の初開催以来、毎年2000組以上の芸人がエントリーしている。コントを志す者たちにとって聖なる舞台の予選1回戦は、例年通りなら間もなく行われる時期だ。昨年、最初に行われたのは6月24日だが、果たしてどうなるだろうか。

 毎年12月に行われる『M-1グランプリ』も岐路に立たされている。先の『ワイドナショー』で松本も「漫才なんて一番、濃厚接触」と言及していたが、ソーシャルディスタンスが声高に叫ばれる今、近距離でこそ0コンマ1秒の絶妙な間が生きる漫才を繰り広げることは、考え方や規定を変えない限り難しいかもしれない。

 昨年、予選が始まったのは早くて8月1日。それから11月上旬ぐらいまで、3カ月程度続く。ちなみに、大会の開催が発表されるのは毎年6月だ。昨年は6月13日に発表され、出場者のエントリーを開始している。あと20日あまり、開催の可否に注目が集まっている。

“3密”が避けられない『紅白』はどうなる?

 コロナ危機は音楽業界にも大打撃を与えている。

アーティストのライブは軒並み中止となり、近年、業界に絶大な経済効果をもたらしてきた各地の夏フェスも自粛を余儀なくされている。

 また、各局の音楽番組も苦渋の決断を迫られている。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)や『CDTV ライブ!ライブ!』(TBS系)などは、これまでのヒット曲の特集か、別場所からのリモート出演による歌唱が中心となっている。

 こうなると気になってくるのが、大みそかに行われる国民的イベント『NHK紅白歌合戦』の開催だ。1951年の第1回以来、昨年で第70回を迎えた長寿番組だが、これまで放送が延期・中止されたことは一度もないという。

 昨年は総勢41組のアーティストが出場。AKB48などのようにグループで出場する歌手も多いため、合計人数は軽く100人は超えるだろう。さらに、ステージには多くの演奏者やパフォーマーが加わることもある。1年のミュージックシーンを彩った彼らを見ようと、NHKホールには約3000人の観客が詰めかける。例年通りのスタイルであれば、密閉・密集・密接の3密は避けられないだろう。

日本アカデミー賞も中止の危機に

 映画も公開延期や映画館の休館が相次いでおり、興行収入に暗い影を落としている。日本映画製作者連盟の発表によると、映画配給大手12社の4月の興収総額は前年同月比96.3%減の6億8824万円だった。

 あえて厳しい見方をすると、1978年から毎年春に開催されている日本アカデミー賞の授賞式、もしくは開催自体も危うくなりそうだ。そもそも、選考の対象となるのは、授賞式の前々年12月中旬から前年12月中旬までの1年間に上映された作品だ。しかし、映画館がほぼ休館している現状では、来春にノミネートされる作品は昨年12月中旬から今年4月中旬までの半年間の映画に限定されてしまう。

ワタナベエンタがお笑いライブを有料配信

 このように、どのエンタメ業界も厳しい情勢が続く中、老舗の芸能事務所ワタナベエンターテインメントが5月10日に“有料課金制”の生配信形式でお笑いライブ「WEL On Line」「WEL NEXT On Line」を開催したことが話題となった。当日は1000枚のチケットが完売。客はオンラインで芸人たちのステージを楽しんだという。

 ライブの現場ではコロナ対策を徹底。各組ごとの楽屋を確保し、空気清浄機を配置した上、会場に入る前は出演者とスタッフ全員に検温を行い、マスクの着用と手洗いうがい、アルコール消毒を欠かさず行ったという。

 テレビ番組にも新たな風が吹き始めた。5月23日に放送される笑いの祭典『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)では、漫才師たちはアクリル板を挟んでチャレンジしたという。もちろん、各人リモート収録が中心となったようだ。

 いずれにしても、2020年は日本のエンタメの歴史において分岐点となるのは間違いない。

演芸人、音楽人、映画人、ともに、その創意工夫と情熱で、なんとか文化を後世につないでいってもらいたい。

(文=編集部)

編集部おすすめ