いよいよ来週に迫ったセレクトセール。国内最大規模で行われるサラブレッドの競りとして、今や国内だけでなく海外の関係者からも注目される日本競馬界の一大イベントだ。

以前は日本の金持ち馬主が経済力をアピールする場だったが、一部を除いて日本馬主の購買力が低下したこともあり、ここ数年は海外への営業が目立つようになった。

 そしてご存じのように日本馬の海外での活躍はめざましく、今年海外G1レースを勝利したエイシンヒカリ、リアルスティールの父親であるディープインパクト産駒は大きな注目を集めている。今年のセレクトセールに上場されるディープインパクト産駒は37頭。この中で10頭ほどが「億」を超える金額で落札されるとみられている。その「億候補」を予想してみよう。

■セレクトセール注目のディープインパクト産駒

・1日目 47番
クラウウィズジョイの2015
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牝馬だが兄は重賞3勝のサトノノブレス。競合するだろうが兄を所有する里見治氏が1億円超えで落札濃厚。

・1日目 71番
ギャビーズゴールデンギャルの2015
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母ギャビーズゴールデンギャルはアメリカでG1レース2勝。同じディープインパクト産駒の兄(現2歳)の評価も高く同馬も億超えが濃厚。

・1日目 107番
オーサムフェザーの2015
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初日目玉の一頭で外国人馬主向けの血統馬。母オーサムフェザーはBCジュヴェナイルフィリーズを勝つなどアメリカ2歳牝馬チャンピオンで11戦10勝。ノーザンファームの吉田勝巳氏が繁殖牝馬として190万ドルで落札したほど。
2億円から3億円で決着?

・1日目 116番
ゼラスキャットの2015
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ディープインパクトとストームキャットの配合は日本ダービー馬キズナと同じ。1億円超え濃厚。

・1日目 134番
ベネンシアドールの2015
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姉は2010年のセレクトセールにて3900万円で落札されたデニムアンドルビー(重賞2勝・ジャパンカップ2着、宝塚記念2着)。同じディープインパクト産駒で今度は牡馬なら評価は急上昇。1億5000万円以上になりそうだが、姉同様に金子真人氏が落札するかどうかに焦点が移る。

・1日目 156番
ドバイマジェスティーの2015
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初日目玉の一頭。母ドバイマジェスティーはBCフィリー&メアスプリントを勝つなど12勝。2010年エクリプス賞最優秀短距離牝馬。2億円前後で決着?

・2日目 352番
セリメーヌの2016
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母セリメーヌはフランスの重賞を2勝。クラシックを意識した配合で2日目最初の1億円超えとなりそう。

・2日目 3番
カンビーナの2016
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母カンビーナはアメリカンオークスなど重賞3勝。この馬もクラシックを意識した配合で1億円超えになりそうだ。


・2日目 389番
マルペンサの2016
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2日目の目玉で注目度はナンバー1。兄は今年の皐月賞3着、東京優駿2着のサトノダイヤモンド。その兄は2013年のセレクトセールで2億3000万円だった馬。3億円前後で兄同様に里見治氏が落札濃厚か。

・2日目 409番
リトルブックの2016
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母リトルブックは牝馬三冠・ジャパンカップ2勝などジェンティルドンナの近親。社台グループの生産馬ではないが1億円超えが期待できる。

・2日目 485番
マンデラの2016
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兄は重賞2勝、皐月賞2着のワールドエース。セレクトセール最後のディープインパクト産駒ということもあり1億円超えは濃厚だ。

 以上が注目のディープインパクト産駒だ。アメリカ、ヨーロッパなど海外の良血馬との産駒や兄姉が活躍している産駒など非常にバラエティに富んでおり、どの馬も高い評価となりそうだ。

 このセレクトセールはある牧場関係者に言わせると

「通常なら1000万円の価値の馬が2000万円で売れる」

と言われている。これはそもそもセレクトセールに上場させるには日本競走馬協会スタッフによる厳しい血統と馬体の審査があり、上場が認められたというだけで高い評価があるということだからだ。


 さらに1億円超えの馬がポンポン飛び出すような雰囲気が他の馬の価格にも相乗効果を与え、さらに1億円の馬を落札できなかったような馬主が他のお手頃な数千万円の馬を落札するという流れがあるようだ。さらにセレクトセールでより上場馬を良く見せるために牧場関係者は

・暴れないように鎮静剤などの注射を打つ

・栄養剤で肌のつやを良く見せる

 といったことを行ってきたという。つまり普段の姿を見せているのではなく、セレクトセールに向けて一時的に良く見せているというのだ。実際に落札した馬主が後日牧場で見てみると

「セレクトセールでは落ち着いていたのに凄い気性が悪い」

 なんて話もあるという。さらに高額馬の誕生にもカラクリがある。その一つが落札する気のない内輪関係者による値段のつり上げ、そして半持ちという手法だ。

 この半持ちは例えば社台グループの生産馬を1億円で落札した場合、その半額5000万円を社台グループが負担すること。さらに預託料などの諸経費も半額となるため多くの馬主が利用しているという。

 仮に2億円になったとしても実際に落札者が負担するのは1億円のみであり、1億円超え馬続出でセレクトセールの凄さをアピールしたい牧場関係者にとっては以前から使われているお馴染みの手法。セレクトセールで●億円で落札!といって盛り上がっても実際はこういう半持ちという事情がある。ただしすべての馬がそういうわけではなく、全額落札者が負担するケースもあるようだ。

 なおセールはグリーンチャンネルや日本競走馬協会のホームページにて生中継が行われる。
異次元の空間ともいえる歴史的な瞬間をぜひライブで見ていただきたい。

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