3月31日、『おかあさんといっしょ』(NHK Eテレ)の20代目「うたのおねえさん」を務めていた三谷たくみ氏が番組を卒業し、4月から21代目の小野あつこ氏にバトンタッチした。

 同番組は、テレビ黎明期の1959年に始まった歴史ある幼児向け教養番組で、うたのおねえさんは「うたのおにいさん」「たいそうのおにいさん」と並ぶ番組の顔として知られている。



 なかでも、先代の三谷氏は歴代最長となる8年間にわたって務めたことで、交代が発表された時は大きな話題となった。番組卒業後の現在も、幼児とその親の間では「たくみロス」なる現象が起きているという。

 そして、同時に話題となったのが「うたのおねえさんの掟」なるものの存在だ。歴代のうたのおねえさんには、日々の生活から恋愛、結婚に至るまで、契約時にNHKから課せられた数々の“掟”があり、その厳しさはアイドル以上とも噂されている。はたして、うたのおねえさんの掟は本当に存在するのだろうか。

●謎の「掟」について、歴代おねえさんやNHKを直撃!

 その真偽を確かめるべく、まず、初代を務めた眞理ヨシコ氏に取材を申し込んだが、「番組の裏側という内容は、本人のこれまでの活動と関係がない」(所属事務所)とNGだった。次に、結婚を機に番組を卒業した16代目の神崎ゆう子氏の事務所にも聞いてみたが、こちらも「(契約は)NHKとの間で交わされたものなので、それを公にすることはできない」と口を閉ざす。

 そこで、彼女たちに掟を課しているとされる当のNHKを直撃すると、こんな答えが返ってきた。

「うたのおねえさんについて、いろいろ言われていることは知っていますが、外に向けてお話はしていないので、“掟”の有無についてもお答えできません。大変申し訳ありませんが、ご協力しづらいですね……」(『おかあさんといっしょ』担当者)

 しかも、番組担当者は受け答えしながら、なぜか電話口で笑いをこらえている。やはり、掟は噂にすぎないのだろうか。

●スポーツや車の運転もNG!

 しかし、さらに取材を進めると、約2年前にうたのおねえさんの1人がテレビ番組で掟について証言していたことがわかった。
三谷氏の前任者で19代目を務めたはいだしょうこ氏が、2014年に『まさかのタメ年トークバラエティ!ビックラコイタ箱』(日本テレビ系)に出演した際、掟について赤裸々に語っていたのである。

 それによれば、うたのおねえさんには、やはりさまざまな掟があるという。例えば、ファッションやネイルの場合、派手なものは禁止とされ、「立ち食い」「信号無視」「NHK以外のテレビ出演」なども禁止されている。

 これらの禁止事項は、うたのおねえさんのキャラクターイメージを守るとともに、幼児向け番組であることから、子供たちの規範となるために設けられているという。

 そのため、番組のイメージに大きく影響する恋愛スキャンダルはもってのほかで、うたのおねえさんは「恋愛」「結婚」「妊娠」も禁じられている。3月はじめ、8年ぶりの交代が発表された直後に三谷氏の「濃厚車チュー」が週刊誌で報じられたが、このスキャンダルによって、「卒業の理由は、恋愛禁止の掟を破ったから」といった憶測も飛び交うこととなった。

 さらに、うたのおねえさんは1人しかおらず、代役を立てられないことから、日常生活に関する禁止事項も多いという。飛行機が欠航して収録に間に合わないなどのトラブルを避けるため、海外旅行が禁じられているほか、けがを防止する意味から、スポーツや自動車の運転も禁止されている。

 4月13日、9代目うたのおにいさんの杉田光央容疑者が覚せい剤所持容疑で逮捕される事件が起きたが、10代目を務めた今井ゆうぞう氏は「歌舞伎町を歩かない」という掟があったことを、番組卒業後に告白している。

 服装や化粧から、日常生活、恋愛、結婚、外出先まで制限されるのだから、うたのおねえさんの掟は、まさにアイドルグループ以上といってもいいだろう。

●倍率600倍の超難関、休みなしのうたのおねえさん

 そもそも、こういった厳しい掟以前に、うたのおねえさんになること自体が超難関といわれる。オーディション情報は、特定の音楽大学や有名劇団だけにアナウンスされ、その倍率はおよそ600倍。


 選考基準は不明だが、「うた」のおねえさんである以上、かなり高いレベルの歌唱力が要求されるのは間違いない。ルックスに関しても、歴代のうたのおねえさんのバストが控えめなサイズであることから、選考基準のひとつに「貧乳」があるとも噂されている。

 この超難関を突破して、晴れてうたのおねえさんになったとしても、今度は最初の3カ月で1000曲の歌を覚え、月曜から水曜は番組収録、木曜は翌週のリハーサル、金曜には歌の収録、土日は地方でコンサート……と、超ハードスケジュールが待っている。

 日常生活や恋愛が制限される掟があろうとなかろうと、うたのおねえさんには、最初からプライベートな時間はほとんど存在しないのである。歴史ある幼児向け番組の看板キャラクターとはいえ、なんとも大変な仕事というしかない。
(文=谷口京子/清談社)

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