8月1日から9日にかけて中国で行われたサッカー・EAFF東アジアカップ2015で、男子日本代表は史上初の最下位に沈みました。北朝鮮に1対2の逆転負けを喫した後は、韓国代表、中国代表と1対1の引き分けに終わり、サッカーファンはさぞやストレスがたまっているのではないでしょうか。



 小学生時代、リフティングが10回できたことに大喜びしていた筆者にサッカーのことなど語れるわけはないのですが、それでも、日本代表選手より年を重ねた人生の先輩として、一言申し上げたいと思います。

 日本代表の選手が生まれながらの才能に恵まれていることは、間違いないでしょう。しかしながら、韓国や北朝鮮に勝てないのはなぜなのでしょうか? サッカーに関する技術、フィジカル、戦術、準備期間などによるところが大きいのだと思いますが、素人の筆者にはまったくわかりません。しかし、韓国や北朝鮮より日本の選手のほうが明らかにかっこよく、小ぎれいなことはわかりました。

 物事に本気で取り組み、心から集中する。それは、言い換えれば「それ以外のことはどうでもいい」という状況になることではないでしょうか。「昭和生まれの精神論」といわれるかもしれませんが、北朝鮮戦の場合、1点差での逆転負けとなると、勝利に対する執念の差が影響したことは否定できないと思います。

●現代日本人の特徴「ジェントルマン」

 東アジアカップの敗戦の背景には、豊かさに甘えてきた現代日本人の特徴が浮かび上がってきます。例えば、筆者は実務家を経て教壇に立つようになり15年が過ぎますが、この間に学生の気質はずいぶん変わったように思います。良くも悪くも、ジェントルマン(紳士的)になった印象を強く受けるのです。

 良い面としては、比較的仲良しな上にポジティブ思考で、仲間同士で和気あいあいとしていることが挙げられます。しかし、その半面「何がなんでも結果を残すぞ!」「他人とぶつかっても自分の意見を通すぞ!」といった執念やハングリー精神が大きく欠如しているように感じます。


●「視聴者第一」になりきれない日本のテレビドラマ

 こうした傾向は、若者に限ったことではありません。例えば、日本のテレビドラマは視聴率の不振にあえいでいますが、これについても、豊かさに甘えてきた日本人の気質が関係しているのではないでしょうか?

 これは、テレビ関係者から同意を得たので間違いないと思いますが、日本のドラマの低迷は、制作する側のプライド、いわば“かっこつけ”によるところが大きいようです。

 韓国のドラマは、視聴者をワクワクさせるためなら手段を選びません。例えば、主人公が突然難病になったものの、次の日にはすっかり元気になってしまうようなシーンも日常茶飯事です。

 これは、日本のテレビマンからすると、「いかにもベタで、安っぽい」と感じることでしょう。しかし、あくまで素人の視聴者にとっては、ベタこそが面白い場合もあるのです。

●ハングリーさに欠ける日本のメーカー

 今、日本の電機メーカーは韓国のサムスン電子の後塵を拝しています。技術力では決して負けていないと思いますが、韓国には「新興国で大々的にプロモーションを行う」といった、リスクを恐れない姿勢があるように感じます。

 当然のことながら、豊かになるとハングリーさは失われてしまいます。そんな中、これからの日本はスポーツや企業経営など、ありとあらゆる分野でハングリー精神を生む仕組みづくりが重要になってくると思います。

 一時、アメリカ発の成果主義による人事制度がブームになりましたが、「日本の風土には適さない」ということで、あまり広まらなかった感があります。しかし、今一度、日本用にカスタマイズしたスタイルで導入を検討してもいいのかもしれません。

(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

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