風邪は感冒ともいう。英語では「Cold」だから、「冷え」が原因して発熱することは明らかである。

よって、寒い冬に多発するし夏でも冷房の効いた部屋に長時間滞在をしていると、いわゆる「夏風邪」を引く。

「風邪を引く」という言葉からも分かるように、体内に「冷え」を引き込み、それにより代謝と免疫力を落とす。1℃の体温低下で代謝が約12%、免疫力が約30%減衰するとされている。よって代謝低下で発生した体内の不調和を「咳を出す」「下痢を出す」「熱を出す」などして老廃物を出すことで治そうとする。

 老廃物を「出す」最大の力は「熱を出す」ことである。風邪を引いて熱が出ると西洋医学では解熱剤が処方され、「2次感染による気管支炎や肺炎の予防に」と、抗生物質や消炎剤も併せて処方されることが少なくない。

 しかし、漢方医学では、のど痛、せき、発熱などを伴う風邪の初期には「葛根湯」が処方される。葛の根、生姜、大葉、桂枝(シナモン)など、体を温める成分から成る「葛根湯」を熱い湯などで温服すると、「30分もする頃から発汗が始まり、スーっと風邪症状が抜けていく」ことが多い。

「冷え」が原因で起こる「風邪」を、体を温めることによって治療せしめるのである。さらに、発熱で体内の老廃物が排出されることも、風邪を治す原動力となる。民間療法にも、日本では「日本酒の熱燗に卵一個を入れて飲み就寝する」というものがある。

 ヨーロッパでは「赤ワインを温めて飲む」「ウイスキーのお湯割りにレモン汁を入れて飲む」など、やはり体を温めることで風邪に対処する。


 38.5℃以上の発熱があり、咳や痰がひどい時には、一時的に解熱剤や抗生物質で治療する必要があるが、風邪の引き始めは、アルコールに強い人は、上記の方法で対処するとよい。

●生姜の効用

 逆にアルコールに弱い人向けには、「熱い味噌汁にすりおろし生姜と刻んだネギを入れて飲み、すぐ就寝する」「熱い紅茶に生姜をすりおろして、ハチミツや黒糖を入れて飲む」という方法がある。

 また、下痢や吐気、腹痛などの症状を伴う風邪には、湯飲み茶碗に梅干しを入れて、箸でつついてグチャグチャにして種を取り出す。そこにすりおろし生姜を5~10滴、醤油小~大さじ1杯を加え、熱い番茶を湯のみ一杯に注いだもの(梅番茶剤)を1日3~4杯飲むとよい。

「生姜」に含まれるジンゲロール、ジンゲロン、ショウガオールなどの辛味成分は体を温め、白血球の働きを強くして、免疫力が高まるし、殺菌作用も有する。また、緑茶や紅茶に含まれる渋み成分のカテキンには強力な殺菌作用がある。

 よって、カップ1杯の熱い紅茶に、すりおろし生姜(市販の粉生姜でも可)と黒糖かハチミツを、本人が旨いと感じられる量を入れてつくる「生姜紅茶」は、風邪の“特効薬”となる。

 とくに、紅茶の紅い成分は「テアフラビン」といい「インフルエンザウイルス」を殺すともいわれているので、インフルエンザ予防にもなる。この生姜紅茶を毎日3~4杯、「風邪予防」「インフルエンザ予防」のために愛用されるのがよい。

 筆者が幼少時は風邪を引くと「布団を頭からかぶって、汗をだして治すように」親から教えられたものだ。よって、風邪の引き始めに「今、サウナに入って汗を出すと、気分がよくなるだろうな、風邪が抜ける気がする」と思われる方は、やってみられるとよい。

 なお、入浴やサウナ浴をすることを本能的に嫌と感じられたら、やらないことだ。

(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)

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