鳥取に引っ越ししてから数カ月が過ぎた。いまだに砂丘には行っていない。
というわけで、数カ月間で感じた鳥取についてツラツラと書き綴ってみたい。東京人が感じた鳥取は、いい意味でも悪い意味でもカオスであった。
人口が日本一少ない県というだけあり、駅前はほとんど人が歩いていない。鳥取人は敬語で話していると、「デス、デス」と連呼してくる。デス? 死? デスとは何ぞやと聞くと、「そうです」の「です」を語として大事なほうの「そう」を取ったためだとか。「そう、そう」ではないのである。いまだに「です、です」が「Death(死)、Death(死)」に聞こえてくる。ロッカーと話しているようだ。
フォローするわけではないが、人は優しい。人口が少ないため、一人ひとりにしっかりと接してくれる感じがする。私も県庁に手続きへ行ったおり、なぜか、うまい梨が買える場所などを紹介してくれた。余談だがいま、鳥取が推しているのは「二十世紀」ではなく「新甘泉」と書いて「しんかんせん」という種類の、アイデンティティがあるのかないのかよくわからないネーミングの梨らしい。食べてみると幸水よりも甘く、口の中が梨汁で溢れるぐらい水分を多く含んでいるので、これは結構おススメかも。
鳥取駅前には一応、ホテルニューオータニと大丸がある。しかし、ここの大丸、大丸Dカードが使えず、なんとデパートのフランチャイズ店だったのだ。鳥取県民に「30メートルで終わります」と言われて行ってみたが、確かにデパートではなくスーパーの感覚である。
建物でいうと、鳥取砂丘コナン空港もカオススポットのひとつ。国内線(いまや羽田便のみ)の横に国際線のターミナルが隣接しているのだが、こちらチャーター便専用のためまったく機能しておらず、ゴースト空港と化している。普通の感覚では、「国内線ターミナルだけでいいのでは?」と思うのだが、このムダ遣いのトリックはいまだに解けていない。
●鳥取砂丘が一部緑化?
なにより一番の鳥取らしさは放送局の少なさであろう。
ついでに全国区から忘れ去られているのは、生放送という枠組みだけではない。なんと、生活には欠かせない天気予報までもが全国版ニュースの場合、伝えられないのだ。番組最後に天気予報を示す全国の天気図が示されると、大阪……飛んで、広島、福岡。おいおい! 最寄りが大阪か広島って、これだけ距離があると天気が変わると気象予報士は思わないのだろうか。それも山陰と山陽で山を挟んでますが、大丈夫ですか、と疑問の声をテレビ局に投書してみたくなる。
最後に鳥取の、ある真実をお伝えしよう。鳥取といえば、鳥取砂丘が有名だが、実は……他県にも砂丘は存在しているのだ。青森の自衛隊の軍事試験場内にあるため、民間人は立ち入りできないのだが、こちらのほうが日本一大きいという。
(文=中西美穂)