武豊騎手がYAHOO!JAPANのスポーツコーナー「スポーツナビ」で、デビュー30周年の独占インタビューに登場している。インターネットメディアとしては初の独占インタビューというのは、少々意外であった。



 武騎手は同インタビューで、30年騎手を続けてきた中での思いや年齢によっての気持ちの違い、今年の海外での活躍やキズナでのダービー制覇の思い出や気持ちを語っている。数々の名馬に跨ってきた名手だけに、その言葉の重みや深みは他の騎手とはやはり一線を画すものがある。

 特に興味深かったのは、インタビュアーが「40代でも第一線で活躍できる秘訣、アドバイス」を聞いた際の回答だ。武騎手は「アイツはもうダメなんじゃないか」という雰囲気になる時、「自分だけはそこに流されちゃいけないな」と思っていたそう。周囲がどんなに変わっても、自分だけは絶対に変わらない強さを持つことの重要性を説いた。

 キズナとともに「復活」するまでの数年間、武騎手は2010年の大きな落馬負傷、それに伴う肉体の変化、地方競馬騎手や短期免許で訪れる外国人騎手の台頭、エージェント制の重要度の増大、社台グループとの確執までウワサされ、急速に勝ち星を減らしてしまったことがある。

 2013年WOWOWの「3500勝」の特集で、不振に喘いでいる自身についても武騎手は語っていた。「今は目に見える結果を残さねければ」「人が離れていくのを感じたり、でも変わらず応援してくれる人もいて、その人の馬で結果を出せないのはやっぱり辛い」と、当時の状況を克明に語っている。

 しかし、もっとも苦しい時期だったに違いないその番組で、武騎手は「自分が悪い」という姿勢を一度たりとも崩さなかった。いい騎手に人が集まるのは当然、今の自分はそうではないのだと、誰を責めることもなく現実を受け止めていた。同番組では、2歳から3歳のキズナのレースも紹介されており、それがあのダービー制覇につながったと思うと、武騎手の持つ「天命」や生まれた「星の下」を想像せざるを得ないが、それもまた、武騎手自身の「強さ」が引き寄せたものだと理解できる。

 インタビューを見ると、涼しい顔をしている武騎手も多くの苦しみを経験してきたことが如実に表れている。
今後も競馬界を引っ張る男の矜持が感じられた。

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