J3に所属するグルージャ盛岡は2日、クラブを運営する『株式会社いわてアスリートクラブ』の平川智也・前代表取締役副社長が、会社資金を私的流用していたと公式サイトで発表した。なお、平川氏は先月辞任している。
グルージャ盛岡によると、平川氏は今年春から夏に掛けての5カ月間で、会社資金約2400万円を私的流用していたようだ。クラブ業績が悪化する中、一向に資金繰りが改善しなかったために財務内容を精査したところ、今回の私的流用が発覚したという。
『株式会社いわてアスリートクラブ』が運営するグルージャ盛岡は現在、J3でも13位と苦戦している。本件は、そんな苦境に立たされているクラブの資金を私的に使い込むという、あまりに心無い事案だ。
しかし、それでも大きな騒ぎになっていないのは、本件があまり有名でないJ3クラブの事案であることと共に、昨今のサッカー界が「不正な金の動き」に溢れているからに他ならない。
今回と同じJリーグ、つまりは日本サッカー協会傘下では、2013年にJ1のFC東京を運営する『東京フットボールクラブ株式会社』の経理担当部長による経費の不正流用が発覚。私的な遊興費を交際費として請求するなど、総額約2300万円を不正に流用していた。
だが、FC東京は謝罪会見を開いただけで「本人が全額弁済し、社会的制裁も受けているため」という理由で刑事告訴すらしていない。日本サッカー協会からも厳重注意だけと、極めて軽い処分に終わっている。
従って、今回のグルージャ盛岡の件に関しても、これと似たような処置が取られることが予想される。
なんとも社会的常識からは大きく逸脱したような甘い処分であると述べざるを得ないが、Jリーグに所属する各球団の運営状況に精通した識者からは、これらが「氷山の一角に過ぎない」といった指摘もある。
昨今、プロ野球界の盟主・巨人を中心に『野球賭博問題』を巡って、プロ野球界の不透明な金の流れが明るみに出たが、プロ野球は日本のサッカー界と比較しても遥かに歴史があり、セ・パ両リーグでも12球団しか存在しない。
ところがJリーグはJ1、J2、J3まで存在し、その数は合計53クラブ。プロ野球球団の約5倍に相当し、日本サッカー協会が完璧に全体をカバーすることが極めて困難な状況であることは明らかだ。
その分、各球団の管理能力が問われるが先述した通り、とても健全に機能しているとは言い難い状況。これから似たような事案が頻繁に発生しても、なんら不思議はないだろう。
だが、それでも世界に目を向ければ日本のサッカー界はまだまだ健全な方なのかもしれない。
「ワールドカップ(W杯)を始めとした世界中のサッカー事情を管理しる立場にある国際サッカー連盟(FIFA)は昨年、幹部らの汚職や不正行為疑惑に大きく揺れ、世界中で大騒ぎになりました。その結果、トップに立つゼップ・ブラッター会長が5期連続で会長に再選した直後の辞任問題に発展。未だ事件は完全には解決しておらず、全容解明は限りなく不可能で、混迷は深まるばかりといわれ続けています」(記者)
世界のサッカー史において、間違いなく歴史的事件となった昨年のFIFA幹部による汚職事件。過去24年間で少なくとも1億5000万ドル(185億円)以上の贈収賄が行われていたとされる、途方もなく規模が大きい問題だ。
また、その中にはサッカー界最大のイベントとなる「W杯の招致活動」を巡っての不正行為も含まれている。
一連の調査にあたっているFBIなど米司法省は、2010年の南アフリカW杯に関してはすでに「不正が存在した」と発表。その延長線上として18年のロシア、22年のカタールともに多額の資金流用など不正行為の疑いがあったとしている。
そして、これらは2002年に韓国と共催でW杯を開催した日本も決して蚊帳の外ではない。
昨年、スペインの新聞社が「02年のW杯の招致決定後に、当時の長沼健・日本サッカー協会会長が、南米連盟に投票の謝礼として150万ドル(約1億8000万円)を手渡していた」と報道。後に、日本サッカー協会の小倉純二名誉会長が否定する騒ぎに発展している。
本来、世界中のサッカー界の中心として君臨しなければならないFIFAが、今や汚職にまみれ、社会的信用は地に落ちている状況。これはFIFAが国連のような正式な国際機関ではなく、あくまでも任意団体に過ぎないことが原因とされているが、それがわかったところで何かが解決するわけではない。
世界のサッカー市場は、米メジャーリーグに日本プロ野球などを含めても、それらより遥かに巨大な資金の流れが存在するだけに、比例してその「闇」はあまりにも深い。
アジアの小国に過ぎない日本も決して無関係ではなく、プロサッカーを巡る不透明な資金の流れは、これからも様々な形で明るみに出る可能性を残している。