2020年末の嵐の活動休止まで、残すところあとわずか。嵐メンバーの5人は、1999年5月のデビューからの21年間、私たちの胸を打つ歌やパフォーマンスを届け、またバラエティでの振る舞いでは私たちを大いに笑わせてくれもした。
そんな嵐メンバーへ感謝と敬意を込めて、それぞれの俳優としての活動を振り返っていきたい。今回はリーダー、大野智編だ。
誰もが不安視した『怪物くん』実写化で、視聴者に感動の嵐をもたらした大野智の繊細な演技大野智(40)といえば、絵を描くことや釣りを趣味としており、とことんマイペースな天然キャラでもあり、よくも悪くも落ち着いている印象があるのではないだろうか。しかし、俳優としての大野は、役柄の感情を繊細に表現できる器用さが目立つ。
例えば、2010年4月クールに放送され、反響の大きさからスペシャルドラマが2回も制作、さらには映画化もされた『怪物くん』(日本テレビ系)で、主人公・怪物くんを演じた時。藤子不二雄(A)によるギャグマンガが原作で、アニメ版のコミカルな雰囲気が印象的な作品であったため、実写化しても「サムくなる」だけではないか……と不安視する声も大きかった。しかしいざ放送がスタートすると、怪物くんの喜怒哀楽をこれでもかと表現する大野に絶賛の声が殺到した。
特に第4話で見せた、喧嘩別れしたお年寄りの死を知って怪物くんが号泣するシーンでは、大切な人を失った怪物くんの悲しみを全身全霊で表現。ネットでは「『怪物くん』でこんなに泣くなんて思わなかった」「史上最高の神回」と大野の演技に感動した視聴者が続出していた。
女優・山口智子に対し「演技中はわけわかんない違うことを考えている」と語った大野智エモーショナルな演技に定評がある大野だが、本人としては役柄に対して感情移入をしているわけではないようだ。
2020年3月28日放送の『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)にゲスト出演した山口智子が、女優としての悩みとして「本番に一番のテンションを持ってくるにはどうすればいいのか?」と嵐メンバーに質問したことがあった。
この『怪物くん』や、新人の死神役を演じた『死神くん』(テレビ朝日系)など、一般的に演技の難易度が高いといわれるマンガ実写化作品では、原作が持つユーモアを忘れず、実写化ならではのリアルさも取り入れて見事に演じ切る大野。一方で、シリアスな演技も抜群に上手い。
Jr.時代の『KYO TO KYO』での振る舞いを、少年隊・東山紀之が大絶賛2008年7月クールの主演ドラマ『魔王』(TBS系)で大野は、弟を殺した犯人への復讐を目論む天才弁護士・成瀬領を熱演。セリフなしのシーンでも、強く悲しい目つきに主人公の復讐心が透けて見えるように感じられた。
また、2012年4月クールの『鍵のかかった部屋』(フジテレビ系)では、防犯オタクの主人公・榎本径を演じたが、淡々としつつも、多少の偏屈さが感じられる演技で榎本の変わり者ぶりを表現。基本的には無表情ながらも、ちょっとした振る舞いや視線で榎本の心の動きをしっかりと伝えていた。
ちなみに大野は、ジャニーズJr.として活動していた16~17歳当時、京都で開催された舞台『ジャニーズ・ファンタジー KYO TO KYO』に出演。1日5公演もこなすハードスケジュールで、客入りが思わしくない日もあるなど、大野にとっては非常にツライ日々だったという。
しかし、同舞台に出演していた少年隊・東山紀之は、2015年1月10日放送の『嵐にしやがれ』に出演した際、この『ジャニーズ・ファンタジー KYO TO KYO』での大野の様子を振り返って「忍耐強さハンパない。
号泣演技中でも「わけわかんない違うことを考えている」という大野だが、あの豊かな演技力は、さまざまな努力や忍耐を重ねた上で得られたものなのかもしれない。
(文=編集部)