『GOOD LUCK!!』(2003年放送、TBS系、平均視聴率 30.6%<ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同>)、『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』(00年放送、同、32.3%)、『ラブジェネレーション』(1997年放送、フジテレビ系、30.8%)など、数多くの全話平均視聴率30%超えの連続テレビドラマで主演を務めてきた木村拓哉(SMAP)。
木村主演で昨年放送された『HERO』(フジ系)も21.3%と好成績を残したのは記憶に新しいところだ。
そんな木村の“恋愛モノ”主演ドラマの代表作のひとつといっても過言ではないのが、1996年放送の『ロングバケーション』(フジ系)だろう。
実力はありながらも音楽教室の講師としてくすぶっていたピアニスト・瀬名秀俊(木村)と、結婚式当日に婚約相手に逃げられた落ち目のモデル・葉山南(山口智子)が織りなすラブストーリーである同ドラマ。瀬名と南を中心に、瀬名の後輩で片思いの相手である奥沢涼子(松たか子)や南の弟・葉山真二(竹野内豊)、南の後輩モデル・小石川桃子(稲森いずみ)、真二の恋人・氷室ルミ子(りょう)といった主要人物たちの複雑に絡み合う恋模様を描き、社会現象を巻き起こした恋愛ドラマの金字塔的作品である。
山口智子とのダブル主演だった本作は、平均視聴率 29.6%と30%の大台には届かなかったものの、「木村拓哉=視聴率王」という地位を確固たるものにした作品であることは間違いない。
今回はそんな『ロンバケ』を、「2015年現在の視点」で改めて評するかたちで集めた一般視聴者たちのコメントを紹介していきたい。
●今観るほうがリアリティある?
まず、当時高校生だったという30代女性の意見から。
「昔好きだったので、つい最近、全話観なおしました。ただ、すごくハマっていたドラマだったので、『素敵だった』という感想もだいぶ“思い出補正”がかかっているのではないかという不安もありました。しかし、それは杞憂でしたね。約20年も前のドラマなのに、あまり古臭さを感じなかったのです。昔のドラマだとどうしても登場人物のヘアスタイルやメイクなどに時代を感じてしまいますが、キムタクや竹野内といった男性陣だけでなく、山口や稲森もほとんど違和感なく観ることができましたね。唯一、松たか子のルックスはイモっぽい古めかしい印象でしたが(笑)」
同じく最近DVDで全話観返したという40代女性も同様の意見だ。
「古さを感じないのがすごいなと。瀬名が南の婚約者とルームメイトだったという設定で、物語途中からは瀬名と真二がルームメイトになるのですが、1996年ってまだそれほどルームシェアという価値観が浸透していない時代でしたよね。ですので、当時は『ずいぶんオシャレなライフスタイルの人たちだな。やっぱりしょせんはドラマの中の世界よね』という感じで観ていたのです。だけど今の時代、ルームシェアっていう概念が日本でも定着しています。むしろ今観ると“自然な設定”に見えて、ドラマのリアリティが増している気がしました」
一方、男性からの視点ではどうだろうか。放送当時、大学生だったという30代男性は次のように語る。
「キムタク自体は別に好きでも嫌いでもないですが、『ロンバケ』の彼はなかなか人間臭くていいキャラだなと感じました。『HERO』とか『GOOD LUCK!!』がまさにいい例ですが、キムタクのドラマは、基本的に“360度隙のないスーパーイケメン”として彼を撮る作品が多いじゃないですか。だけど『ロンバケ』はちょっと違っていて。もちろんイケメンはイケメンなのですが、瀬名は頼りない男として描かれてるでしょ。さらにいうと、好きだった涼子ちゃんをワイルド肉食系の真二に寝取られるあたりは、痛々しいほど情けないんですよね。
●数多くの「素敵すぎる」シーン
日本ドラマ史上屈指の恋愛ドラマだけあり、名シーンが多いのも本作の特徴のため、思い入れの強いシーンを挙げる人も多かった。
「キムタクと山口智子がマンションの3階からスーパーボールを落として、それを再びキャッチしてキャッキャッとはしゃぐシーン(1話)は、私の中で全ドラマNO.1の名シーン。何気ないシーンだけど、素敵すぎるシーンですね」(40代女性)
「『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~』(13年放送、TBS系、12.8%)に主演したときもキムタクの黒縁メガネ姿が話題になりましたが、実は『ロンバケ』で黒縁メガネ姿は披露してるんですよね。あのひ弱なインテリっぽい雰囲気は、今のキムタクでは出せないと思います」(20代男性)
「6話のラストで瀬名が『ねぇ、キスしよっか?』と言って、南が『いーよー』って軽いノリで答えて、キスをするんですよ。あの南の『いーよー』は今でも耳に残っています」(40代女性)
「物語後半、瀬名と真二がルームシェアするのですが、二人の奇妙な友情関係が結構好きです。瀬名は真二に彼女を取られた後なんだけど、変に妬みとかがなくて、冗談も言い合うような関係になっていて。いい距離感の男の友情という感じでした」(40代男性)
「やっぱり最終回は感動でした。前話(10話)で屋上花火チューのシーンで終わって、最終話は翌朝、2人がベッドで裸でいるシーンから始まります。真二に見つからないようにドタバタしてたのには笑いました。そして、ラストに瀬名と南が『みなみー!!』『せなー!!』って絶叫し合うところからの、瀬名の『一緒にボストン行こう?』『早く言わないとチューするよ?』にはシビれました」(50代女性)
●奇跡的な時期に撮影された?
では、なぜ『ロンバケ』は今なお、人々の心を動かすのだろうか。週刊誌などに寄稿する芸能ライターはこう分析する。
「結論からいうと、“最高のタイミングを切り取ったドラマだった”ということでしょうか。
木村と山口、それぞれが得意とする演技の最高に脂が乗っている短い時期に、その演技の妙を最高に引き出すことのできる役と物語に出会えたということなのかもしれない。
現在、『ロンバケ』と同枠であるフジ月9では、山下智久と石原さとみがダブル主演を務める恋愛ドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』が放映されているが、10月12日の初回視聴率は12.6%で往時と比べると寂しい数字であった。ドラマ不況が叫ばれる昨今、木村と山口の最高のタイミングを切り取った『ロンバケ』を超える恋愛ドラマの誕生を期待するのは、酷な話なのだろうか。
(文=昌谷大介/A4studio)