“国策会社”JDI、失墜した信用 疑惑まみれの上場&業績下方修正連発の末に巨額赤字

 中小型液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(以下、JDI)は、元三洋電機副社長の本間充氏を新設する会長兼最高経営責任者(CEO)に迎え、社長兼最高執行責任者(COO)には有賀修二取締役が昇格する。6月末の株主総会後に就任の予定。大塚周一社長兼COOは退任する。

 本間氏は三洋時代に「電池の顔」といわれた人物だ。1970年、甲南大学法学部を卒業後、三洋に入社し、2006年に取締役、08年に副社長になったが13年に退社した。三洋では電池事業を育成し、同事業が三洋の経営再建の柱になったのは、本間氏の手腕によるところが大きい。海外事業のトップとして車載用電池を日米欧の自動車メーカーに売り込み、08年に独フォルクスワーゲン(VW)と車載用電池の共同開発にこぎ着けたことは、今でも高く評価されている。

 会社が苦しい中、女子バドミントン部の部長として、「オグシオ」の愛称で知られる小椋久美子、潮田玲子の2選手を北京五輪へ送り出し、全社を鼓舞した親分肌でもある。電池工業会の会長を、07年から三洋を辞める13年まで務めた。

 今回JDI社長に就任する有賀氏は、セイコーエプソン出身のエンジニアだ。83年に東京農工大学大学院工学研究科修了後に諏訪精工舎(現セイコーエプソン)に入社。03年に取締役、05年にエプソンと三洋の中小型液晶の合弁会社、三洋エプソンイメージングデバイスの社長、11年からソニーの中小型液晶子会社、ソニーモバイルディスプレイの社長を務めた。

「もう新幹線は2社(日立・東芝)を乗せて東京駅を発車した。まもなく品川駅で途中停車する。ここでソニーが乗車しなければ二度と乗れない」

 品川駅はソニー本社の最寄り駅だ。政府系ファンド、産業革新機構幹部の、新幹線になぞらえたソニーへの猛アタックに敏感に反応したのが、当時ソニーモバイルディスプレイ社長を務めていた有賀氏だった。液晶事業の厳しさを知っていた有賀氏は、「3社の統合しか生き残る道はない」と確信。親会社のソニー本社を説得したという。

 12年4月、産業革新機構が2000億円を出資する国策会社として、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶事業を統合してJDIが発足。有賀氏はJDIの執行役員に就任、13年に取締役になった。主力のスマートフォン(スマホ)向け事業は、米アップルとのビジネスは大塚社長、韓国サムスン電子は有賀取締役の担当だった。これからは有賀氏がアップルをカバーする。

●上場不信の“先駆け”

 現在、新規上場するベンチャー企業への不信が渦巻いている。昨年12月に東証1部へ上場したばかりのスマホ向けゲーム開発会社gumiが、上場からわずか2カ月半後に営業赤字に転落したことが引き金となった。そんなgumiに先立ち、JDIもまた14年3月19日に東証1部へ上場した際、市場関係者から多くの批判を呼んだ。初値は769円と公募価格900円を15%も下回り、その後も失速に歯止めがかからない。上場来安値は14年10月の311円。今年は1月9日に年初来安値の350円をつけ、5月11日の終値は480円だ。現在でも公開価格の半値以下である。

 上場1カ月後の14年4月、14年3月期の決算見通しを引き下げた。つまり上場直後に決算を下方修正したのだ。さらに同年10月15日には15年3月期の決算見通しについて、増益から一転100億円の最終赤字に下方修正した。上場後の業績予想下方修正は2度に及び、株式市場からは批判が浴びせられた。

 そもそもJDIの発足当初から、大塚社長の経営手腕には疑問符が投げかけられていた。大塚氏は米テキサス・インスツルメンツ(TI)の工場長や、ソニーのシステムデバイスカンパニープレジデントを務め、TI時代の先輩であるエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)の坂本幸雄社長(当時)に誘われ同社に転じた。坂本氏の側近として日本唯一のDRAM専業メーカーの最高執行責任者(COO)に上り詰めた。だが、エルピーダは12年2月、会社更生法を申請して倒産した。

 業界に通じていることを買われて大塚氏はJDIの社長に就任したため、「JDIはエルピーダの二の舞いになるのではないか、と冷ややかに見られていた」(市場筋)。そしてJDIは業績下方修正を繰り返し、市場の信頼を失った。

●赤字転落

 JDIの15年3月期の連結決算の売上高は前期比25%増の7693億円、営業利益は81%減の51億円(前期は276億円の黒字)、最終損益は122億円の赤字(同339億円の黒字)となった。中国のスマホ向け市場が拡大したことで増収になったが、競争激化による液晶価格の下落や埼玉県・深谷工場の閉鎖に伴う損失計上が響いた。期初には268億円の最終黒字を予想していたが、一転して巨額な赤字に転落した。

 JDIの売り上げの8割はスマホ向け。韓国サムスンディスプレイが中小型高精細液晶を中国で年間数千万枚単位で外販する計画を打ち出しているため、「今後1年間で(液晶価格は)2割程度下がる」とアナリストは見ている。中国経済は明らかに減速しており、JDIの思惑通り売り上げが推移するかどうかは不透明だ。

 JDIは液晶市場の需要変動が激しいことから、16年3月期から年間業績予想の開示を見送ることにした。ただ、辞任する大塚社長は「連結売上高1兆円は見えてきた」と強気の発言を5月13日の決算発表でした。唯一、公表した数字は15年4~6月の第1四半期の営業利益で20億円という予想。7月以降は「四半期ごとに100億円規模の利益を出せる」(西康宏執行役員)とし、期末に初の配当を実施する考えだという。

 だが、この第1四半期の予想に関しても、外資系証券会社アナリストは「見栄えが悪い」と辛口の評価を下している。

●今後の成長を占うカギ

 調査会社ディスプレイサーチの調査によると、14年の中小型液晶パネルの世界シェアトップ3は韓国LGディスプレー(18.1%)、JDI(16.0%)、シャープ(15.6%)。中小型液晶業界は中国勢、台湾勢が台頭してきており、乱売合戦が激しい。

 そんな市場環境の中で、JDIが価格形成で主導権を握り収益を上げるためには、シェアを30%程度にまで高める必要がある。そのためアップルの出資により石川県に新工場を建設することを決めた。アップルや中国スマホメーカーとの取引を拡大するためだ。

 新たに車載市場を拡大していく。自動車のIT化で伸びが期待できる車載用ディスプレイ市場を開拓して高いシェアを確保できるかどうかが、今後の成長を占うカギとなる。

 三洋で車載用電池を欧米自動車メーカーに売り込んだ実績を持つ、本間新CEOの営業力に期待がかかる。
(文=編集部)

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