ロックバンド・X JAPANのフロントマンであるToshI(作家活動やソロ活動の際には「龍玄とし」名義を使用)が行った「1人コンサート」が話題を呼んでいる。

 ToshIは9月22日、東京オペラシティにおいて『たった一人だけのコンサート「運命」龍玄とし』を開催。

これは、抽選に当選した観客1名だけを招待し、その観客がチョイスした曲をToshIが歌いあげる……というきわめてぜいたくな内容のコンサートで、12時、13時、14時、15時の4部編成(15時の部のみ2名×2組の4名)となっていた(ちなみにチケット代は1枚3万円)。

 これは、コロナ禍においてもみずからの運命を切り開いていくというToshIのソロイベント「プロジェクト運命」の一環として行われたもので、採算は度外視しているという。ToshIはこのイベントを開催した理由について、「『今だからできない』じゃなくて、『今だからできる』ことは何かをずっと考えてきた」「今の時期だからこそ自分がしてみたいこと、それがたった1人だけのコンサートに行きつきました」などと語っているという。

1億円集まったゲーム実況、GLAY“無許可ライブ”大誤報…コロナ禍下のライブは創意工夫が満載

 このイベントについてネット上では、「すごい贅沢なコンサートでうらやましい」「こういう試みをいろいろな人がやってくれたらいいのに」など、ポジティブな声が多く上がっている。現在のコロナ禍においてはミュージシャンは、これまでのように観客をフルに入れた状態でのライブやコンサートを行うことが困難となっており、無観客でのライブ配信なども増えている。こうしたライブのなかには、そのユニークさから、今回のToshIのライブ以上に注目を集めたものも少なくない。そのいくつかを紹介してみよう。

・スパチャによる“投げ銭”で、1億円の支援を集めたM.S.S Project

 ニコニコ動画やYouTubeなどの動画配信サイトで活動を行うゲーム実況・音楽制作ユニットのM.S.S Projectは、新型コロナウイルス流行を理由として、全国ツアーで予定されていた2月27日から3月4日にわたる5つの公演を中止。その穴埋めとして、3月4日に生配信ライブを行った。この際、公演中止によって同ユニットが多大なる経済的損失を受けたのではないか……という心配の声がファンの間で広がり、実際にライブが開始されると、配信画面に設けられた“投げ銭”(現金のギフティング機能)が追加されたYouTubeのチャット「スーパーチャット」に、ファンが支援のために現金を続々と投入。最終的には1億円以上の寄付が集まることになり、Twitterのトレンドに「スパチャ1億」という単語が入るなど、話題を集めることとなった。

・GLAY、“誤報”により物議を醸した函館・恵山での無観客ライブ

 大御所ロックバンド・GLAYは8月12日に、「GLAY野外無観客ライブ in函館・恵山」という動画をYouTube上に公開。

これは、彼らのホームタウンである北海道函館市内にある恵山道立自然公園にて行われた無観客ライブの様子を配信したものだったが、18日に地元・函館新聞が、「GLAYサイドが許可申請を行わずに撮影をしていた」と報じ騒動に。フロントマンであるTERUも同月19日、これに呼応し「このまま配信してても良いものなのでしょうか?」などと少々脳天気なTweetをして話題になっていたのだが、なんとその後函館新聞が、無許可で撮影というのは誤報だったとしてお詫び文を提出。実際は工作物設置についての申請がなかっただけのことを、撮影そのものが無許可だったかのように報じてしまったとした上で、9月2日にも検証記事を掲載し、重ねて謝罪することに。同月4日には函館市長がこの件について、「地元としてとても残念なことだと考えています」とコメントするなど、ネガティブな意味で注目を集めてしまうこととなった。

・ゲーム『フォートナイト』のなかでバーチャルライブを行い、1200万人以上が同時接続したトラヴィス・スコット

 アメリカの人気ラッパーであるトラヴィス・スコットが、4月24日から26日にかけて、人気オンラインゲーム『フォートナイト』のなかで、バーチャルライブを実施。『Astronomical(天文学的、桁外れ)』というタイトルが付けられたこのイベントは、序盤にゲーム内に設けられたコンサートステージを、空から隕石のように降ってきた巨大なトラヴィスが粉砕。サイケデリックな空間や水中、宇宙などをトラヴィスがさまようという圧巻の演出が人気を呼び、同時接続数1230万人という驚愕の数字を叩き出すこととなった。

ハロプロは有観客ライブを早くも開催

 こうした多くの無観客イベントが注目を集める一方で、すでに観客を入れた公演を行っているアーティストも少なくない。5月24日には、石川県金沢市を拠点とする地方アイドル・西金沢少女団が、観客を10人に限定したライブを行い、“日本最速レベル”と物議を醸した。

 また、モーニング娘。などを擁するハロー! プロジェクトも、7月11日から12日にかけて東京の中野サンプラザでコンサートツアーを約4カ月振りに開催。やはり、ファンとの“距離の近さ”が重要なアイドル業界においては、こうした“有観客”ライブを一刻も早く再開したい……という思いが強いようである。

 もちろんこうした有観客ライブにおいては、マスクの着用の徹底や声援の禁止など、感染対策が徹底されていることが発表されている。とはいえやはり無観客とは異なり、多少なりともリスクが存在してしまうことは確か。無観客ライブの継続か、あるいはリスク管理を徹底して観客を入れたライブを行うか――。新型コロナウイルスが終息を迎えるまでは、ミュージシャンは今後も難しい選択を迫られることになりそうだ。

(文=編集部)

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