セックスレスや少子化が日本で叫ばれるようになってから久しい。実際、コンドームメーカー・相模ゴム工業が2013年に1万4100名を対象として行ったアンケート「ニッポンのセックス」では、「結婚相手・交際相手と世間一般に言うセックスレスだと思いますか?」という質問に対して「セックスレスだと思う」と回答したのは交際中の人で29.0%、既婚者では55.2%という結果に。
合計特殊出生率の低下は、長引く不況により各家庭に経済的余裕がなくなったことも一因であろうが、セックスレスに関しては「結婚後・出産後の妻を女性として見られなくなる夫」が増えてきているためとの指摘も多い。
●妻を神聖視してしまい、性欲減退
当編集部が一般既婚男女へアンケートを行ったところ、セックスレスや夫が妻を女性として見られなくなることに、「愛して結婚した人を女性扱いしないなんて最低」(33歳・女性・結婚歴9年・子1人)というように、多くの妻が不満を抱えているようだ。
だがもちろん夫側の言い分もあり、「“女性”として見られないことをそこまで否定的に捉えなくてもいいのでは? 家族の一員となるのだから、そういうこともある。むしろ“男女関係”以上のかけがえのない絆ができた結果なのだから、不満を持つなんておかしい」(36歳・男性・結婚歴3年・子1人)というような意見も少なくなかった。
夫婦間でのこうした考え方のズレについて、『幸せな離婚 自由に生きるって気持ちいい!』(生活文化出版)の著者で、「週刊新潮」(新潮社)などに連載も持つライター・吉田潮氏は次のように分析する。
「そのズレには、さまざまな背景があるのではないでしょうか。まず、『こんな太ったりシワの増えた女房は俺の性欲解消装置として不合格』といった身勝手な考え方で、セックスをしないという夫もいないとはいえないですが、そういう人は少数派だと思います。多くの旦那たちはそこまで高飛車ではないでしょう。ではどんな理由があるかといえば、実は繊細な男が多く、出産を経て“妻”から“母”になったパートナーを神聖な存在と見るようになり、とてもじゃないけれど自分の薄汚い性の対象になぞできない……という気持ちが芽生えているからじゃないでしょうか。そこまでの神聖視はしていなくとも、結婚・出産を経験したことで親近感が異様に高まってしまい、妻とのセックスに近親相姦的な感覚が生まれてしまっているというケースもあるのではないでしょうか」
確かにアンケートでも「家族として本心から愛していますが、その愛が深まるほど性の対象から離れていく感覚はありました」(30歳・男性・結婚歴8年・子2人)というような男性の回答が多かった。
●必ずしもセックスレスは“悪”ではない
その上で、吉田氏はこう提言する。
「『女として見てくれない』という妻の言葉にはいろいろな意味がありますから、夫は自分の妻がどういう意図でそう言っているか、思っているかを理解する必要があるでしょう。今までの話の流れだと、妻側の考え方が単純に“セックスをしない=女として見てくれない”という一辺倒の論理だけのように感じてしまう男性もいるかもしれませんが、セックスだけが女としてのアイデンティティを確立するものではないと思うのです。例えばセックスレスであっても、日常生活で夫が妻に結婚前と同じように接してあげていれば、妻は女としての価値を軽んじられているとは考えない場合もあるでしょう」
アンケートの中で、夫に不満を抱いていない妻の意見としては、「旦那は大切な存在ですが、正直私も“男”として見られなくなっているので、おあいこかな」(28歳・女性・結婚歴4年・子2人)といった回答もあったが、「出産後のセックスは3カ月に1回程度。でもうちの旦那は毎日ギュッと抱きしめてくれたりキスをしてくれたりするし、2人だけのデートにも誘ってくれるので不満はないです」(32歳・女性・結婚歴10年・子1人)という声も。
「個人的には結婚した相手とは死ぬまで男女の関係でありたい、セックスし続けたいと考えていますが、必ずしも“家族”という共同体においてセックスが必要不可欠というわけではないということです。実際、夜の営みをなくしたってうまくいっている家庭は多いですからね。ですが、やっぱり『3日に1回はセックスしてよ!』とお考えの奥さんもいるでしょうから、旦那さんは奥さんの持っている“女論”といいますか、“女の定義”みたいなものを知る努力をする必要はあるんでしょう。だから一度、セックスについて腹を割って話し合ったほうがいいのでしょうね。言葉にしないと伝わらない気持ちというのはありますので。その上で、『月に1回はやりましょう。手抜きなし、全力で』という夫婦のルールができてもいいですし、『セックスはお互いヨソでやる。ただしバレないようにヤッてくるのが鉄則』というルールができてもいいのではないですか。
現在の日本ではセックスレス夫婦の問題が多様なメディアで取り上げられているが、もし自身がそうであったとしても、過剰に危機感を抱く必要はないのかもしれない。
(文=昌谷大介/A4studio)
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