「車が欲しい。池田さんなら、なんとかなるんじゃないんですか」――。



 北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹選手がベースボール・マガジン社(以下、ベーマガ)の池田哲雄社長から自動車や不動産の利益供与を受けていたことが、7月14日発売の「週刊文春」(文藝春秋)で報じられた。

 斎藤選手は冒頭のようなセリフで、当初は2000万円クラスのポルシェの最高級車・カイエンを要求したという。結局、800万円クラスのポルシェ・マカンに落ち着き、昨夏頃に納車。ベーマガの関連会社がリースしたものを又貸しするかたちで、斎藤選手が使用しているという。

 斎藤選手は池田社長から財布やバッグなどをプレゼントされていたほか、都内のマンションを無償提供されていたこともあるようだ。この一連の利益供与について、法的な問題はないのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役・弁護士の山岸純氏に聞いた。

「以前、日本テレビの上重聡アナウンサーが、出演番組のスポンサーであるABCマートの創業者から1億7000万円の融資を受けたり、高級車を使わせてもらったりしていたことが発覚しましたが、その時と同様に、高級マンションを提供されようが、それが利益供与とされようが、民間同士の話なので特に問題はありません。

『野球協約』も、野球賭博関係者や暴力団関係者からの利益供与は禁止していますが(第180条)、一般人や企業からの利益供与は禁止されていません。もっとも、ポルシェについては若干の問題が生じる可能性もあります。

 斎藤選手は、ベーマガの関連会社が所有(リース)する自動車を『日常的』に使用しているとのことなので、道路運送車両法が規定する『自動車の使用者』に変更があったと考えられます。この場合、15日以内に各種の登録変更手続きを行う必要があり、自動車の保管場所の確保等に関する法律(いわゆる『車庫法』)に基づいて『保管場所の変更』も必要になると考えられます。


 もし、それらを怠っていれば、罰金が科せられたり、特に車庫法違反の場合は『3カ月以下の懲役または20万円以下の罰金』という重い刑罰が科せられることもあります。また、他人の自動車に乗っているのであれば、保険の付帯状況も気になるところです」(山岸氏)

●5年で14勝、期待はずれの斎藤佑樹

 2006年、早稲田実業学校高等部時代に甲子園で優勝して時の人となった斎藤選手。早稲田大学進学後に10年のドラフト1位でプロ入りするが、その後は右肩のケガという不運もあり、5年間で14勝と期待に応えているとはいいがたい。今季は、二度目の先発となった7月13日のオリックス・バファローズ戦で5回無失点と好投したが、昨年9月から未勝利が続いている。

 プロ野球選手への金品授受をめぐり、過去には複数の選手が登板禁止や罰金、厳重注意などの処分を受けている。今後、日本野球機構および日本ハムから、なんらかの処分が下されることはあるのだろうか。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役・弁護士)

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